35歳のオールドルーキー・菅野智之 夢を叶えた右腕 巨人のエースがついに海を渡った

野球

2025.2.25

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写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

巨人のエースがついに海を渡った。FA宣言した菅野智之投手(35)が、ボルチモア・オリオールズと1年契約、年俸1300万ドル(約20億1500万円)で合意し入団が決まった。

35歳で夢を叶えた右腕は、メジャーでも変化を恐れずにワールドシリーズ制覇を目指す。

2024年シーズン、菅野の活躍は圧巻だった。24試合に登板し15勝3敗、防御率1.67の好成績で、巨人の4年ぶりリーグ優勝に貢献。

自身3度目のMVPに最多勝、最高勝率のタイトルに輝いた。4勝8敗と自己ワーストの成績だった前年から、見事な復活を果たした。

「菅野はもう終わった」。そんな声も囁かれた中での復活の鍵は、「変化」だった。積み上げてきたものに執着せず、恐れずに変わり続けたからこそ菅野の今がある。

これまでも好成績を残した翌シーズンにチェンジアップ、高速シンカーなどの新球取得、さらには幾度となくフォーム改造に取り組んできた。

「毎年、変化というか、そういうものを恐れずに自分はやっていきたいと思っている」と言う。

ただ2023年は「変化」をしない訳にはいかないほど追い込まれていた。ブルペンで投げても130キロちょっとしか球速が出ない。菅野にとっては大きな屈辱だった。

「これはいよいよやばいな、って」。このタイミングで出会った人物が、菅野を沼から救い出すことになる。

久保康生巡回投手コーチ(66)。かつて岩隈久志や藤川球児を育てた名伯楽。投球フォームを根本から見直す指導法は、「魔改造」とも呼ばれる。

久保コーチは2023年に巨人入りすると、接し方に迷いながらも菅野へのアプローチを続けた。

「彼にはずいぶん失礼なことを言ったんですよ。"もう腹いっぱいなんじゃないの?お金も名声も野球も十分なんじゃないの?ってバンと言ったんですよ。そしたら彼は"いえいえ全然満足してないっす。これからですよ"って、マジな対戦があってね」

久保コーチは当時を思い出してニヤリと笑うと、続けた。

「よし、じゃあやろう。おれも行くぞ。本気になるぞ、って。喧嘩上等やないか、みたいなところからスイッチが入った」

これまで己の力で変化してきた菅野が、他者の意見を取り入れる新たな挑戦でもある。ここから二人三脚での「魔改造」がスタートするのだが、どんな「変化」なのか。

それは投げ方ではなく、「立ち方」だった。ポイントは左足。以前はプレートに右足をセットする際、左足をプレートの後ろ側に引いて立っていた。

「魔改造」後は、後ろに引いていた左足をプレートの前に固定した。走者がいる時に行う「セットポジション」に少し似た形となった。

立ち方を変えることで捕手を捉える目線が変わり、動き出しからの一連の動作がスムースになった。立ち方の変化にはもう一つの効果も。

リリースポイントが数センチ高くなったのだ。「力をぶつけるというか、高い所から力を出す。自分の中で、これというものが見つかった」と言う。ここから復活劇が始まった。

「魔改造」を受け入れて1年半が経ち、菅野はあることに気づいた。

「久保さんからいろんなことを教わっている中で、これって昔やってきたことだよな、意識してきたことだよな、っていうのが頭でわかってきて」変化を繰り返してきたことでいつの間にか見失っていた原点。

そこに立ち返ることができた菅野は、まさに無双だった。

原点と言えば、ポスティングでメジャー移籍を目指しながら巨人残留となった20年オフについて、初めてその時の心情を明かした。

菅野はギリギリまで悩み、決断を下したのは締め切り5分前だったという。

「あの一週間は、人生で一番泣いた。普通にソファに座っているだけで涙が出てくるんですよ。交渉とかしていろいろ悩んでいる時に、何でこうなっちゃったのかなとか、でずっと泣いてたんですよね」

ただ菅野には、別の部分で"ある違和感"があった。メジャー行きを応援されていない雰囲気を感じ取っていたのだ。しかし、今回は違う。

「ポスティングの時は日本シリーズまで行きましたけど何か後味悪かったし、応援されてる感じがあまり自分の中にはなくて。今回は応援してもらってるな、って本当に感じましたし、やっぱり違いますね。周りから背中を押してもらってやるということは、更なる頑張る原動力になる、と思っています」と言ってうなずいた。

前回、「巨人残留」の連絡を事前にもらった"盟友"坂本は「めちゃくちゃ寂しいですよ。本気で何度もケンカしたし、そういう選手は智之だけ。彼もそうやって言える人間は、多分僕しかいない。唯一無二っす、智之は。アメリカ行く相談も"勇人さんには一番言いづらかった"って。文句言われると思ったんじゃない?」とこの男らしいエールを送った。

昨年12月から、例年通りハワイでの自主トレに汗を流している。「自主トレを1日も無駄にしたくない」と、ボルチモアで契約を結んだあとはそのままハワイに移動して、入団会見はオンラインで行った。

入団会見では「本当にプレーオフ、ワールドシリーズを勝ちたい熱意が伝わってきた。純粋にそこで投げてみたいという気持ちで決断しました」と前を見据えて言い切った。35歳のオールドルーキーは今、ようやくつかんだ夢舞台の開幕が待ち遠しくて仕方がない。


テレ東リアライブ編集部


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