【チャンピオンズC】テーオーケインズ 無人の野を行くがごとく独走で掴んだ真の王座

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2021.12.6

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2021 チャンピオンズカップ(GI)テーオーケインズが優勝 写真:東京スポーツ/アフロ

本当に強いのは、俺だ ~第22回チャンピオンズC回顧

今年のチャンピオンズCの前日最終オッズを見て、果たして競馬ファンはどんなことを思っただろうか。

12月4日の17時の段階でチャンピオンズCの1番人気に支持されたのは3歳牝馬のソダシだった。その実力は誰もが知るところで、桜花賞を制した圧倒的なスピードに、札幌記念で古馬を粉砕した雄姿は未だに記憶に新しいが、いかんせんダートはこれが初めてのこと。

一族がダートで活躍してきたからと言って彼女がダートでも走れるという保証はどこにもない。ましてや舞台はトップホースが集まるGIでしかも枠は最内の1枠1番。初めて走るダートで砂を被ったら......と不安に思うところだが、それでもファンはソダシの偉大な挑戦を支持した。

 しかし、初ダートのソダシが1番人気に支持されたということはその他の馬たちが「頼りない」と思われた証でもある。実際、ダートのGIホースは今回8頭もエントリーしてきたが、前走でしっかり勝ってここに臨んだ馬はゼロ。

例年、チャンピオンズCにおいて最重要なステップレースとして見られているJBCクラシックにはテーオーケインズ、チュウワウィザードら5頭が挑んだものの、結果は船橋所属の地方馬、ミューチャリーの激走の前に完敗。ダートのGIホースが8頭も集まったとは言え、どの馬もどこか頼りないという印象は最後まで拭えず、結果としてソダシが1番人気に推されることになった。

 おそらく彼らはそんな不当な人気を自らの力ではねのけたかったことだろう。今年のチャンピオンズCのパドックはただ1頭としてイレ込む様子がなく、「初ダートの3歳牝馬になんて負けないぞ」とばかりに、全馬とも闘志をたぎらせていたように思う。

もっとも、どの馬も抜群の周回を見せたため、馬券予想が余計に難しくなったのは言うまでもないが。

 各馬のそんな思いを現地のファンは感じ取ったのか、最終的なオッズはテーオーケインズがソダシを上回り、3.3倍の1番人気に。そして4.5倍というソダシのオッズに肉厚するかのように昨年のこのレースの覇者、チュウワウィザードが4.6倍の3番人気で迫っていた。

今年のチャンピオンズCは戦前こそ、「稀代のアイドルホース・ソダシの新境地開拓」だけが話題になっていたが、直前にはソダシを含めた出走全16頭による「ダート最強馬決定戦」へと顔つきが例年通りのものに変わっていた。

もしかするとこの時点で、レースの主役はソダシではなかったのかもしれない。

スタートダッシュを決めたソダシはキャリアで初めて先頭に立ってレースを迎えた。他の馬から砂を被ることなくレースをするにはこの方法しかないが、それは同時に15頭からのマークを一身に受けるという諸刃の剣でもある。

一見、ソダシは軽快に逃げているように見せたが、そのすぐ後ろにいたのは武豊と古豪インティ。百戦錬磨の猛者たちにマークされながらの逃げはさぞかし厳しかったことだろう。

迎えた直線、ソダシは最後の力を振り絞って先頭に立ったままゴールを迎えようとするも、終始マークしていたインティがあっさりとソダシを捕まえて先頭に立つと、気持ちの糸が切れてしまったのか、ソダシはズルズルと後退。7歳の古豪に伏兵のアナザートゥルースが接近してくるのと同時にやってきたのが、4歳のテーオーケインズだった。

1年前のテーオーケインズと言えば、GIどころかオープン特別勝ちすらなかった凡庸な馬だったが、今年に入ってトントン拍子で3連勝。

アンタレスSで難なく重賞初制覇を飾ると、返す刀で挑んだ帝王賞でGI初制覇。上半期のダート界の王を決める大一番をその勢いに任せたまま突き抜けてしまった。

これでダート王の道を歩むかと思われたテーオーケインズだが、秋緒戦として迎えたJBCクラシックでは勝ち馬から2馬身ほど離された4着にまさかの完敗。

連勝がストップしただけでなく、敗れた相手が先述した通り、地方馬のミューチャリーだったことも盤石の王としては頼りないと思われる一因となった。

ただしこの一戦はスタートで後手を踏んでしまってのもので持ち味を生かせないまま終えた一戦でもある。直線が延びるJRAのレースでこそ買いたい馬で、通常ならもっと人気になってもおかしくない1頭だったが、最終的なオッズは1番人気とはいえ3.3倍。

いくらアイドルホース・ソダシがいたからと言っても、ずいぶんナメられたと

それで直線に入ってインティを交わして先頭に立つと、後は後続と差を広げるばかり。結果として2着に入った昨年のこのレースの勝ち馬、チュウワウィザードに6馬身もの大差をつけるブッチギリの圧勝を見せたのだから、その強さにはただただ脱帽するほかなかった。

「今回、テーオーケインズの強さを知ってもらえてよかった」と、レース後に語ったのは鞍上を務めた松山弘平騎手。

道中の位置取りはソダシ、インティよりも後ろの5~6番手というところだったが、直線に入ってからの伸びが抜群で上がり3ハロンのタイムは35秒5。

レース全体の上がり3ハロンの36秒0を軽く超えるどころか、2位のチュウワウィザードですら36秒2だったのだからその切れ味がいかに鋭かったかがよくわかる。

 アイドルホース・ソダシの失速を悲しむファンを尻目に「俺がダート最強馬だ!」と名乗りを挙げるがごとく砂塵を上げて爆走したテーオーケインズ。ダート界に現れた新鋭は来たる2022年、どんなレースを見せてくれるのだろうか。

 そして来年のチャンピオンズC、テーオーケインズの前売りオッズは果たしてどれくらいになっているのか......それを楽しみにしたい。


■文/福嶌弘