2018.12.18

張本智和が「大人の卓球」に変貌を遂げた理由<グランドファイナル>

張本智和 Photo:Itaru Chiba


 この1年の全てをぶつけたいーーー。そう誓って臨んだ卓球ワールドツアー「
ITTFグランドファイナル」男子シングルス決勝で張本智和(JOCエリートアカデミー/世界ランク5位)が大仕事をやってのけた。強豪中国の中でもめきめきと力を付けている23歳のレフティー、世界ランク4位の林高遠をゲームカウント4-1の大差で下し、15歳172日のワールドツアー史上最年少記録で年間王者に輝いた。この快挙によって中学3年生の張本は優勝賞金10万ドル(約1,130万円)を手にしている。

卓球・グランドファイナル試合結果一覧

今シーズン活躍したトップ16選手が激突するグランドファイナルのシングルスで優勝するというのは、張本が「東京オリンピックの優勝と同じくらいの価値がある」と例えるように、世界一になったも同然の快挙と言える。唯一、張本が尊敬し、リオ2016五輪や世界卓球2017ドイツをはじめ数々の国際大会で金メダルを手にしてきた世界王者の馬龍(中国)が足の故障で欠場したことが惜しまれるが、それ以上に今回、林高遠という伸び盛りの選手に大勝した意味は大きい。

林高遠 Photo:Itaru Chiba


世界ランク1 位の樊振東を破り決勝に進んだ林高遠とは

 張本と林高遠はともに台からあまり距離を取らずにプレーする前陣速攻型で、高速バックハンドドライブやバックハンドカウンターを得意としている。いわばスピードタイプのよく似た戦型だ。中国人選手といえば強靱なフットワークを生かし、回転量豊富なパワードライブを台から下がって打ち込んでくる選手が主流だが、そんな中にあって林高遠のようなタイプは珍しく、しかも右利きが王道の中国で左利きという点でも稀有な選手である。

 そんな林高遠のキャリアを見てみると、ジュニア時代から期待されていたものの、才能を開花させるまでに時間を要した。2009〜2012年の世界ジュニア選手権4大会に出場し、銅メダル1回、銀メダル3回と一度も金メダルに届かず。その後、シニアでも目立った成績は挙げられずにいた。しかし、世界卓球2017ドイツで中国代表入り。同年のアジアカップ(インド・アーメダバード)男子シングルス決勝では、当時世界ランク2位だった樊振東を破り待望のシニア初優勝を挙げると、ワールドツアーのオーストラリアオープンでも優勝を果たし、いまや世界ランク1位の樊振東、同2位の許キン、あるいは馬龍(同11位)といった中国トップ3を脅かす存在にまで成長した。

【神プレー】まるでテニスのプレー!? 卓球でまさかの両手バックハンド

 そんな遅咲きの林高遠は弱冠15歳の張本と8歳の年齢差があるが、国内の競争がし烈な中国で今、最も勢いのある選手という点では近い立場にある。もちろん東京2020五輪の代表候補のひとりであり、五輪のひのき舞台で張本と対戦する可能性もある紛れもないライバルだ。そのため張本が林高遠に初めて勝った(過去の対戦成績は林高遠の1勝0敗)今回の1勝は大きく、張本本人の「この先、中国のトップ選手に勝ち続けるという意味でも絶対に大事な試合だと思っていた。たくさんの意味を含めてプレッシャーを感じた」という言葉にもつながったのだろう。

張本智和 Photo:Itaru Chiba


張本が語る「大人の卓球」に変貌を遂げた理由

試合の内容を見ても得意のスピード勝負に持ち込まず、相手の強打をブロックでつないだり、ストップレシーブなどで緩急をつけ相手のミスを誘うなどのプレーに張本の成長が見えた。本人も「技術どうこうより戦術が良かった。相手が待っていないところに打ったり、相手より1球でも多くつなぐという考えが実行できた」と話しているが、これまでどの試合も全力でぶつかっていき、打ち急いで自滅するケースも少なくなかった張本が、ここまで見事に「大人の卓球」に変貌を遂げたのはなぜなのか。その点について本人はこう説明する。

「今まで(得意な)チキータやバック(ハンド)だけで攻めて、入れば簡単に勝てますけど、入らなくて負ける試合が何回もあった。バックは十分威力があるので、(今大会では)まず入れることを重視して点を取れなかったら攻める。攻めてから引くと相手が勢いに乗ってしまうので、最初は慎重に慎重にと思っていました」

張本智和 Photo:Itaru Chiba


「(今年6月の)ジャパンオープンが終わって、その後の試合で何回もいいところまで行って負けて、どうしても安定感をつけたかった。世界ランキングは上がってきましたけど、それに見合う実力がないと思っていた。今回こういう結果(優勝)を残して、やっと世界ランキング5位だったり、その上を目指せる選手になったかなと思います」

 今シーズンを振り返り、「本当に山あり谷あり。大きく動いた1年だった」と大きく息をつく張本。「(この1年で最も成長したのは)間違いなく気持ち。練習量を増やしてきて、それをこなせるメンタルだったり、試合中、相手に負けないメンタルが本当に強くなった。これで実力がもっと増していけば、東京2020五輪で金メダルを取る可能性も増えてくると思います」と頼もしい言葉で締めくくった。

(文=高樹ミナ)

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