テレビ東京アニメ公式サイト:あにてれ

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「かんかん様」

◆ 2014年6月18日

祖母の通夜に出席するため田舎の祖父母の家にやってきた会社員の男。


この家に来たのはもう15年ぶりだ。


子供の頃は、夏休みのたびに両親に連れられここへ来ていた。


親戚一同が集まり、いつもより豪勢な食事を食べられるのも嬉しかったが、一人っ子の彼にとって、2歳年上の従兄弟の兄ちゃんに遊んでもらえるのが、この家に来る楽しみの一つでもあった。


この家には祖母が大事な着物をしまっていた桐の箪笥があり、よく従兄弟の兄ちゃんと二人でこの箪笥についた金属製の取っ手を、まるでドアノッカーのようにカンカンと鳴らして遊んでいた。


特に上から4番目の取っ手は金具が緩んでいるのか気の抜けたような音がするため、何度も鳴らしては飽きもせず二人で大笑いしたものだ。


そのうち二人は、この引き出しに願い事を書いた紙を入れ、取っ手を2回鳴らすと叶えてくれるという架空の神様を考え“かんかん様”と呼ぶようになった。


次の年には決まってどんなお願い事をしたか覚えていないのだが、今まで入れた願い事を見てはいけないことにしたため、毎年二人は“かんかん様”に新しいお願い事を入れ続けた。


そんなある年の夏休み。


兄ちゃんはいつになく真剣な表情で彼に「もうかんかん様にお願いするのはやめよう」と言いだす。


いくら理由を聞いても「こんなことしても意味がない」としか教えてくれなかった。


その年に兄ちゃんは病院に入院してしまい、それ以来一度も会っていない。


親戚たちも兄ちゃんの話題は避けているようだった。


あれから15年経った今も“かんかん様”の桐箪笥はこの家にあった。


久しぶりに4段目の引き出しの取っ手を鳴らすと前にも増して、気の抜けたような音がして思わず笑ってしまった。


その時ふと、昔入れた願い事はまだ中に入っているのか気になりはじめる。


「もう時効だろう」


引きだしを開けてみるとそこには小さな紙切れの山があった。


その中の一枚を手に取り広げてみると、間違いなく幼き日の自分の字で「かけっこが早くなりますように」と書かれていた。


続いてもう一枚、広げてみる。


「もう、かんかん様が来ませんように」


そこには従兄弟の兄ちゃんの字でそう書かれていた。


「…かんかん様が…来る?」


次も、その次も、結局すべての紙を見たが、兄ちゃんが書いた願い事は全く同じだった。


すると愕然としている彼の目の前で、箪笥の4段目の引き出しがスーッとひとりでに開いた。


次の瞬間、着物を身に纏った小柄な老婆が体を軋ませながら引き出しからズルズルと這いずり出てくる。


恐怖で逃げることすらできない彼は、床を這って足元までやってきた老婆が自分の足をよじ登ってくるのをただただ他人事のように眺めていることしかできない。


老婆は彼の腰のあたりまで登ってきたところでニヤリと笑い、ところどころ抜けた上下の歯を小刻みに打ち鳴らした。


その音は箪笥の4段目の取っ手からする、気の抜けた音にそっくりだった…。


「視線」

◆ 2014年6月11日

どうしてもタバコがやめられない男。


妻からは息子が生まれたことをきっかけに止めるよう口うるさく言われているが、ベランダで吸うことで何とか許してもらっている。


ところが最近、両隣りの部屋の住人から洗濯物にタバコの臭いがつくからやめてくれと苦情を言われてしまった。


街中はもちろん飲食店でさえ禁煙になり、落ち着いてタバコを吸える場所など無くなっているというのに家に帰っても吸うことができないなんて、我慢がならない。


「だいたい何で自分の家のベランダで吸ってるのに文句言われなきゃなんないんだ…」


不平を言いながらも、できるだけ隣人が洗濯物を干してない夜遅い時間を見計らって吸うようにしている男。


街の灯りもすっかり消えた深夜の時間帯にベランダでタバコを吸うことが彼にとって唯一のリラックスできる時間となっていた。


この日もタバコを吹かしながら、マンションの7階から見える真っ暗な景色を眺めていると、ふとどこからか誰かに見られているような気配を感じる。


「…もしかして…隣りの住人?」


そっと両隣りのベランダに視線を送るがそれらしき人影は見当たらない。


気味が悪くなり部屋に戻ってベッドに入る男。


その翌日…男はいつもと同じようにベランダでタバコを吸っていた。


昨日のことがあったので、少しだけベランダに出ることを躊躇したが、やはり一服しなければ眠れそうになかったのだ。


とはいえ、恐怖心からいつもより早めに火をもみ消し、部屋に戻ろうとした男。


するとその背後で、ベランダの下の階から上の階に向かってスーッと何かが昇って行ったのを感じた。


大きさから考えておそらく人間だった。


勇気を振り絞り、ベランダから顔を乗り出して上の階を見上げる男。


しかしそこには何もない。


下の階も見下ろしてみるが、やはり人影はもちろん、それらしきものは何もなかった。


「…何だったんだ」


さらにその翌日…さすがに今日はやめようかとも思ったが、タバコの誘惑に勝てずにベランダに出る男。


一本だけ吸って早く戻ろうとタバコに火をつけたその時、すでに何かが自分を見つめている視線を感じた。


しかもすぐ近くで…。


もう一度、ライターで火をつけ暗闇を照らすと空中で何かが光った。


真っ黒な目。


闇に紛れて見えなかったが目の前の手すりに巨大な黒い鳥がとまってこっちを見ていたのだ。


「…カラス?」


だが何かがおかしい。


身体の大きさも相当巨大だがそれだけではない、奇妙な違和感を感じた。


よく見ると手すりにつかまっているその足は、か細い鳥の足ではなく青白い人間の腕だったのだ。


次の瞬間、黒い巨大な鳥は呆然と立ちすくむ男の頭に羽音ひとつ立てずに飛び乗ると、血色の悪い両手で髪の毛を鷲掴みにし飛び立った。


さっきまで自分がいたはずのベランダを見下ろすのはとても不思議な気持ちだった。


気付くとどこかに寝かされている男。


周囲からは興奮する雛たちの息づかいが聞こえる。


やがて体中に無数のくちばしが突き立てられるのを感じた男は、タバコなんか吸わなければよかったと心から思った。


「てるてる坊主」

◆ 2014年6月4日

明日に迫った運動会をとても楽しみにしている小学3年生の男の子。


ところが天気予報では明日の天気は雨。


何とか中止にならないようにと、てるてる坊主を作る事にする。


たくさん作った方が効果があると思った彼は、笑顔のてるてる坊主を5つ、窓の外に吊るしてお願いした。


「明日、雨が降りませんように…」


しかし、その翌朝、目覚めると彼の願いは虚しく外は大雨だった。


外に吊るされたてるてる坊主は雨で濡れ、笑顔だったはずの顔は滲んで涙を流しているように見える。


風で飛ばされたのだろうか、5つ吊るしたはずが4つしかない。


「あんなにお願いしたのに!」


頭にきた彼は、吊るされたてるてる坊主を力任せに引っぱると、頭が引きちぎれ無惨に落ちた。


運動会が中止になった場合、午前中だけいつも通り授業を受ける事になっていたため、母親の作っていた運動会用の豪勢な弁当を持って彼は嫌々学校へ向かう。


授業が終わる頃には、皮肉にも嘘のように雨は止み、空は晴れ渡っていた。


彼が家に戻ってくるのを待っていたのか、すぐに母親が晩ご飯の買い物に出かけていき、一人家で留守番することになる。


いつもは見られない時間帯のテレビ番組を楽しんでいると、突然ドアチャイムが鳴る。


一人でいる時は家に誰か来ても出なくていいと母親に言われている彼は、テレビを見続けている。


ところがその後もチャイムは何度も何度も鳴り続ける。


さすがに無視し続けていられなくなった彼は気配を殺して玄関へと近づき、ドアの覗き穴からそっと覗いてみる。


そして自分の目を疑った。


そこには白い布を頭からかぶった、自分と同じくらいの背丈のてるてる坊主が立っていたのだ。


マジックで描かれたようなその顔は滲んでいて、自分が首をちぎった、あのてるてる坊主のように笑いながら涙を流しているように見える。


「…誰?」


思わず声をかけるがてるてる坊主は何も言わない。


その時ふと、学校でクラスメイトにてるてる坊主を作った話をして、そんな幼稚な事をしてるのと笑われたのを思い出す。


もしかしたら友達が自分をからかいに来たのかもしれない。


「もう~やめてよ~」


玄関のドアを開け、辺りを見回すがそこには誰もいない。


「?」


覗き穴から見た時には確かに、てるてる坊主の格好をした人が立っていたはずなのに。


気味が悪くなり室内に戻ろうと振り返った瞬間、背後から巨大な布のようなものを被せられ、彼の目の前は真っ暗に…。


次に目を覚ました時、顔に被せられた布越しに空が晴れているのがわかった。喉が渇く。


あとどれくらい僕はこうして吊るされているんだろう…。


「障子の穴」

◆ 2014年5月28日

修学旅行である古びた旅館にやってきた男子高校生。


割り当てられた部屋はだだっ広い座敷で、外廊下とを隔てる障子は破けている箇所もあって隙間風が吹き込んでくるうえ、擦れて色あせた畳には何かを引きずったような跡がいくつもついている。


「普段、よっぽど客が来ないんだな」


旅館への不満を漏らしながら、彼は障子のかなり高い位置が破れているのに気づいた。


自分たちのような修学旅行生が枕投げでもして破ったのだろうか。


いずれにせよ、管理の行き届いていない旅館である。


その日の夜、風呂から上がると部屋にはすでに人数分の布団が敷かれており、横になって明日の予定を見ているうちに彼はいつの間にか眠りに落ちていた。


どれくらいの時間が経ったのだろう。
ふと目を開けると既に室内は真っ暗でせっかくの修学旅行だというのに、誰ひとり起きている気配がない。


きっとバスが事故渋滞につかまってしまい、初日のほとんどを移動時間に費やされたのが堪えたのだろう。


このまま目が覚めてしまわないうちに、朝まで眠ってしまいたいところだったがトイレに行きたくなってしまう。


面倒なことに部屋にはトイレはなく、外廊下の突き当たりまで歩いて行かなければならない。


仕方なく布団を出ようかと思ったその時、室内に妙な気配を感じる。


横になったまま室内を見回した彼はすぐに気配の理由に気づいた。


障子の穴だ。


最初にこの部屋に来た時に気づいた障子の最上段に空いたあの穴から、何者かの感情のない目が室内を覗いているのだ。


あの高さから覗いていることを考えると相当な背の高さだ。


しかもその目はどうやら女の目のようだった。


「…絶対に気づかれちゃ駄目だ」


本能的にそう感じた彼は、恐怖で震える体を両腕で抱きかかえるように押さえつけ、寝たふりをする。


その時、スーッと障子が少しだけ開き室内に風が吹き込んできたのを感じた。


「入ってくる!」


思わず薄目を開けて障子の方を見ると、少しだけ開いた障子の隙間から、おそろしく長い筋張った腕だけが室内に入ってきているのが見えた。



部屋の外から伸びたありえないほど長いその腕は、外廊下に一番近い位置で寝ていたクラスメイトの足首を掴み、ズルズルと障子の方へ引きずっていく。


しかし彼にはどうすることもできない。


すると次の瞬間、外廊下から「いつまで起きてるんだ!」と生徒を怒鳴りつける声が響き渡る。きっと別のクラスの生徒が女子の部屋にでも行こうとしていたのだろう。


ふと見るとクラスメイトの足首を掴んでいた腕は消え、障子は閉められていた。


おかげでクラスメイトは連れて行かれずに済んだが、今となっては良かったなどとは思えない。


この日以来、破れた障子のある部屋にいると必ずあの女がこちらを覗いているのだ。


彼が眠るのを待つように…。


「鶴」

◆ 2014年5月21日

自転車で学校から帰宅途中、車にはねられて入院する事になった男子高校生。


怪我自体は大した事なかったが、頭を強く打ったこともあり精密検査を受けるよう勧められ、しばらく入院する事になってしまったのだ。


普段から学校を休むようなこともほとんど無かった彼を心配した同級生たちは、入院した翌日から毎日見舞いにきてくれたうえに、大袈裟な事に千羽鶴まで作ってきてくれた。


特別どこかが痛い訳でもなく体力が有り余っている彼にとって、何よりも苦痛なのは早過ぎる消灯時間であり、眠れない夜は友人から貰った千羽鶴の数を数えるのが彼の日課となっていた。


不思議な事に千羽数え終わった頃には自然と眠気に襲われ、気づくと朝になっている事も多かった。


そんなある日、好きな子が学校帰りに見舞いに寄ってくれた事もあってか、いつにも増して目が冴えてしまっていた彼は、鶴を数え始める。


しかし、すべての鶴を数え終えたはずがこの日はまぶたが重くなる事は無かった。


鶴の数が1羽足りないのだ。


今までこんなことは一度も無かった…数え間違えたのだろうか?


このまま強引に目をつむって眠ろうかとも思ったが、気になってしまい、彼はもう一度鶴を数え始める。


だがやはり鶴は999羽しかいなかった。


その時、ふとベッドの下にでも落ちているのかもしれないと思った彼は、上半身を起こし、ベッドの脇に視線を送ったところで、一瞬にして後悔の念に襲われた。


そこには四つん這いで自分のベッドの下をくぐる人の姿があったのだ。


しかも一人や二人ではない。


患者用の入院着を着た人々が、病室の外の廊下から行列をなして自分の寝ているベッドの下へと続いていた。


人々はどうやらまだ彼の視線に気づいていないようだが、いつこちらを見上げるのではないかと、身動きひとつする事ができない。


そんな中、隣のベッドで寝ていた同部屋の患者が突然、ムクリと上体を起こす。


高速道路をバイクで走行中にトラックに突っ込まれたという大学生だ。


彼が入院してからというもの、一度も意識が戻る事の無かった大学生は、スチール製のベッドを軋ませながらまるで這うように床へ降り、その列に加わった。


「駄目だ…その列に入っちゃ…」


直感的に頭ではでそう思いながらも、彼にできる事といったら、とにかく物音を立てないよう身体を硬直させることだけだった。


どれくらいの時間が経っただろうか…ふと気づくとすでに朝だった…。


昨夜のことを思い出した彼は、何気なく隣のベッドを見ると寝たきりだった大学生はそこにおらず、シーツは奇麗に整頓されていた。


その日の晩、やはり眠れなかった彼は鶴の数を数える。


鶴は998羽しかいなかった。


とてもベッドの下を覗く気にはなれなかったが、室内には同部屋の誰かがズルズルと床を這う音が響き渡っていた。


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