
張本智和 PHOTO:Getty Images
近年、これほどまでに日本が席巻した国際大会があっただろうか。少なくともアジア選手権においては半世紀をまたぐ快挙である。
カザフスタンの首都アスタナで開催された「第27回ITTF-アジア卓球選手権大会<2024年10月7日(月)~13日(日)>」大会3日目の9日(水)にまず、女子団体決勝で日本が世界最強の中国を破り金メダルを獲得した。
さらに最終日には女子ダブルスで大藤沙月/横井咲桜(ミキハウス)が金メダル。
そして極め付きは男子シングルス決勝で日本のエース張本智和(21=智和企画/世界ランク9位)が中国若手のエース林詩棟(19=同3位)を下し金メダルに輝いた。

日本が中国に勝った女子団体金メダルは1974年横浜大会以来、50年ぶりのこと。
女子ダブルスも1970年名古屋大会(※TTFA=アジア卓球連盟主催の時代。1972年からATTU=アジア卓球連合主催)の長谷川信彦/小和田敏子以来、実に54年ぶりの金メダルとなった。
また、男子シングルスの金メダルは1974年横浜大会の長谷川信彦以来、50年ぶりで、いずれも歴史に残る快挙達成だ。
なかでも張本智和はエースの意地を見せた。男子団体は初戦の準々決勝で宿敵韓国に敗退。女子団体の金メダルを横目に悔しい思いをシングルスにぶつけた。
決勝の勝利もさることながら、同世代のライバル林昀儒(23=台湾/世界ランク11位)を下した準々決勝も価値ある1勝だった。
2人はパリオリンピックの男子団体準々決勝でも対戦し、2番で張本がフルゲームで負けたが、そのリベンジに成功した格好だ。
これまで勝ったり負けたりの2人。対戦成績は5勝2敗となり張本がリードしている。

女子団体金メダルの立役者となった妹の張本美和(16=木下グループ/世界ランク7位)は中国のエース孫穎莎(世界ランク1位)と王芸迪(同4位)を倒した勢いで4冠が期待されたが、女子シングルスで銀メダル。
木原美悠(木下グループ)とのペアで臨んだ女子ダブルスも銀メダル、松島輝空(木下グループ)とペアを組んだ混合ダブルスでは3回戦で敗れ、9-16位決定戦で勝利した。4冠は逃したものの大車輪の活躍には違いない。
惜しくも敗れた女子シングルス決勝は北朝鮮のキム・クンヨンとの対戦でゲームカウント1-3。
キムといえば、バック粒(ラケットのバック面に粒高ラバーを貼っている)の異質型で、北朝鮮自体の国際大会出場が少ないため世界ランクは509位。
パリオリンピックの混合ダブルス1回戦で張本智和/早田ひな(日本生命)を下し、パートナーのリ・ジョンシクと共に銀メダルに輝いたインパクトは記憶に新しい。
アジア選手権に出場したある陣営によれば、今大会で使用された中国製のシームレスボールは「変化を出しやすい」とのこと。
それを考慮すると、両面裏ソフト(ラケットの両面に裏ソフトラバーを貼っている)の張本よりも、打球に多彩な変化を生み出す粒高ラバーの使い手キムに分があったとも考えられる。
ちなみに張本は女子団体から数えて6日間で実に19試合を戦う超過密スケジュールをこなした。
ここ1年ほどはトレーニングの成果もあって体格が良くなったとはいえ、まだ成長途上にある16歳の少女だ。
前週まで北京でWTTチャイナスマッシュを戦った疲れも残っていたはずで、フィジカルへの負担や思考力への影響は免れなかっただろう。
それにしても北朝鮮選手のレベルの高さには驚くばかりだ。
海外との自由な行き来が許されない閉ざされた環境でどのような強化をしているのか。その全貌は謎のベールに包まれているが、今後の国際大会でも鬼門になることは確かだ。

女子シングルスでは伊藤美誠(24=スターツ/世界ランク9位)が銅メダルを獲得したのも明るいニュースだった。
WTTシリーズでは今年7月のスターコンテンダー バンコク女子シングルスで優勝しているが、各種選手権の個人種目で表彰台に上がったのは久々。
アジア選手権では2017年無錫大会で早田ひな(24=日本生命/同5位)と女子ダブルス銅メダルを手にしているが、意外にもシングルスでは初表彰台となった。
パリ五輪では代表から漏れたが、次なる目標を世界卓球2025ドーハの女子シングルス金メダルに定めている伊藤。1週間後にはWTTチャンピオンズ モンペリエ出場のためフランスへ向かう。
女子ダブルスは張本美和/木原と大藤/横井の日本人対決の末、大藤/横井に軍配が上がった。
第4ゲームまでは一進一退の攻防が続いたが、最終の第5ゲーム、ラブゲームで決着をつけたのは大藤/横井。
今シーズン、積極的にWTTシリーズを転戦し結果を出している20歳の伸び盛りペアが金メダルに輝き、表彰台の中央で優勝トロフィーを高々と掲げる姿が初々しかった。
女子団体でベンチ入りしたものの、女子シングルスを棄権した早田はパリオリンピックで痛めた利き腕(左腕)の状態が心配される。
棄権を発表したのは初戦の女子シングルス2回戦直前。自身のSNSに「現地での調整中に腕を再度痛めてしまいシングルスの試合を棄権することになりました」と投稿した。
1週間後にはWTTチャンピオンズ モンペリエも控えているが、出場できるかどうか。
さらに来月は年間チャンピオンを決めるWTTファイナルズ福岡(11月20~24日)が北九州市小倉で開催されるが間に合うか。
早田の地元開催とあって出場の意思は固いはずだ。一日も早い快復が待たれる。
なお、今回のアジア選手権は来年の「世界卓球2025ドーハ(個人戦)」<2025年5月17~25日/カタール>の予選も兼ねていた。
シングルス種目はベスト16までの選手と17-32位順位決定戦で勝った8人、ダブルス種目はベスト8までのペアと9-16位決定戦で勝った4ペアに出場権が与えられるルールで、日本の選手たちは全員見事に出場権を獲得。
35歳で国際大会復帰を果たした松平賢二(協和キリン/世界ランク436位)も男子シングルスで出場権をもぎ取り称賛を浴びた。
(文=高樹ミナ)
<世界卓球2025ドーハ出場権獲得状況とアジア選手権結果>
●男子シングルス
張本智和:金メダル
篠塚大登:銅メダル
戸上隼輔、吉村真晴(株式会社SCOグループ):ベスト16
松平賢二:17-32位決定戦で勝利
●女子シングルス
張本美和:銀メダル
伊藤美誠:銅メダル
大藤沙月:ベスト16
平野美宇:17-32位決定戦で勝利
●男子ダブルス
戸上隼輔/篠塚大登:銅メダル
張本智和/松島輝空:ベスト8
●女子ダブルス
大藤沙月/横井咲桜:金メダル
張本美和/木原美悠:銀メダル
●混合ダブルス
吉村真晴/大藤沙月:ベスト8
松島輝空/張本美和:9-16位決定戦で勝利

卓球 第27回ITTF-アジア卓球選手権大会2024
9月26日(木)〜10月6日(日)開催!
試合速報、配信情報、日程結果などは
特設サイトへ:https://tvtokyo.tv/3BDWmr9
