スノーボード日本代表・鬼塚雅 パークビルダーと作る練習コース、北京五輪への決意
そこに秘められたドラマをあなたはまだ知らない。
スノーボード日本代表、鬼塚雅は決意をこう口にする。
「北京五輪では金メダルを獲りたいと思います。実力を100%出せたらいいなと思います。」
鬼塚にとっては二度目のオリンピック。この4年にどれだけの挑戦とどれだけの葛藤があったか。 その答えがもうすぐ出る。
4年前の平昌オリンピック。まず挑んだのはスロープスタイル。世界選手権の優勝経験を持つ鬼塚にはメダルの期待がかかっていた。
だが...結果は19位。続いて出場したビッグエアも8位に終わり、メダル獲得は叶わなかった。
パークビルダーと作るコース
彼女の物語の第二章はあの日に始まった。
第一章には旅立ちがあった。熊本に生まれ育ち、5歳で初めてスノーボードと出会う。高校までは熊本にいたが卒業後にふるさとを離れた。そして今、拠点は福島県の磐梯山。
オリンピックのメダル獲得へ。ここでなければいけない理由がある。
スノーボードのコースはパークビルダーと呼ばれる専門家が設計し、雪を固めて作る。その担当者である山田さんに鬼塚は滑ってみて感じたことをすぐに伝える。
つまりここは鬼塚の注文に応じたコース。世界で勝つために磨きたい技や、大会のコースに合わせて、その都度、手を入れている。
職人をその気にさせる人柄と才能
この道が北京に続いている。そう思うことが山田さんの励みだったが現実には苦労が尽きなかった。
完成後の調整もしばしば。しかし職人をその気にさせる人柄と才能が、鬼塚にはある。
斜面の上のスタート地点への移動はスノーモービルに引っ張ってもらう。リフトよりも断然効率的で1週間分の練習が1日でできるようになった。
北京オリンピックに向けて、練習の主眼は二つある。ひとつは既に身につけた技の精度を上げること。そしてもうひとつは新たな技の習得だ。
選手は天候や試合展開、自分の調子などを踏まえて跳ぶ技を決める。ゆえに跳べる技が豊富なほど作戦は立て易い。
鬼塚の武器
鬼塚が習得しようとしているのは縦に2回転するダブルクリップラー。女子では世界でまだ数人しか成功していない大技だ。
練習中、どれだけ転倒したことか?だがその度に彼女は立ち上がった。あきらめるという選択肢はなかった。
挑戦3日目、遂にダブルクリップラー成功。たった一度の成功だがその意味は大きい。一度できれば身体が感覚を覚え、またできるのがこの世界だからだ。
ビッグエアでも武器がある。世界で鬼塚にしかできない技キャブダブルコーク1260(トゥエルブシックスティ)は縦に2回転、横に3回転半する。一発勝負のビッグエアでも大技中の大技だ。たとえ回転がうまくいってもそのあと着地して立つ動作が困難を極める。
だが、鬼塚は去年から今年にかけて試合でも2度成功させている。
スロープスタイルとビッグエア。
鬼塚雅、物語の第2章はこれから佳境を迎える。