テレビ東京アニメ公式サイト:あにてれ

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「カーテンの向こう」

◆ 2014年5月14日

放課後、校内に居残っている生徒がいないか見回りをしていた、ある高校の男性教諭。


テスト期間中ということもあって部活も行われていなかったため、すでにどの教室にも生徒の姿はない。
1階の教室から順に回り、人気のない校舎を2階、3階と上がっていくと、ある教室からバサバサと布が風になびくような物音が聞こえた気がした。


「誰かいるのか?」


音のした教室を覗いてみると、窓が開けっ放しになっていて室内に吹き込む風でカーテンがなびいているのが見える。


「まったく…仕事を増やさないでくれよな…」


窓を閉めようと教室に入ると、あることに気づく。
外から差し込む夕日に照らされ、カーテンの向こうに人影が見えているのだ。
本人はそれで隠れているつもりなのかもしれないが、カーテンの下からは女生徒と思われるスカートと足が見えていた。


こうして教室の見回りをしていると、突然の教師の出現に驚き、特別悪いこともしていないのに掃除用具箱や教卓の下に隠れる生徒はよくいる。


カーテンの影に隠れるとは、よほど慌てたか、隠れるところが見つからなかったのだろう。


「ほら何やってんだ?明日もまだテストがあるんだぞ。早く帰って勉強しろ」


声をかけるが返事はない。
彼が目の前までやって来ても、女生徒はカーテンの向こうでじっと動かずこちらに向いたまま、ただ黙って立っている。
一つため息をついた彼は、仕方なくカーテンを勢いよくめくる。


しかし、そこには開け放たれた窓があるだけで誰もいなかった


何かの影を人影と見間違えたのか?
いや、カーテンの下からは、間違いなくスカートと、そこから伸びる足が見えていたはず。


「…どういうことだ?」


状況がよく理解できないまま、念のため窓から顔を出し下を覗いてみる。
それらしき姿は見当たらない。


するとそこに吹きこんだ突風が、まとまっていたカーテンを大きくめくり上げ、窓の下を覗き込んでいた彼の背中にまとわりついてきた。


ふと振り返ろうとした時、彼は思わず凍りつく。
彼の背後…カーテンを隔てたすぐそこに、こちらに向いて立つ女生徒のシルエットが透けて見えたのだ。


声を出す間もなく、女生徒の小さな両手の感触を背中に感じた彼の体は、気づいた時にはすでに窓の外にあった。


ゆっくりと落ちていく彼が最後に見たのは、カーテン越しにでもわかる何者かの笑い顔だった。


「隣の子」

◆ 2014年5月7日

ある郊外の町に引っ越してきた小学生の男の子。


中古だが一戸建ての新居は、今まで住んでいたマンションに比べてはるかに広く、彼にとってかねてから欲しかった自分の部屋ができて嬉しくて仕方がない。


特に真っ赤な屋根の家は近所でも珍しく、友達を呼ぶ時に目印になりそうだと下見に来た時から気に入っていた。


二階にある彼の部屋から外の景色を眺めると、ふと向かいの家から同じ年ぐらいの女の子がこちらを見ている姿が見える。


彼は勇気を出して小さく手を振ってみる。


しかし、恥ずかしかったのか女の子はカーテンを閉められてしまった。


その後も度々、窓からこちらを見ている女の子の姿を目撃したが、家の外で彼女と会うことは一度も無かった。


母親にその話をすると、向かいに住む女の子はどうやら病気がちで学校にも行っていないらしいと聞かされる。


「きっと友達もいないんだろうな…」


可哀想に思った彼はその日から、声の届かない女の子に向かって画用紙書いたメッセージを見せてコミュニケーションをはかろうと試みる。


「こんにちは」


画用紙にそう書いて女の子に見せたがやはりカーテンを閉められてしまう。


しかし彼は構わず女の子の姿を見かけるたびにメッセージを送る。


「いい天気だね」


「友だちになろうよ」


「なまえは何ていうの?」


一方通行のメッセージが続いたそんなある日…


「友梨」


初めて彼女から返事があった。


「そっか…友梨ちゃんっていうのか」


やっと心を開いてくれたことに喜ぶ彼だったが、その日以来、女の子の部屋のカーテンは閉めきられ、彼女の姿を見ることはなかった。


その数日後、引っ越しすることになったと向かいの女の子の両親が挨拶にやってくる。


どうやら彼女の体調が悪化したため、病院に通いやすい場所に引っ越すことなったそうだ。


「あげたいものがあるんでしょ」


母親に言われ両親の後ろに隠れていた女の子は姿を現し、四つ折りにした画用紙を一枚くれた。


引っ越しのトラックをを見送った後、部屋に戻ってきた彼は、女の子にもらった画用紙を広げてみる。


それは彼女が描いたと思われる絵だった。


そこには真っ赤な屋根の家の二階の窓から、こちらを覗く男の子の姿が描かれていた。


しかしそれだけではなかった、家の壁や屋根にはびっしりと無数の人間がしがみつき男の子と同じようにこちらを見ていたのだ。


「…あの子はいつも…何を見てたんだろう?」


家を飛び出した彼は、彼女が住んでいた家の方から自分の家を見て言葉を失った。


その日以来、彼の描く絵には誰にも見えない奇妙な人の姿が描かれるようになったという。


「トランクの中」

◆ 2014年4月30日

久々に家族そろって祖父の家に帰省することになった中学生の女の子。
早朝に家を出たこともあり、父親の運転する車は渋滞につかまることもなく高速道路を快調に飛ばし、このまま順調にいけば昼過ぎには到着できそうだ。
「前にお爺ちゃんのとこにいったのはいつ頃だったっけ?」
「私が小学校に入学した報告をしなきゃって言ってたから…5年前?」
昔を懐かしみながら盛り上がる車内。


するとルームミラーを覗き込んでいた父親が何やら眉間にしわを寄せる。
「どうしたの?」
「…いや、かなり飛ばしてる車が近づいてきたみたいだから」
彼女が後ろを振り返ると、薄汚れた一台のセダンがものすごいスピードで接近してくる。


そして、みるみるうちに彼女たちの車に追いつくと、ピッタリと並走を始めた。
しかもドライバーを見ると血走った目でこちらに向かって何か叫んでいるようだ。
「あんまり見るな」
語気の強い父親の言葉に目を逸らす彼女たち。
あの車のスピードやドライバーの様子から、これ以上関わり合いになるのを避けるべきだと判断したのだろう。


しばらく目も合わせずにいると、並走していたセダンは再び加速をはじめ彼女たちの車を引き離していく。


ホッとした彼女は少しずつ車間距離を広げていくセダンの後部トランクに注目する。
トランクの蓋が微妙に開いたままになっていて、車の振動に合わせてパカパカと揺れている状態だったのだ。


とその時、一瞬トランクの中の暗闇に人間の顔のようなものが見えたような気がして目を疑う彼女。
車間距離が広がっていく中、さらによく目を凝らすと、開いたトランクの淵に手をかけ何者かが確かにヌーッと顔を覗かせ大きく見開いた目でこちらを見ていた。
両親はまったく気づいていないようだ。


その間にセダンは見えないほど先に行ってしまった。


気味の悪い車の出現に和やかな雰囲気は一転し、車内はぎこちない沈黙に包まれてしまった。
しかも運の悪いことに事故渋滞にまで巻き込まれてしまう。
「もしかしてさっきの車だったりして…」
そんな冗談を言い合えるほど冷静さを取り戻した彼女たちだったが、実際に事故現場で大破していた車を見て言葉を失う。
本当にさっきのセダンだったのだ。


警官が事故処理をする横を徐行しながら通り過ぎる時、彼女は人影の見えたトランクの中に注目する。
だが開きっぱなしになったトランクには人はもちろん何も入っていないようだった。


やっと事故渋滞を抜け、再び軽快に飛ばし始める父親の運転する車。


事故現場を過ぎたあたりからトランクに潜む、何者かの気配に気づかぬまま…。


「来る」

◆ 2014年4月23日

同級生数人と温泉旅行に来ていたある女子大生。


宿のチェックインの時間までまだ少しあったので近くの海岸に遊びに行くことに。


まだ時期的に寒さが残っているせいか、沖にサーファーが数人いる程度で人もまばら。


貸切状態の浜辺にテンションの上がった友人たちは、靴を脱いで膝まで海に浸かりはしゃいでいる。


彼女はそんな友人たちの様子を見て「まだ水も冷たいのによくやるなぁ」と呆れていた。


ふと足元を見るときれいな巻貝の貝殻が転がっているのが目に入る。


それを拾い上げた彼女は、貝殻を耳に当てると波の音が聞こえるという話を思い出し、実際に耳に当ててみる。


風を切るような音に混ざり、確かに「ザザザザ」という打ち寄せる波の音のようなが聞こえた。


しばらく貝殻が奏でる波の音に耳を傾けていると、時折ボソボソと奇妙な音が混じりあっているのに気づく。


開いている方の耳を塞ぎ、さらに貝殻から聞こえる音に集中すると、それはまるで人の声のように聞こえる。


「…けて……る…を…けて……くる…きをつけて」


気のせいだろうか?


いや確かに、女の声で「気を付けて」と言った。


さらに貝殻を強く耳に押し当てる彼女。


「きをつけて…くる…気を付けて…くるよ」


声は徐々にはっきりとしてくる。


「間違いない。何かが来るって言ってるんだ…でも何が…」


もう貝殻から耳を離すことができない。


やがて声は緊迫感を帯びてくる。


「来る…来るよ…来る!来る!来る!来る来る来る来る来る来る来る来る」


次の瞬間、貝殻の中から何かが耳の中へと飛び込んだ。


生温かく湿った何かが…。


「ズル…ズル…」と伸び縮みしながら彼女の耳の中を奥へ奥へと這って進むその何かは声を発した。


「…来たよ」


「老婆と猫」

◆ 2014年4月16日

学校帰りの小学生の少女。
いつもの通学路を一人、家に向かって歩いていると、どこからともなく猫の鳴き声が聞こえてきた。どうやら一匹や二匹ではない。
どこかで子猫でも生まれたのかと思いながら声のする方を探していくと、塀で囲われた一軒の古い家にたどり着く。
家を囲う塀沿いに歩いていると、わずかだが壁が欠けて、庭の様子が見える箇所を見つける。
覗き込むと庭にはたくさんの草木が伸び放題になっており、その向こうには一人の老婆がこちらに背を向けた状態で屈み込み、家の縁の下を覗き込んでいる姿が見えた。
「きっとあの下に猫がいるんだ」
猫の姿は見えないが老婆は餌でもやっているのだろう。
その様子をしばらく眺めている彼女。
すると振り返りもせず老婆は言う。
「そこのあなた、今晩、この子に餌をあげてくれないかしら」
「…私…ですか?」
蚊の鳴くような声でそう返すと老婆は背を向けたまま頷いた。


その日の晩。
行くべきか迷ったが、猫のことが心配になり、親に見つからないようそっと部屋を抜け出した彼女は、晩御飯の残りを手に老婆の家へと向かった。
だが扉をノックするものの返事はない。
諦めて帰ろうとすると中から数匹の猫の声が聞こえてくる。
「きっとお腹を空かせてるんだ」
彼女は仕方なく扉を開け、家の敷地へと入っていく。
夕方に見た庭の方へ回ると、老婆が屈み込んでいた縁の下の前に立ち、その暗闇を覗き込んだ。
猫の鳴き声はそこから聞こえているようだが、そこには闇が広がるばかり。
それでも目を凝らしながらしばらく覗き続けていると、縁の下の奥からこちらを見ているその瞳に気づく。
「ほら怖がらなくても大丈夫だよ。出ておいで」
餌を置き、そう声をかけると少しずつだがその瞳は何匹もの猫の鳴き声と共に彼女の方へと近づいてくる。


しかし近づいてくるにつれ、暗闇にぼんやりと浮かびあがったシルエットが明らかに猫のものではないと気づく彼女。
地面スレスレに這うように接近してきたそれは、闇の中から彼女の顔を覗き込んでいる。
間違いない…夕方に見た老婆だった。


あまりの恐怖に身動きすらとれずにいると、柔らく生暖かい何かが足元に絡みついてくるような感触に襲われる。視線を落とす。そこには一匹の猫がいた。
が一匹にしては何かがおかしい。
よく見ると猫の胴は異様に長く伸び、そこには4対の足が生えているのが見える。


猫は8本の足でスルリと彼女の肩へ登り、耳元に顔を寄せると老婆のようなしゃがれた声で笑った。
その瞬間、夕方に自分に話しかけてきたのはこの奇妙な猫の方だったのだと初めて気づいた彼女。


目の前には今にも彼女に喰らいつこうと大きく開かれた老婆の口が迫っている。
彼女の脳裏には「この子に餌をあげてくれないかしら」という言葉がグルグルと回っていた。


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