東京五輪へ スペインとの実戦でチェックしたU-24日本代表の現在地

2021 キリンチャレンジカップ U-24日本代表 写真:JFA/アフロ
東京オリンピックに臨むサッカーのU-24日本代表が7月17日、神戸で行われた強化試合でU-24スペイン代表と対戦。優勝候補筆頭と言われる強豪と1-1で引き分け、大会初戦まで1週間を切って、チームの準備状況が見えてきた。
「オリンピックで金メダルを目指している。同じ目線で戦って、世界トップレベルとの闘いでいい刺激を受けて、東京五輪へ自信となる準備をしてほしい」
五輪本番前の最後の実戦を前にU-24日本代表の森保一監督はそう語り、スペインとの対戦で得るものを本大会へ活かしたいという期待を示していた。
チェックポイントはいくつかあった。直近の今月12日に行ったU-24ホンジュラス代表との対戦では、前半で2-0のリードを奪った後、後半の試合運びについて選手間で考え方に統一感を欠いたところが見られ、試合の流れを持って行かれそうになった。
悪い流れの時に試合を自分たちの方へ引き戻すことは、大会を勝ち抜くには重要な部分だ。また、6月のU-24ガーナ代表やフル代表のジャマイカ代表との対戦では相手に押し込まれる展開がなく、守勢に立たされた時の対応のチェックが残っていた。
DF吉田麻也選手(サンプドリア)は、「スペインは間違いなく実力があるチーム。相手として非常にいい」と歓迎。「(試合に)いい入りをすること、ゲームを支配すること。ゲームを支配した中で流れを相手に渡さないことやゲームのテンポを考えること。(ゴールを)決めるところで決めて試合を決めること」をチェックポイントに挙げていた。
スペインは2大会ぶり11回目の出場となる今回の東京オリンピックで、優勝候補筆頭と言われている。U-21欧州選手権で2019年に優勝し、今年5~6月に行われた2021年大会では4強に進出。
その2大会を戦ったメンバーを中心に、先日終了したEURO2020欧州選手権でフル代表としてベスト4入りを経験したメンバー6人もいる。フル代表のような選手提供義務がないことから五輪代表への選手派遣に非協力的なクラブが少なくない中で、スペインは豪華な布陣を用意できている。
中でもMFペドリ選手は18歳ながら、今回のEURO大会でベスト11に選出された逸材。FWダニ・オルモ選手(ライプツィッヒ)やGKウナイ・シモン選手(ビルバオ)も主力としてプレーした。
今回の五輪チームにOA(オーバーエイジ)で加わっているMFミケル・メリノ選手(レアル・ソシエダ)、MFダニ・セバージョス選手(レアル・マドリード)、FWマルコ・アセンシオ選手(レアル・マドリード)も24~25歳とメンバーと年が近く、ほかのメンバーともこれまでの活動で互いによく知っている間柄で、チームとして完成度は高そうだ。
しかも来日前には日本の高温多湿の夏に適応すべく、気象条件の似た土地で合宿を行う念の入れようだ。前回出場した2012年ロンドン大会では、日本戦を含めてグループステージで2敗したことが響いて決勝トーナメントに進めずに終わったが、今回は1992年大会以来の金メダル獲得を睨んで、準備やメンバー編成に本気度が伝わってくる。
DF吉田麻也選手(サンプドリア)は、「間違いなく実力があるチーム。相手として非常にいい」と歓迎し、チェックポイントとして「引き続きいい入りをすることとゲームを支配すること。流れを相手に渡さないことやゲームのテンポを考えること。決めきれるところで決めて試合を決めること」を挙げていた。
スペインへの期待が膨らむ中、17日の試合では来日後の時差ぼけもあり、まだ本調子とは言えない様子だったが、それでも高い力量の片鱗はうかがえた。
中でも日本の最終ラインとボランチの間のスペースに入った選手へ、後ろやサイドから鋭いパスをズバッと付けて展開を図る動きは、気を抜けばすぐにペナルティエリアへ持ち込まれ、ゴールを脅かされる。
しかし日本は焦れずに対応し、前半15分にFWラファ・ミル選手(ウルバーハンプトン)にシュートに持ち込まれた場面もGK谷晃生選手(湘南)が好セーブで阻止するなど、粘り強く対応した。
一方で、日本は自分たちで流れを作り出し、少ないチャンスをモノにするソツのなさも見せた。
前半30分ごろの飲水タイムの直後から攻めの姿勢を見せ、右サイドを攻め上がったDF酒井宏樹選手(浦和レッズ)の折り返しにMF久保建英選手(レアル・マドリード)がシュートを狙い、右CKにMF板倉滉選手(フローニンゲン)がヘディングで合わせ、左サイドの崩しにFW林大地選手が相手DFを背負いながらシュートを放ち、攻撃のリズムを掴んで相手ゴールに迫った。
そして前半42分に均衡を破る。
左サイドでのDF旗手怜央選手(川崎フロンターレ)のスローインを受けて久保選手が相手DFと競り合いながら持ち上がり、ゴール前への折り返すと、ゴール前に走り込んだMF堂安律選手(PSVアイントホーフェン)がしっかり合わせてゴールネットを揺らした。久保選手の強さと巧みさ、堂安選手の決定力が光った場面だった。
「本番はこんなものじゃない」
後半は開始からOAの吉田麻也選手、酒井選手、遠藤航選手(シュツットガルト)の3人を含めて7人を交代。さらに、その後の45分の間で2選手をベンチから送り出したことでまた別のチームとなったが、スペインも大会前の最初で最後の試合機会に9人を交代で投入。
特に後半20分過ぎにMFペドリ選手(バルセロナ)が登場すると、この18歳のMFを起点に日本ゴールに迫る場面が増え、日本は押される展開になった。
流れを掴んだスペインは後半32分に左サイドの崩しからFWハビ・プアド選手(エスパニョール)がシュート。これをMFカルロス・ソレル選手(バレンシア)がゴール前で触ってわずかにコースを変え、同点にした。
日本は押されながらも後半40分には、途中出場のMF三好康児選手(アントワープ)が素早いターンで相手をかわしてFW上田綺世選手へスルーパスを送り、交代出場の鹿島FWが相手ゴールを脅かす場面を作った。
相手GKにブロックされて決勝点は奪えなかったが、日本は押されながらも我慢強く戦い、失点後にズルズルと崩れることなく、引き分けで試合を終えた。
久保選手は「負けずに終われたことは良かった。強豪と十分渡り合えることは示せたと思う」と話し、4戦連続得点の堂安選手はスペインに対して「力の差を感じた」としながらも、その相手に「どう勝点を取っていくか、共通理解を持ちながらプレーできたと思う」と振り返った。
また、吉田選手は「本番はこんなものじゃない」と言及し、冷静に試合を見つめて「やれたこともたくさんあったが、反省点もたくさんあった」と振り返り、手ごたえと課題を手にしたことが収穫という認識を示した。
3度目の五輪に望む五輪チームキャプテンは、この日の守備については「苦しい時間帯はあったが、相手の強みを消しながら総じてうまく守れたが、相手のコンディションがよければさらに厳しい試合になっていたかと思う」と分析。さらに、守り方についても「リアクションだけでは、いつかやられる」と指摘して、「先手を取る守備」と「ボールを奪った後のプレーの質を上げる」ことが必要だと説いた。
森保監督は、「スペインに押し込まれる時間も長くあったが、その中でも守備だけでなく、攻撃でもトライしてゴールを目指すことを粘り強く、得点チャンスをうかがう戦いをしてくれた」と話したが、「オリンピックでは世界強豪と厳しい戦いが待っていることをチームとして経験できたことが良かった」と語り、本来のコンディションではなかったものの、世界強豪の鋭さを本大会前に体感した点を収穫としていた。
日本は22日の初戦で南アフリカと対戦し、その後、25日にメキシコ、28日にフランスと対戦する。スペイン戦から本大会初戦までは中4日だ。
森保監督は、「メンタル的にもフィジカル的にもたくましくなっているし、戦術で自分のストロングをしっかり出すところ、対応力などはすごく成長している」と選手たちの成長に手ごたえを得ている。「さらにいい守備、相手が嫌がる攻撃をできるように、今日の経験をもとに残り期間で準備していきたい」と語った。
取材・文:木ノ原句望