みなさん、さようなら
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みなさん、さようなら
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 ロンドンの証券ディーラーとして成功をおさめたセバスチャン(ステファン・ルソー)のもとに、1本の電話がかかってきた。それは、カナダのモントリオールに住む母ルイーズ(ドロテ・ベリマン)からのものだった。「パパの具合が悪いの。帰ってきて」。
セバスチャンは、とまどった。大学で歴史学を教える父のレミ(レミ・ジラール)は、女グセが悪く、家族をさんざん泣かせてきた人物。15年前に両親が別れて以来、彼とほとんど口をきかなくなってしまったセバスチャンは、ぜったい父のようになるまいと心に誓い、これまでの人生を歩んできたのだ。しかし、母の口調に切迫したものを感じたセバスチャンは、婚約者のガエル(マリナ・ハンズ)を伴って、故郷に舞い戻った。
 
社会主義を信奉するレミは、自身の政治的信念に従って、設備の整っていない公立病院の大部屋に入院していた。そんな彼に最新の治療を受けさせようと考えたセバスチャンは、CTスキャンの検査を受けさせるため、アメリカの病院に連れて行く。「クリスマスにはCTスキャン、復活祭には墓場だ」と、検査を受けながらも毒舌がやまないレミ。彼がうすうす感じていたとおり、検査の結果は治療の手の施しようがない末期ガンだった。「友人を呼んで楽しい病室にして」という母ルイーズの頼みを聞き入れた彼は、自分自身が、父の<幸せな最期>の演出家になろうと決意する。
 
まず、ヨットの護送の仕事で太平洋上にいる妹のシルヴェーヌ(イザベル・ブレ)と連絡を取ったセバスチャンは、衛星通信を使ったビデオ・メールをパソコンにダウンロードし、レミの病室に届けた。久々の娘との再会に、泣き笑いの表情を浮かべるレミ。さらに、父を友人が集まれる広さの病室に移したいと考えたセバスチャンは、病院の経営者、組合と交渉。袖の下を使い、階下のフロアを改装して父専用のキッチン付き病室を作り上げる。まもなくその病室は、セバスチャンの呼びかけに応じて世界のあちこちから集まってきたレミの友人たちのにぎやかな笑い声で満たされることになった。いっぽう、アメリカの友人の医者から、末期ガンの痛みをやわらげるのにヘロインを使う試験治療の話を聞いたセバスチャンは、危険を覚悟で、麻薬常用者のナタリー(マリー=ジョゼ・クローズ)を父のヘロイン治療の世話係として雇う。

レミが最期の時を迎える別荘には、ナタリーも同行した。その数日前、自分が麻薬で酩酊状態になり、レミを禁断症状で苦しめる事件を起こした彼女は、麻薬と縁を切る覚悟を決め、中毒治療を開始していた。レミ本人はまったく意識していなかったが、彼と過ごす時間を通じて人生がいかに愛すべきものかを学んだナタリーは、レミの最後の教え子と呼べる存在になっていた。
そして、いよいよ別れの時が来た。シルヴェーヌからの二度目の衛星メールが届いた日、レミは家族と友人たちに別れを告げた。「みんなとささやかな時間を過ごせて幸せだった。君らの笑顔に送られて逝くよ」。ヘロインで薄らいでいく意識の中で、レミは静かに微笑む。少年時代の彼を夢中にさせた初恋の女性、イネス・オルシーニの太ももを思い浮かべながら――。



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