陸上・山縣亮太 100メートルに広がる無限の世界、オリンピックファイナリストを目指して

そこに秘められたドラマをあなたはまだ知らない
日本人が世界と戦うことの尊さを教えてくれる選手たち。
その中心に山縣亮太はいる。
陸上短距離で日本人がどこまでやれるのか。4年前、素朴な興味から取材は始まった。
まず驚いたのが食い入るようにスマホを見つめる姿。山縣にはコーチがいなかった。だから撮影した走りを自分で確認する。人に備わる無限の力を探る日々。
ライバル・桐生祥秀
息抜きは釣り。人間は理性と本能の狭間に揺れる存在。釣り糸は無心にしてくれる。
釣った魚は自分でさばき、食卓へ。何事にも突き詰める性分なのが見て取れる。
「自分に足りない物は?」
その答えを競い合うライバルに探すこともある。
たとえば桐生祥秀。4年前、日本人がことごとく跳ね返されてきた10秒の壁を越えたのが3学年下の桐生だった。
他に例のない桐生独自のフォームを山縣は真似をし答えを探した。
日本新記録
あれから4年。今年6月にその日は来た。9秒95。
この2年、病気や怪我に苦しみ不調にあえいだ男が復活。日本記録を塗り替えたのだ。
この4日後、誕生日を迎えた山縣は29歳になる。もう若いとは言えない体。それでもできると、証明した。
山縣は今年ある決断をした。競技人生で初めてプロのコーチを雇ったのだ。
2月のことだった。山縣は高野コーチに見方によっては失礼な依頼をしたという。
自分のやり方は変えたくない。でも意見が欲しい。
それでも高野コーチは受け入れてくれた。教えるでも導くでもなく明るく寄り添っている。
結果、日本新記録は生まれた。
オリンピックファイナリストという高い壁
そしてその二十日後、東京オリンピック代表選考レースはやって来た。
やり直しはない。一発勝負で運命は決まる。3年ぶりの、勝負の100メートル。
結果3位。代表を勝ち取った。
迎えた東京オリンピック、予選で10秒15で3組4着となり、残念ながら準決勝に進めなかった。
次に越えるべきはオリンピックファイナリストという高い壁。
100メートルに広がる無限の世界に、必ず突破口を見つけてみせる。