【秋華賞】ベリベリホース!モンローウォークが無傷の5連勝 その走りで大観衆を魅了した 漆黒の新女王
2026.10.19
モンローウォーク(c)SANKEI
秋晴れの淀に、美しい淑女が現れた。ターフの上ではその漆黒の馬体がよく映え、特別なことをせずとも、ついつい視線をそちらに向けてしまう―― それほどまでに、この日のモンローウォークは美しかった。
7年ぶりに桜花賞馬もオークス馬も不在となった今年の秋華賞。それだけにどの馬にもチャンスがあると思われたが、パドックに彼女が現れた時、そうした期待は打ち砕かれた。
出走全17頭の中でまるで彼女だけにずっとスポットライトを当てているかのように、その馬体は黒光りしていた。
思えばデビュー当時から大器と称されていた素質馬だった彼女。故障と転厩により復帰時期が遅れたことで春のクラシック戦線は無縁だったが、もし走っていたら好勝負を見せていたはず。
待ちわびていたからこそ、その姿がより美しく、魅力的に見えたのかもしれない。
未だに世界中で語り継がれる伝説の女優、マリリン・モンローが見せた独特の歩き方から名を受けた彼女にはその馬名以上に言葉にできない魅力が詰まっているように思えてならない。
そんな筆者の想いは今回のレースを見て、確信に変わった。
ゲートが開いた瞬間、モンローウォークは伸びあがるように飛び出してすぐに好位に付けた。
近年の秋華賞は差し馬同士の決着になりがちで、先行策は決して有利とはいえないのだが、そんなの関係ないとばかりに戸崎圭太とともに位置を取りに行った。
勝つにはこの位置から行くのがベスト――
意志を持ってポジションを取りに行った彼女たちをマークするかのように外からライバルたちがやってきては、内へと包み込むように囲んでいく。
そして内枠を利して逃げたテイエムアイランが作る速いペースの中、モンローウォークは5番手に付けて追走していた。
テイエムアイランが馬群を少し離して逃げ、前半1000mのペースは57秒8と先行馬には厳しい流れと言わざるを得ない流れに。
ただでさえ差し馬が優勢なレースの傾向を考えるとモンローウォークの位置取りは決していいとは言えないはずだが......
鞍上の戸崎はもちろん、モンローウォーク自身も何ら不安に感じていない。むしろリズムに乗って走れている。
なんだろう。この逞しさ、この安定感は。ほんの4ヵ月前までキャリア1戦しかなかった馬とは思えないほど落ち着き払った走りを見せていた。
そうして迎えた第4コーナーから最後の直線への立ち上がり。
モンローウォークは外へ持ちだし、前を追いかけ始めた。やや早いようにも感じられたが、「道中、リズムよく走れたことで強気に攻めることができた」と、レース後に戸崎が語っていたように、この時のモンローウォークは手ごたえ十分。
前を行くテイエムアイラン、そしてギャラボーグを射程圏内に捉えるためにギアを徐々に上げ始めた。
ゴールまで残り300m。ギャラボーグが先頭に立ったところにモンローウォークも外から並びかける。
ギャラボーグの鞍上、横山和生が左鞭を入れてさらにスピードを上げようとする中、戸崎の腕はまだ上がらない。
ほんの少し気合いを付けただけでモンローウォークはギアを上げ、前を行くギャラボーグに迫っていった。
あと1馬身、あと半馬身......一歩ごとにギャラボーグに迫り、ゴールまで残り150mの辺りで戸崎はついに鞭を入れた。
するとモンローウォークはエンジンを全開にしてトップスピードまで押し上げ、ギャラボーグを交わして先頭に立った。
その瞬間、京都競馬場のスタンドから待ってましたと言わんばかりに大歓声が響き渡った。
2頭が叩き合っているすぐ後ろには秋華賞3連覇がかかるルメールが乗るドリームコア、ローズS2着のエンネらが猛然と追い込んできたが、既に大勢は決したあとでもう誰もモンローウォークには届かない。
漆黒の馬体を光らせながら走った彼女はそのままゴールに飛び込み、無傷の5連勝で真の女王に輝いた。
2着ギャラボーグにはタイム差なしでクビ差しか付けることができず、着差だけを見たら地味に映るかもしれないが勝ち時計はコースレコードタイという速さ。
前が速かった流れの中を果敢に先行し、直線半ばで先頭に立ってから後続の追撃を振り切ったことを考えると、モンローウォークの走りはとても価値があるように思える。
無傷の5連勝による秋華賞制覇は必然とも言えそうで、仮に春のクラシックホース2頭が出走していても、今日の彼女には敵わなかったかもしれない。
着差以上の勝利に、戸崎も手ごたえを感じていたのかもしれない。優勝騎手インタビューではもはやお決まりとなった彼の名セリフ「ベリベリホース!」が飛び出し、ファンを大いに沸かせた。
ライバルたちを寄せ付けず、圧倒的なパフォーマンスでファンを魅了し、無敗の秋華賞馬となったモンローウォーク。
誰もがもっと見たくなる彼女の次のレース、そしてその先に待っている未来には果たしてどんな景色が見られるのだろうか。
■文/福嶌弘