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平野美宇 ゆかりある九州で「新ハリケーンを見せる!」 移籍の舞台裏から見える卓球選手のリアル【Tリーグ・九州カリーナ入団会見】

2026.07.10
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2026.07.10

2大会連続五輪メダリストの平野美宇が、また新たなステージへ踏み出した。

2022-2023シーズンから4季にわたって在籍したTリーグの木下アビエル神奈川を離れ、福岡を拠点とする九州カリーナへ移籍。7月1日付で正式入団し、7日には都内某所で入団会見を行った。

平野が選んだ新天地は、多くの卓球ファンの予想を覆すものだった。なぜ平野は移籍を決めたのか?

「木下グループでは本当にお世話になって、Tリーグでは4年所属して4回優勝することができた。とてもいい環境に恵まれ感謝の気持ちでいっぱいです」

会見冒頭、まずは古巣への感謝を口にした平野。

昨季(2025-2026シーズン)はキャプテンとしてチームをけん引。プレーオフファイナルではシングルスで敗れた直後のビクトリーマッチで劇的な勝利を挙げ、チームを2連覇(通算3度目の年間優勝)へ導いた。

最高の形で使命を果たし、新天地へ向かう平野の表情は実に晴れやかだ。

しかし、その決断に至るまでには大きな葛藤があった。

何しろ、常勝チームから下位チームへの電撃移籍だ。6月上旬、図らずも先行して報じられた移籍のニュースは驚きをもって受け止められた。

平野は木下アビエル神奈川以前も、5度の年間優勝を誇る日本生命レッドエルフでプレーしていた。

一方、九州カリーナは2021年4月、九州アスティーダとして参戦した初年度(2021-2022シーズン)こそ、橋本帆乃香(デンソー)や佐藤瞳(日本ペイントグループ)、横井咲桜(ミキハウス)らの活躍によって3位に入ったものの、その後は最下位が続き、戦力強化が大きな課題となっていた。

そんな中、九州カリーナ代表取締役の川面創(かわつら はじめ)氏は、今年5月のゴールデンウィーク明けに「平野選手が来季は木下グループ所属じゃない可能性がある」という情報を耳にし、すぐさま獲得に動いた。

 「実は一回、断られてるんです」

会見でそう明かした川面代表。トップ選手との契約は金銭面だけではない。最大の壁は練習環境にあった。

木下アビエル神奈川には専用練習場や宿泊施設まで整っている。一方、九州カリーナには専用練習場がない。

「平野選手を受け入れるとなると、正直、厳しい状況もありました」と川面代表は率直にチーム事情を語った。

平野自身も大いに迷った。

「今までは周りに日本代表選手がいて切磋琢磨する環境にいたので正直、悩みました。練習環境に不安があったので、川面さんのオファーを一回断ったというのも本当です」

背景には、自身の所属を6月15日付で「個人」に変更したこともあった。

卓球選手は、たとえ所属先があっても専用練習場を持っていなかったり、平野のように個人で活動する場合には、練習コートや練習相手を自身で確保しなければならない。

また、海外遠征の航空券についても、一部の大会は日本卓球協会が手配するが、基本的には選手側で手配する。

一年中、大会のあるWTTツアーに加え国内イベントやメディア対応などでも忙しく、スケジュール管理は煩雑を極める。

さいわい平野にはマネジメントが付いているが、所属が個人になったことで、その大変さを痛感した。

そんな時、九州カリーナが活動全般を全面的にサポートすることを約束。それが「大きな決断に繋がった」と平野は話す。

さらに、活動資金の面でも、川面代表がメインスポンサーの株式会社グリーンクロスをはじめ複数のスポンサーに平野加入の意義を熱心に説明し、支援を取り付けた。

「スポンサーの皆さんが背中を押してくれたことが、一番大きかったと思っています」川面代表はそう胸を張る。

平野の挑戦は、競技環境だけを見れば決して安全な選択とは言えない。

だが、「恵まれていた環境から、あえて個人になって、新しい環境で自分を強くするという選択もいいんじゃないか」と語る姿が頼もしい。

約1年前の世界卓球2025ドーハでは、パリ五輪後の目標を見失ったまま大会を迎え、本来の実力を出しきれないまま、まさかのシングルス2回戦敗退。

「自分は勝たなければ存在価値がない」と思い詰め、現役引退も頭をよぎるほど追い込まれた。

そんな平野が絶望から立ち直れたのは、Tリーグで出会ったファンの存在が大きく影響している。

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「高校卒業後にプロになった頃は自分のことで精一杯でした。でも、プロとして活動していく中で、特にTリーグは日本全国を回って試合をするので、たくさんのファンの方とコミュニケーションが取れるし、どんどんファンが増えていって、皆さんの声援が本当に大きな力になりました」

8月に開幕する2026-2027シーズンは平野にとって9度目のシーズン。これまで8シーズンで7度の年間優勝を経験している"優勝請負人"は、チーム史上最高成績の3位を上回る結果を目指し、「チームを引っ張っていきたい」と力強く語る。

個人としては海外ツアーへ積極的に参戦し、現在31位の世界ランクを「どんどん上げていきたい」と意欲を見せる。

そして、2028年に北九州市で開催予定の世界卓球(団体戦)の日本代表入りも見据えている。

実は平野には九州との縁がある。

母の地元の静岡県沼津市で2000年4月14日に生まれ、父の地元の山梨県中央市で育ったことはよく知られているが、生後半年が経った頃、当時、宮崎医科大学(現・宮崎大学医学部)の学生だった父のもとで家族3人、宮崎県で半年ほど暮らしていたのだ。

「今まで(北九州市といえば早田)ひなちゃんの地元というイメージが強かった(笑)。でも、私も九州にゆかりがあります。九州カリーナの代表としても、日本代表としても、九州の皆さんに自分のプレーを見ていただけたらうれしいです」

奇しくも会見当日は早田の誕生日の七夕だった。

平野は短冊に「九州カリーナで新ハリケーンを見せる!!」と自身のニックネームを入れた決意をしたため、新天地での飛躍を誓った。


文=高樹ミナ

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