日本ダービー制覇へ “最強軍団” ノーザンファーム ジオグリフ&イクイノックスの軌跡

その他

2022.5.25

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日本ダービー2022 ~HEROになるために~

3歳馬7522頭の頂点であり、競馬界最高の栄誉である『日本ダービー』。

このタイトルを手にするために今年も人馬ともに熱い戦いを繰り広げる。

その熾烈な戦いを勝ち抜いて夢の舞台へエントリーしてきた各馬に秘められたエピソードや関係者たちの知られざる想いに迫った。

牡馬クラシック初戦となる皐月賞(GI)でワンツーフィニッシュを決めたジオグリフ&イクイノックス。「日本一の牧場」と誉れ高い最強軍団ノーザンファームで生まれ育ち、世代をけん引する存在になった2頭の知られざる物語とは...

2人のホースマンの夢を背負うジオグリフ

新時代の到来とも言われた今年の皐月賞。

このレースを制したジオグリフ、そして2着のイクイノックスはともに新種牡馬の産駒で、レース前まで混戦模様だった今年の3歳牡馬戦線において一気に世代をリードする存在となり、ダービー戦線への主役へと躍り出た。

この2頭に加え、3着ドウデュース、4着ダノンベルーガまでの上位4頭は北海道・安平町にある名門中の名門、ノーザンファームの出身。

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過去にはディープインパクト、アーモンドアイらを輩出したことでも知られ、今では日本一の牧場とも称される。クラシックレースでも圧倒的な強さを誇り、中でもダービーは史上最多となる10勝を挙げている。

ジオグリフの母であるアロマティコは重賞にこそ手が届かなかったが、現役時代は秋華賞で3着に入るなど6勝を挙げた活躍馬。

生まれ故郷であるノーザンファームに繁殖牝馬として戻ってくると、コンスタントに活躍馬を輩出。そして4番目に生まれたのがジオグリフである。

「まさかアロマティコの子どもが皐月賞を勝ってくれると思わなかった」と、驚いたのはアロマティコを担当している厩舎長の田張俊輔氏。

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常に馬のケアを優先し、ジオグリフが皐月賞を制した際も「お前も名牝の仲間入りだな」と声をかけたという。

「あなたの子どもがダービーに出るって。勝ったらすごいことになるよ」と、インタビュー中も優しく語りかけていたが、「ねえ、ちびちゃん」と、田張氏の視線はアロマティコのすぐ下へ。

そこにいたのは今年3月に生まれたばかりのジオグリフの弟にあたる当歳馬。

田張氏は「兄のように活躍することを期待している」というが、実は管理馬のダービー挑戦はこれまで一度もなかったという。それだけにダービーへ臨むジオグリフに対しての期待が大きい。

そんなジオグリフの当歳時を担当していたのが佐藤洋文厩舎長。

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まだまだあどけなかったであろう当時のジオグリフの印象は「馬なりに勝手に成長していくし、ありがたい馬」。まさに優等生タイプの成長曲線を描いていた。それだけに皐月賞の最後の直線は「思わず声が出た」ほど、気持ちがこもったという。

そんな佐藤厩舎長もまた、これまでのホースマン人生の中でダービーには縁がなかった。

「(1年に)7000頭近くいるので、その中の18頭に入らないといけないし、そこで勝つのはまた難しい。ダービーはまだ経験がないからこそ、期待している」

今や皐月賞馬となったジオグリフの幼少期を知る2人にダービー制覇の最大のチャンスが迫ったが、果たして実現するだろうか。

新時代の到来を告げる期待の新種牡馬たち

ジオグリフの父は新種牡馬のドレフォン。

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現役時代はGI3勝を挙げているダートのスプリンターだが、繋養先である社台スタリオンステーションの徳武英介氏によると「産駒は最後までバテない。BCスプリントを制したスプリンターの産駒が日本のクラシックを勝って新しい時代の到来を感じさせる」と最大級の評価を送っている。

そして、社台スタリオンステーションにはイクイノックスの父で今年の3歳世代から種牡馬デビューしたキタサンブラックもいる。

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現役時代はGI7勝を挙げ、当時の獲得賞金額トップにも躍り出たスターホースで、馬主が歌手の北島三郎氏であることも話題になった。

それだけに産駒にも大きな期待が寄せられたが、徳武氏は「長い距離をスピードで押し切るし、自分のペースで速いラップで走れる」と産駒が持つその圧倒的なスピードに惚れ込んでいる様子だった。

キタサンブラック産駒の持ち味である圧倒的なスピードを武器に皐月賞の直線を伸びてきたイクイノックスに、ドレフォン産駒らしい決してバテないスタミナ溢れる走りで突き抜けたジオグリフ。

ダービーの直線でもこの2頭のハイパフォーマンスの走りは果たして見られるだろうか。

覇権を争う2頭の現在の様子

そんな皐月賞で1、2着を分け合った2頭はどこにいるのか?

その答えはノーザンファームの分場であり、生産馬たちをサポートする育成施設である福島県・天栄村にあるノーザンファーム天栄だった。大一番であるダービーに向け、2頭はここで英気を養っていた。

「皐月賞の疲れを回復させてあげるのが一番の目的」と語ったのがノーザンファーム天栄の場長である木實谷雄太氏。

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彼が携わった馬でダービーを制したのは2009年のロジユニヴァースをはじめ、実に4回。中でも2016年から2018年まで3年連続でダービー馬を輩出するという快挙も成し遂げている。

そんなダービー制覇におけるスペシャリストが組んだメニューをこなす2頭。

気候が温かくなると同時に調子が上向いてきたジオグリフにいい意味で敏感な面があり、まだまだ伸びしろがありそうなイクイノックス。2頭揃って心身ともにリラックスして、大一番の決戦に備えている。

様々なホースマンの想いを背負い、ダービーへ向かうジオグリフとイクイノックス。すでに世代をけん引する存在となった2頭だが、木實谷氏はさらなる期待をかけていた。

「日本を代表するような競走馬に成長して、世界で活躍してほしい」


■文/福嶌 弘