
平野美宇 PHOTO:Itaru Chiba
約3時間40分におよぶ激闘から一夜明けた2月25日、卓球女子代表チーム率いる渡辺武弘監督がインタビューに応じた。
24日に行われた「世界卓球2024団体戦」<16~25日/韓国・釜山>女子決勝は世界最強の中国とそれを追う日本がフルマッチの死闘を繰り広げ、最後は15歳の新鋭・張本美和(木下グループ/世界ランク16位)が東京五輪金メダルの陳夢(中国/世界ランク3位)に1-3で敗退。
ゲーム差こそ2ゲームついたが、互角のラリー戦やロングサーブの応酬など15歳とは思えない技術力と度胸の良さで30歳の五輪メダリストをスコア以上に苦しめた。

<女子団体 決勝>
日本 2-3 中国○
1 張本美和 0-3 孫穎莎
2 早田ひな 3-1 陳夢
3 平野美宇 3-0 王芸迪
4 早田ひな 0-3 孫穎莎
5 張本美和 1-3 陳夢
日本のエース早田ひな(日本生命)が2番で陳夢から挙げた1点と、平野美宇(木下グループ)が3番で王芸迪(中国/世界ランク2位)から挙げた1点は「打倒中国」を掲げ、たゆまぬ強化を続けてきた日本にとって大きな価値ある2点であり、今夏に迫ったパリオリンピックに繋がる2点だった。
特に2人はパリオリンピック本番で団体戦とシングルスに出場するため、前哨戦とも言える世界卓球で中国に勝てたことは自信になった。
だが一方で今大会、予選グループリーグ第2戦のイラン戦と第3戦の南アフリカ戦を除き、平野が3番の1点起用だったことが気になる。

なぜ女子日本の2番手である平野が1点起用なのか? 平野ではなく張本が2点起用されたのはなぜなのか?
その理由を渡辺監督に聞いた。
「平野には3番で確実に点を取ってほしいというのがあった。安心して3番に置ける選手ですし、1試合に集中できた方がいいのではないかと。あとはやっぱりオリンピックで張本にもバンバン試合に出てもらわなきゃいけないので、この世界選手権でたくさん経験を積ませたかった。それで張本を2点使いました」
さらに渡辺監督は1月の全日本選手権まで、厳しいパリオリンピック代表選考レースを戦い抜いてすぐのタイミングで世界卓球を迎えた平野のコンディションを気にかけていたという。
「全日本まですごいハードで過酷な代表レースをして、すぐにTリーグがあって、事前合宿があって、世界選手権でかわいそうだなと思っていた。果たして気持ち的に上げていけるのか。それを一番心配していました。でも、その心配をよそに平野は木下グループのメンバーと必ず午前、午後の2部練習をしていた。疲れて1回だけ休んだことがありましたけど、本当にしっかりルーティンを作って練習をして、だんだん調子が良くなっていったんです」
それだけ心身をすり減らしていた平野。

そこへ来て今大会は予選グループリーグで、バック粒(ラケットのバック面に粒高ラバーを貼っている)のアシュタリ(イラン)や隻腕の左利きでパラリンピックメダリストのアレシャンドレ(ブラジル)ら、普段はほとんど対戦機会のない選手との試合が相次ぎリズムを掴むのが難しそうだった。
平野本人も初戦が最もきつく「正直、全日本がし烈すぎて、ちょっと切り替えられていない部分もあった」と言い、特色あるプレースタイルの選手との対戦で「自分が何をしているのか。つなぐのか、コントロールするのか、狙うのかがあまり定まらない試合だった」と振り返る。
しかし、王芸迪に勝った中国との決勝では「客観的に見ても自分が何をしたいのかが分かる試合ができた」と語っている。
ちなみに平野と王芸迪の対戦はこれが6回目。
直近では2023年WTTシンガポールスマッシュで平野がフルゲーム勝利、世界卓球2023南アフリカではストレートで王芸迪が勝っており、今回平野が勝ったことで平野の2勝4敗となった。
今回の勝因だが、互いに得意なバックハンドの攻略だったという。
「私もバックは得意で相手もバックが得意。右対右(右利き同士)なので、どういうペースに持っていくかを考えていた。相手は早い展開が上手いので、自分は緩急を入れたりして戦った。そこでほぼ負けなかったし、かなり相手に圧力をかけられたと思います」
パリオリンピック本番では1番にダブルスが入ってくる。そのため今後平野はオリンピックのシードに影響する自身の世界ランクを上げることを第一に、ダブルスの強化にも取り組むこととなる。
来月はポイントの高いWTTシンガポールスマッシュ(3月7~17日)とWTTチャンピオンズ仁川(27~31日)に出場し、4月スタート予定のパリオリンピック代表合宿に参加する見通しだ。
(文=高樹ミナ)

