【スプリンターズS みどころ】速さこそが正義のレースで輝く馬とは

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2021.10.2

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2020スプリンターズステークス 写真:日刊スポーツ/アフロ

短距離界において、速さこそが正義だ。

スタートからハナを奪うにしても、直線で猛然と追い込むにしても誰よりも速いスピードで走れる馬だけが栄冠をつかむことができる。それがたった70秒のドラマ、スプリンターズSの掟である。

それゆえに競走馬たちにもスピードが求められる。それは単に走りの速さだけとは限らない。ひとつ例を挙げれば、自身の才能を開花させるまでの速さだろうか。

スプリンターズSがGIに昇格して以来、延べ31頭の勝ち馬がいるが6歳以上で勝った馬は8頭。一見多いようだが、そのうちの6頭はスプリンターズS初挑戦でその栄冠を手にしている。

つまり、国内短距離GIの最高峰であるスプリンターズSを制した高齢馬は一度掴んだチャンスを逃さずにモノにしてきたということが伺える。才能がひとたび開花したら、そのまま昇り詰めていくというのが短距離王の姿と言えるだろう。

 そう考えると、ダノンスマッシュはどうだろうか。

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 春の高松宮記念で念願となっていた国内GI制覇。

父ロードカナロアとともに親子制覇を成し遂げ空位となっていた短距離王の座に就いたが、その勢いで臨んだ香港でのチェアマンズスプリントはまさかの6着完敗。激戦となった高松宮記念の疲れが少なからず影響したようにも見えた。

 あれから5ヵ月。

秋のこのレースに備えて英気を養い、万全の状態でこの大一番に臨むが......

2年前は1番人気に支持されながら3着止まり、そして昨年はグランアレグリアに突き放されての2着と、上位に食い込みながらもスプリンターズSにおける勝負運のなさが気になるところ。

「惜敗を重ねながら、やっとつかんだGI」という構図はスプリンターズSの歴史にはそぐわないものである。

そんな先述したジンクスとも真っ向から向き合うことになった春のスプリント王・ダノンスマッシュは果たして3度目の正直を叶え、父と同じく春秋スプリント王の座に就けるだろうか。

負けても負けてもくじけずに這い上がる、叩き上げのスプリンターがもしかするとここで生まれるのかもしれない。

 速さが正義というならば、レシステンシアも主役を張れる逸材だ。

 天賦の際とも言えるスピードを武器にただただ前を目指して突っ走ってきた少女は挫折を乗り越え、短距離に舞台を移した今年、再び活路を見いだした。

ダノンスマッシュに屈した高松宮記念では従来の先行策を捨て、中団から早めに仕掛けるというレースをしてクビ差の2着。3歳時に苦汁をなめ続けたかつての2歳女王は少女から淑女へと成長を遂げていた。

ヴィクトリアマイル6着を最後に休養に入り、迎えた秋緒戦のセントウルSでは自然体で前に行き、勝負所で先頭に。

3歳馬ピクシーナイトが猛然と迫るのを軽くあしらうがごとく抑え込んでの勝利はどこか余裕さえ感じられた。

まさにオンナ4歳、完熟の秋。ただひたすらに前を求めるのではなく、自然体のレースで動けるようになった彼女が初挑戦となるスプリンターズSの舞台で輝きを放つのだろうか。

かつての短距離王サクラバクシンオーにキングヘイロー、そしてロードカナロアなどスプリントGIを制した馬の産駒たちも短距離で活躍することで、親子によるスプリントGI制覇というシーンが最近ではよく見られるようになった。

しかし、その内訳はすべて父と子の制覇によるもの。スプリントGIを制した短距離女王の子供たちはいずれも辛酸を舐めてきた。

その例として、父にロードカナロア、母にカレンチャンというスプリントGI馬同士の配合で生まれたカレンモエは前哨戦であるセントウルSで敗れてしまい、スプリンターズSにはエントリーすらできなかった。

だが、そのセントウルSでもしやと思わせた馬がいた。
母にビリーヴを持つジャンダルムだ。

 2002年のこのレースを制した短距離女王を母に持つ超良血馬はバリバリのクラシック候補生としてデビュー。

デイリー杯2歳S制覇、ホープフルS2着と才能の欠片を見せたが、やはり血には逆らえず、3歳クラシック戦線では歯が立たなかった。

一度崩れてしまった歯車がかみ合うまでには時間がかかり、ジャンダルムがやっと本来の力を出せたのは6歳になった今年に入ってから。阪急杯で3着に入るとスプリンターズSと同じ舞台の春雷Sで番手から抜け出して母が得意とした1200mでの初白星を飾った。

そこからひと夏を越えて、セントウルSではレシステンシアには届かなかったものの、上がり3ハロンの時計はメンバー最速となる32秒6という母以上の末脚を見せた。

思えば、中山芝1200mのスプリンターズSは母ビリーヴが若武者デュランダルに差し切られ、短距離女王から陥落した舞台でもある。

因縁のコースで18年越しとなる母のリベンジを飾るには機は熟した。回り道から見いだした6歳の秋、母と同じステージで真の強さを見せることはできるだろうか。

 自然体なスピードで女王の座を目指すレシステンシアに、極上のキレで母子制覇を目論むジャンダルム、そしてスプリンターズSにおけるジンクスに挑むダノンスマッシュ......

速さこそが正義であるこのレースで主役となるのは果たして誰なのか。


■文/福嶌弘



第55回スプリンターズステークス(GI)枠順
枠順 馬名(性齢)騎手
1-1 シヴァージ(牡6)吉田隼人
1-2 ミッキーブリランテ(牡5)和田竜二
2-3 ラヴィングアンサー(牡7)岩田望来
2-4 ピクシーナイト(牡3)福永祐一
3-5 ファストフォース(牡5)鮫島克駿
3-6 メイケイエール(牝3)池添謙一
4-7 タイセイビジョン(牡4)三浦皇成
4-8 ビアンフェ(セ4)藤岡佑介
5-9 クリノガウディー(牡5)岩田康誠
5-10 エイティーンガール(牝5)横山和生
6-11 ジャンダルム(牡6)浜中俊
6-12 レシステンシア(牝4)C.ルメール
7-13 アウィルアウェイ(牝5)戸崎圭太
7-14 ダノンスマッシュ(牡6)川田将雅
8-15 ロードアクア(牡5)田中健
8-16 モズスーパーフレア(牝6)松若風馬

※出馬表・成績・オッズ等は主催者発表のものと照合してください。