「毒見役」まで!? 元サッカー日本代表トレーナー前田弘が語る北中米W杯で直面する壁と勝利へのカギ

サッカー

2025.8.2


【動画】FOOT×BRAIN+ #725 裏方のプロから学ぶ北中米W杯で勝つためのカギ!|https://youtu.be/zp4FFjiAC0U

これまで「日本サッカーが強くなるためにできることのすべて」をコンセプトに2011年4月に始まった『FOOT×BRAIN』。

番組開始から15年目を迎え、2025年4月に『FOOT×BRAIN+』として新たなコンセプトで生まれ変わった。

サッカー日本代表が世界の舞台で輝くとき、カメラに映らない場所で奮闘する"裏方"がいる。2010年南アフリカワールドカップから2022年カタール大会まで、4大会連続で日本代表と共に戦った元日本代表アスレティックトレーナーの前田弘だ。2026年の北中米ワールドカップ開催まで残り1年を切った今、代表チームが直面する新たな壁に迫る。

長距離移動と過酷な環境 ― 北中米W杯の試練

北中米ワールドカップでは、全12グループが3つの地域に分散され、その地域内のスタジアムで試合を行う。しかし、最長移動距離は約2200kmにも及び、4時間以上の長旅となる可能性がある。これだけでも選手の疲労が蓄積し、パフォーマンスの低下を招きかねない。

「ワールドカップでは非常に移動距離が長いというところもあります」と前田。「前回のカタール大会はホテルが決まっていて、そこから30分以内で移動して試合をしていった。非常に恵まれた環境でした。ブラジルの時はそれこそ、イトゥというところから空港まで確か3、40分ぐらいあった。そこから飛行機に乗って2、3時間。そういう環境は国によって変わってきますし、移動の時にいかに負担をかけないかというのも一つのポイントです」

FB#725_hon_YouTube用.mp4.10_03_15_20.静止画001.jpg

「毒見役」まで務める!?衛生管理の最前線

海外遠征で意外な困難となるのが食事だ。現地の水や食べ物に含まれる菌に日本人の体が対応できず、体調を崩す選手も少なくない。

「シェフは衛生環境をしっかりと管理するという意味でも非常に苦労されています。水道水で野菜は洗わないですね」と前田は説明する。「昔だと我々スタッフが生野菜を最初に食べて、2、3日何でもなかったら選手たちに食べさせる。非常に我々も危険な毒見役ですよね」

その言葉に、スタジオからは驚きの声が上がった。

FB#725_hon_YouTube用.mp4.10_08_09_05.静止画002.jpg

時差と睡眠 ― パフォーマンスを左右する鍵

来年の北中米ワールドカップは日本との時差が13時間以上にも及ぶ。時差ボケや睡眠不足は選手のパフォーマンスを大きく左右する。

「私が4大会帯同した時には、向こうの時間に合わせて、飛行機の中では寝かせないとか。向こうが夜だったら飛行機の中では黒いサングラスをかけて寝かせるとか、そういう工夫もしていました」と前田。

レアル・マドリードの睡眠コンサルタント、ユギノビッチは「7時間未満の睡眠や質の悪い睡眠は、集中力や論理的思考力、意思決定能力を低下させる。これはピッチ上でコンマ秒が重要な場面、例えば誰にパスを出すか、シュートするかしないかといった判断に大きく影響する」と指摘する。

「興奮して眠れないという選手はほとんどです」と前田。睡眠環境の整備も重要な仕事だ。「枕やマットレスを持っていく選手もいます。マットレスをベッドに敷かずに部屋の床に引いて寝ている選手もいますよ」

FB#725_hon_YouTube用.mp4.10_11_52_03.静止画003.jpg

極限の暑さを制する体温管理術

北中米ワールドカップの開催地の一つ、メキシコシティは標高2000mを超える高地で湿度が高く、体温上昇の恐れがある。

「高いところ、メキシコなんかそうです。南アフリカの時は高地巡行、スイスでやったんですね。やっぱり慣れる前は相当時間がかかる。鼻をかむと血が混じっていたり。普通に寝ていると、上に誰かが乗っかっているような圧迫感がありました」

レアル・マドリードのメディカルアドバイザー、ミヒッチは「ハーフタイムの間に選手の体温を1~2℃下げられるかが鍵になる」と強調する。

前田も同意見だ。「ハーフタイムでは水分補給をしっかりさせる、エネルギー補給をさせる。ロッカールームで一度水に入る選手もいます。気持ちを落ち着かせるというのもありますし、体がほてっていますからね」

驚きの冷却法として、クリスティアーノ・ロナウドがマイナス190℃の液体窒素ガスを充満させた7600万円の冷凍カプセルを愛用していることも紹介された。「クライオセラピーといって、マイナス130℃くらいのその中に3分間だけ入るんです」と前田は説明する。「非常に効果があります。まあ、僕は3分は我慢できなかったですよね」

FB#725_hon_YouTube用.mp4.10_14_34_09.静止画005.jpg

視察から始まる勝利への準備

日本代表は9月、ワールドカップ開催国のアメリカとメキシコで親善試合を予定している。そこで具体的な移動のイメージや候補となるキャンプ地の情報収集も行うという。

「開催地が決まれば、今担当しているトレーナーが視察に行って、水回りとか、お風呂がついているか、浴槽があるか。代表チームが泊まる宿としては、バスルームがないとリラックスできない。あとはプールがあるかどうかとか、今ではサウナがあるかどうかというところも見てくるんじゃないかと。水風呂があるかどうかというところも、ホテルを選ぶ環境としては重要です」

FB#725_hon_YouTube用.mp4.10_16_39_19.静止画006.jpg

試合中のサポートと「聞き役」の重要性

トレーナーの仕事は試合中も続く。「得点が入った時、ドクターと私なんかは、怪我をした選手をずっと見ていて。そういう時間帯は非常に有効に使っています」

延長戦前のわずかな時間に行うマッサージも重要な役割を担う。「足が張っている、足が突っ張っている、つったりというのに対して、少しマッサージをして緩めてあげる。選手から見れば、やっぱりこれをやることによって良くなったという気持ちにさせるところもあるのかなと思います」

試合後、トレーナーは選手の心のケアも担当する。「ケアが終わった時間を見計らってトレーナールームに来て、そこでバーっと言いたいことを言っていく。2時間くらい。でも、その話に対して賛同はしないです。ただ聞くだけ。『聞いて、聞いて、聞く』という感じです」

「心身ともに選手の状態の情報を一番持っているのは、やっぱり前田さんみたいな方たちなんですよ」と元日本代表の戸田和幸も同意する。

FB#725_hon_YouTube用.mp4.10_20_59_26.静止画012.jpg

日本代表 優勝への道筋

「やっぱりチームが一つになるということは大前提です」と前田は断言する。「あと我々メディカルとして、リカバリー、しっかりと疲労回復させるかどうか。そこが重要なポイントになるんじゃないかなと思います。前回のカタール大会の時は疲労が残った状態で試合に臨む選手が多くいました。そこをいかに0にするかというのが我々メディカルの仕事ではないのかなと思います」

世界の頂点を目指すために、カメラに映らない場所で日々奮闘する"裏方"の存在。彼らの努力と工夫が、選手たちの「100を101に」引き上げ、日本代表の勝利を支えている。2026年、北中米の地で日本代表が世界の頂点に立つ日を夢見て、彼らの挑戦は今日も続いている。

FB#725_hon_YouTube用.mp4.10_23_23_04.静止画009.jpg


【動画】「私は世界でNo.1のパサーだと思っている」ジーコが語る日本サッカー30年の軌跡と鹿島に植えた「献身・誠実・尊重」の精神

W杯優勝公言「あともう1つ超えれば決勝まで行ける。優勝できる」森保監督が語った日本代表の未来図

【動画】平山相太と柿谷曜一朗が激論!高校かクラブユースか大学か?未来を決める選択