東京・多摩ニュータウン―――。
休日の町を走るバスに一人の少年が乗り込む。バスはゆっくりと走り出し、やがて多摩川の橋を渡り始めた。
眼下に広がる多摩川の土手では野球の練習に勤しむ少年たちや指導する大人、見守る父兄の姿、さらには応援団のエールを叫ぶ男の姿もある。
バスは一つ、また一つと停留所に停まりながら、少年を乗せて走って行く―――。
加藤徹夫(船越英一郎)は、ゲーム会社の企画開発部の一員として良質なゲームソフトを作り続けていたが、突然、専務の
伊達(北大路欣也)から地方の関連会社の営業部へ出向を命ぜられる。事実上の左遷だが、家族のためにと徹夫は単身赴任を決める。
しかし妻の佳枝(高島礼子)の心中は穏やかではない。その一方で、徹夫は小学六年生の息子・智(岡田蒼生)の所属する少年野球チームの監督もしており、レギュラー入りできない息子を最後の試合に出すべきかどうか悩んでいる。野球の大好きな智は練習を続けていたが、姉の典子(美山加恋)は「頑張ったっていいことなんか何もないんだから!」と冷たい言葉を投げつける…。
元応援団長の井上竜二(山口智充)は、妻の小百合(斉藤由貴)から、長女の美奈子(高畑充希)が高校を辞めたがっていると聞く。「絶対許さん!」と聞く耳を持たない竜二だったが、ある日、美奈子が高校を無断欠席していると知らされ驚く。美奈子は毎朝家を出ているが、果たして学校に行かずにどこに行っているのか、そう問いただすものの、美奈子は黙って答えない。竜二には思春期の娘の考えが全く分からない。また、大学時代に苦楽を共にした応援団員が病に倒れ、竜二は自分に何が出来るか悩んでいた。そんな時、年に一度、井上家を応援団員達が集まる日が訪れ…。
小学五年生の末長俊郎(倉本郁)は入院した母・知美(戸田菜穂)の見舞いへと、父・優一(杉本哲太)から渡された回数券を使って、生まれて初めて一人でバスに乗り母の入院する病院へと向かっていた。回数券を使い終わる頃には退院すると信じていたが、回数券の枚数は次第に減っていき、俊郎は不安になる。その上、ぶっきらぼうなバスの運転手・ 河野(中村梅雀)が苦手でバスに乗るもの怖くなってしまう。さらに、野球チームを休んでいる俊郎は最後の試合に出て欲しいと六年生の井上翔太(栗田恵)から頼まれ…。
年代、性別、職業・・・異なる立場の人々が、異なる悩みを抱えながらバスに乗り込む。
そのバスは場所から場所へと人を運び、町と町を、人と人とを結ぶ“絆”の役割を果しているかのように、今日も優しく多摩ニュータウンの町を走り続ける―――。