【菊花賞 みどころ】難攻不落の菊の頂に昇り詰めるのは...

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2026.10.25

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    ロブチェン(c)SANKEI

    もしかすると、牡馬クラシックの三冠レースは山登りに似ているのかもしれない。

    例えば3歳の春に行われる皐月賞はその時期と距離も相まって完成度とスピードが問われ、ダービー5月の終わりから6月のはじめの梅雨入り前という難しい気候の中での開催。

    第87回菊花賞(GI)枠順

    年によっては大雨の中を走ることもあり、荒天と道悪の馬場に泣かされた馬もいる。

    そして菊花賞は言わずもがな。3000mというほとんどの馬が未経験の長丁場を走ることになる。スタミナだけでなく、長距離を走り抜くための折り合い、そして精神的な強さが求められる。

    皐月賞は最も速い馬、ダービーは最も運のいい馬、そして菊花賞は最も強い馬が昔から勝つと言われているが......それもあながち間違いではないのかもしれない。

    そんな牡馬クラシック最後の一冠、菊花賞――今年は二冠馬ロブチェンがその頂を目指す。

    「ノーザンファーム生産馬」と言えばエリートに感じるが、血統は極めて地味なもの。父ワールドプレミアはこの世代の産駒が初年度で未知数な上、母ソングライティングの産駒にはこれといった活躍馬は不在。当時の担当者も「馬体と脚のバランスがいい」という以外、特に目立つことはなかったという。

    ただ、調教が進むにつれてロブチェンはその片鱗を見せるようになる。そのひとつがあの走り方。首を低く下げて馬体と一直線になる独特のフォームはこの頃から見られた。

    それと同時に肺炎どころか病気ひとつ掛からないという内面の強さ。心身ともにどっしりと落ち着き払った様子はまさに堂々とそびえたつ山脈とほぼ同じだった。

    やがて「ロブチェン」という馬名が与えられると、その実力を遺憾なく発揮。

    2歳暮れのホープフルSは7番人気の伏兵扱いながら、中団から差してきて2歳王者の座に就くと3歳春の皐月賞はサンライズシリウスとの逃げ争いを制してそのまま押し切り勝利。

    そしてダービーは8枠17番という枠を考えてか、中団から動くという戦法を選び、ゴール寸前に首を下げてさらにひと伸び。

    先に動いたパントルナイーフをギリギリ差し切り二冠達成。ひと夏を越えて迎えた神戸新聞杯は内から抜け出したアルトラムスとの追い比べをハナ差だけ制して勝利してみせた。

    ホープフルS以降、2着馬に付けた着差は3/4馬身が最大とその勝ち方は決して派手ではないが、あの独特なフォームで追う姿は迫力満点。

    類稀な勝負根性こそがこの馬最大の武器であるだけに、今度の菊花賞も直線で頭を下げ、身体を低くして懸命に伸びてくることだろう。その先に待っているのが史上9頭目となる三冠馬への頂だ。

    菊花賞で牡馬三冠制覇を目指して挑んだ二冠馬はこれまでに16頭いるが、その成績は[8・3・1・4]と勝率で見るとちょうど5割。春の二冠馬とて決して盤石ではないということを表しているように思える。それだけに今年も伏兵の台頭が注目される。

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    そんなな中で打倒ロブチェンの筆頭格とされたのが、今回がGⅠ初挑戦となるダノンヒストリーだ。

    ロブチェンと同じノーザンファームで生を受けたが、その注目度は段違い。デビュー戦で単勝オッズ1.2倍という圧倒的な支持を受けて逃げ切り勝ちを収めると、続く東京スポーツ杯2歳Sも1番人気に。未来のスターホースにファンはくぎ付けとなった。

    だが、このレースでダノンヒストリーは出遅れて7着に完敗。スケールの大きさは間違いないが、いかんせんまだまだ未完成。

    そう判断した陣営は翌年の夏までこの馬を放牧に出すという大胆な決断を敢行。皐月賞やダービーを棒に振ってでも、この大器の成長に賭けた。

    東スポ杯から実に半年以上の月日が経過した7月、ダノンヒストリーは函館競馬場にいた。

    初の古馬相手で迎える1勝クラス同士のレースはこれまた自身初となる芝2600mという長丁場。マイナス14キロという絞り切った馬体からも不安がよぎったが、結果はまさかの圧勝。

    3コーナーを過ぎてからは先頭に立ち、付いて来られるならついて来いと言わんばかりの独走を見せてブッチギった。

    その勢いのまま挑んだのが札幌競馬場で行われた阿寒湖特別。

    昇級緒戦で相手も強くなる中、ダノンヒストリーはまたも強気の先行策を取り、ここでも4角先頭から後続馬を力で捻じ伏せ2連勝。2着に入った6歳馬、ジュンツバメガエシには8馬身もの大差がついていた。

    あれから2ヵ月。ついに機は熟した。キャリア4戦のみでしかも格上挑戦、初の関西遠征という馬は通常ならば狙いづらいが......ダノンヒストリーならば、その馬名の通りに新たな歴史を刻んでくれるのではという予感がする。

    鞍上のルメールは現在菊花賞を3連覇中。現在の菊を最も知り尽くす男がこの世代最大の上がり馬をGⅠホースへとエスコートする。

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    今から6年前の2020年、今年のロブチェンのように三冠制覇を目指した馬が菊花賞にやってきた。

    その馬は最後の直線、ライバルに迫られながらも類まれな勝負根性で抜かされることなく押し切り、史上8頭目の三冠馬に。コロナ禍で沈み切った競馬ファンを大いに励ましてくれた。

    そうして迎えた2026年、その時の三冠馬コントレイルが種牡馬としてゴーイントゥスカイ、コンジェスタス、そしてマジョレルブルーの3頭を菊花賞に送り込んできた。

    青葉賞を制し、父コントレイルに重賞タイトルを初めてプレゼントしたのがゴーイントゥスカイ。

    本番のダービーでは武豊を背に上がり3ハロン32秒8という最速の脚を使って伸びてはきたが、ロブチェンに届かず4着。

    そして秋緒戦として迎えたセントライト記念では1番人気に推されたが、結果は6着惨敗。得意の左回りコースではなかったことに加え、休み明け緒戦はなかなか走らないタイプ。それだけに今回は変わり身を見せる可能性がある。

    目下3連覇中のルメールばかりが目立つが、菊花賞と言えば競馬界のレジェンド・武豊がこれまでに歴代最多タイとなる5勝を挙げている得意レース。

    秋の淀でレジェンドの手綱とともに大器が飛んでくるかもしれない。

    西のダービー最終便と言われる京都新聞杯を差し切ったコンジェスタスはその後9着→6着と失速。

    しかし、9着だったダービーは直線で進路が詰まるというアクシデントがあり、スムーズならもっと上位に行けたと思われる。

    神戸新聞杯も完敗ではあったがプラス20キロとやや余裕残しで挑んだことが敗因に。ここを叩いて臨む今回は巻き返しの余地がある。

    最後に挙げたいのが上がり馬マジョレルブルー。

    これが重賞初挑戦ながら、血統的には興味深い1頭。好位に付けていけるだけのダッシュ力もあり、騎手のいうことを従順に聞けるレースセンスもある。

    先週の秋華賞でモンローウォークに騎乗して無敗の女王へと導いた戸崎圭太が鞍上を務めるというのも注目したいポイントだ。

    二冠馬ロブチェンが史上9頭目の偉業を成し遂げるか、世代屈指の上がり馬がその素質を開花させるか、それとも三冠馬の血が大舞台で炸裂するか――

    今年の菊花賞の頂に君臨するのは果たしてどの馬だろうか。

    ■文/福嶌弘

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