小林美駒騎手が語る「騎手を目指したきっかけと競馬学校時代」
2026.10.31
小林美駒騎手 ©Masanori Miyahara
2026年は10月25日までに43勝と、女性騎手のJRA年間最多勝利記録(51勝)更新も期待される小林美駒騎手。
今回は2026年10月19日に発売された、総勢17人の女性ホースマンに競馬への情熱や仕事の流儀、思考法、メンタル術などを聞いたインタビュー集『馬とともに自分らしく 競馬を拓く女性たちの情熱と流儀』(マイクロマガジン社刊)から、小林美駒騎手へのインタビューを一部抜粋してお届けする。
小林美駒騎手 ©netkeiba編集部
──2025年の北海道開催(函館・札幌)で20勝を挙げ、その名を全国区に。2026年は函館記念(ファウストラーゼン)で重賞タイトルも獲得し、女性ジョッキーのトップランナーとして勝ち星を積み上げている小林美駒さんですが、新潟県のご出身で、新潟競馬場でアイビスサマーダッシュを観戦されたことがジョッキーを志したきっかけだそうですね。
【小林】 はい。それ以前から、将来は馬に携わる仕事をしたいなと思っていたんですけど、小学5年生のときに、現地で目の前を馬が駆け抜けていくさまを目の当たりにしたことで、ここで活躍したいなと思うようになりました。直線1000mの競馬は新潟競馬場の名物なので、あの舞台を志したことが決め手ですね。
──馬に携わる仕事をしたいと思っていたということは、そもそも馬が身近な存在だったのですか?
【小林】 両親が競馬ファンだったことをきっかけに、私が3歳のころに3つ上の兄が乗馬を始めたんです。その乗馬クラブには笹川翼さんもいて、翼先輩が小っちゃい私を抱っこしている写真もあるんですよ。
実際に乗馬を始めたのは小学5年生からなんですけど、そんな兄の影響もあって、小さなころから馬は身近な存在でした。同時期に、新潟競馬場の乗馬スポーツ少年団に入ったんですけど、そこには永野猛蔵さんもいて。翼先輩をはじめ、身近にジョッキーを目指している人がいたことも「私もいつか......」と思うようになったきっかけだったと思います。
──その後、中学卒業と同時にJRAの競馬学校に入学されて。小林さんにとって、競馬学校での3年間はどんな時間でしたか?
【小林】 本当に長かったなぁと(苦笑)。ジョッキーになりたいという強い気持ちがあったので、そのためならなんでもがんばれると思っていたんですけど、週に1回しか外出できないことや、すべて決められた時間で行動しなければならないというのは、けっこうしんどかったですね。
ただ、ずっと馬と一緒にいられたのは楽しい思い出で。つらさ半分、将来への楽しみ半分みたいな3年間でしたね。
──競馬学校では、何かと順位づけされると思うのですが、同期のうち、成績はどのあたりでしたか?
【小林】 上位にいたイメージがまったくないので......。下のほうだったと思いますよ。技術だけではなく、フィジカル面でも順位づけされるので、フィジカルのほうで取り返すつもりでがんばっていた記憶があります。勝負の世界ですし、もともと負けず嫌いなので、負けないように必死に食らいついていた感じでしたね。
──フィジカル面で取り返すということは、運動神経には自信があった?
【小林】 はい。身体を動かすことは好きでした。先ほどお話したように、しんどいことも多かったのですが、変われたというか、より強い気持ちを持てたきっかけがあって。2年目の厩舎実習が、とっても濃い時間だったんです。
──所属予定の厩舎での実地研修ですね。小林さんは、美浦トレーニングセンターの鈴木伸尋厩舎に決まっていた。
【小林】 将来、自分が働く環境を肌で感じられたこと、兄弟子の横山武史さんと、以前鈴木伸厩舎に所属していた津村明秀さんに初めてお会いして刺激をもらったこと......。濃密な1年間を過ごしたことで、スイッチが切り替わったような感覚がありました。
──現在の兄弟子がトップジョッキーである横山武史さんで、天才と名高い津村さんも、デビューから数年所属していた鈴木伸尋厩舎。鈴木伸調教師のお人柄を含め、いい厩舎に入りましたね。
【小林】 師匠と兄弟子の存在を含め、私は本当に環境に恵まれているなと思っています。厩舎のみなさんも温かいですし、本当に心地いい環境です。もちろん、厳しいときもありますよ。アメとムチじゃないですけど。
──鈴木伸調教師はアメとムチを使い分けるタイプ?
【小林】 いえ、先生はアメ中心で......。津村さんが所属していたころ(2004年3月~2007年8月)はすごく厳しい先生だったらしいのですが、武史さんが所属したころ(2017年3月~)にはちょっと丸くなって、周りの方いわく、私にはもう甘々らしいです(笑)。
みなさん、先生に対して「どうした? どうした?」って不思議がっているくらいです。私は先生が厳しかったころを知らないので、どんな感じだったのか想像すらできないのですが、周りのみなさんから「美駒には甘いんだよなぁ」と言われるので、そうなんだなぁと(笑)。
小林美駒騎手 ©netkeiba編集部
■小林美駒騎手プロフィール
2005年3月19日生まれ。新潟県出身。2020年に競馬学校騎手課程39期生として入学。2023年に騎手免許を取得。
同年3月に美浦・鈴木伸尋厩舎所属でデビューし、39戦目に初勝利。2026年6月には函館記念でファウストラーゼンに騎乗して優勝。重賞初勝利を飾る。通算勝利数は114勝(地方含む、2026年10月30日現在)。
馬とともに自分らしく 競馬を拓く女性たちの情熱と流儀
現在、女性ホースマンの躍進は世界的な潮流で、日本競馬界においても女性の進出が進み、騎手に限らず、調教師、厩務員、調教助手、生産者、獣医師、競馬メディアなどなど、さまざまな分野で女性が活躍をしています。
本書では競馬という厳しい世界に飛び込み、道を切り拓いてきた女性ホースマン17人に直接取材。インタビュー形式で競馬への情熱や仕事の流儀、思考法、メンタル術、ライフスタイルなどを語っていただきました。
編著:マイクロマガジン競馬編集部(netkeiba協力)
出版社:マイクロマガジン社
発売日:2026年10月
価格:1,980円(税込)
https://tvtokyo.tv/4i5l3hS