【安田記念】約束の地にたどり着いた幸運の6勝目

その他

2026.6.9

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武豊騎手騎乗のシックスペンスがGI初戴冠(c)SANKEI

シックスペンスにとって、GIレースは「いつか勝てるもの」だった。

デビューから無傷の3連勝でスプリングSを制し、関東の名伯楽として名を馳せた国枝栄調教師が調教師生活の最後となるダービーへ出走したのは彼。

レースは3番人気に支持されたが、直線で伸びずに9着に敗れてしまい残念ながら師をダービートレーナーすることはできなかったが、その高いポテンシャルは誰もが知るところ。だから「いつかはGIを勝てる」とそう信じられていた。

ところが、シックスペンスは4歳の春から勝ち星に見放される。

中山記念を制して挑んだ大阪杯は1番人気に支持されるも、直線で伸びずに7着。その後は4戦続けてGIに挑むも、馬券に絡んだのは南部杯の2着のみ。その南部杯以降はダートへ矛先を向けるなど、文字通り迷走。

そして5歳になった今年、フェブラリーSを最後にシックスペンスは引退する国枝栄調教師の下を離れ、田中博康厩舎へと移った。

転厩緒戦として挑んだマイラーズCは後方から懸命に追い込んだが前に付けた馬同士で決まってしまい、7着。

気が付けば、昨年3月に行われた中山記念を最後に勝ち星から見放され、「いつかは勝てる」と信じられていたGIもいつしか手が届きづらくなり、遠い位置にまで離れてしまった。

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こんなはずじゃない。本来の力を出し切ればもっと走れる――

陣営はそう思っていたことだろう。気持ちが沈んでいたシックスペンスに対し、田中博康調教師は変革を求めた。

行きっぷりが悪さをカバーするために初めてブリンカーを装着させ、レース前日には異例とも言える追い切りレベルの調教を課した。

どれもこれもすべてはシックスペンスの闘志に火をつけるため。遠ざかっていた勝ち星、「いつかはGIを勝てる」という声を現実のものにするために。

主役不在のレースを象徴するかのように、どこかスッキリとしない曇り空の中で迎えた今年の安田記念。

17頭の出走馬の中でシックスペンスは単勝21.6倍の8番人気。生涯最低の人気に留まってしまった。

レースセンスの高さを感じさせたスプリングSまでの3連勝も、好位から押し切った毎日王冠の走りも、そして中山記念の差し脚もファンにとってはもはや昔の話。

そこからの6連敗の印象が色濃く残り、「ピークを過ぎた馬」という印象を与えたのかもしれない。

だが、ノーマークになったことが却ってよかったのかもしれない。この日初騎乗となった武豊のレース後のコメントを聞くと、そんな風にも思えてくる。

迎えたレース。どの馬も出遅れることなく17頭横並びでスタートすると、京王杯SCを逃げ切ったワールズエンドがハナを奪いに行くのに対し、武豊とシックスペンスは付いていったのだ。

「ハナを切ってもいいくらいに思っていた」と、武豊はレース後に語ったがその言葉通りに2番手をキープ。

そこにセイウンハーデス、パンジャタワー、そしてステレンボッシュらの実績馬が並ぶようにして先団を形成。そのすぐ後ろに1番人気のガイアフォースが付け、さらに後方から2番手という位置にトロヴァトーレがいた。

前半の3ハロンは34秒5というよどみない流れで逃げたワールズエンド。

それを追いかける形で2番手にいたのがシックスペンス。同じキャロットファームの所有馬2頭が先頭を争うような形になり、最後の直線を迎えた。

ゴールまで残り500mを優に超える東京の長い直線。先頭にいたのはワールズエンドと津村明秀だった。

その逃げには迷いはなく、外からシックスペンスと武豊、そしてセイウンハーデスと幸英明が追いかけてきても、捕まる様子は見られない。

むしろそこから再びエンジンを添加させているかのような二枚腰で、ワールズエンドは逃げている。

ゴールまで残り200m。前を行く3頭を懸命に追いかけてきたのが横山武史とガイアフォースだった。

今年で4度目となる安田記念への挑戦。ハイレベルなメンバーの中で揉まれ続けて、過去3回は4着、4着、そして2着。

年齢的にもこれが最後のチャンスとばかりにその走りにはどこか悲壮感さえ漂ってきたが、前を行く3頭の脚は止まらずジリジリとしか伸びてこられない。

栄光のゴールまで残り10m。内を行くワールズエンド、外から迫るセイウンハーデスに挟まれる形となったシックスペンスが、武豊の左鞭に応え馬体をワールズエンドに並べ、一歩だけ前に出た。

それと同時に外からガイアフォースが懸命に全身を伸ばしてきた。

まさに3頭が横並びになったところがゴールだったが......真ん中を突いたシックスペンスがほんのわずか、2頭よりもクビ差だけ先着してゴール板を駆け抜けていた。

待ちに待った6勝目は、「いつか勝てる」と称されていたGI。

混戦の中を切り裂いてシックスペンスが約束の地であるGIホースの地位を得て、春のマイル王に名乗りを上げた。

かつての走りを取り戻すために課した変革は、武豊という最後のスパイスによって見事に成就。「いい仕事ができた」と、レジェンドも満足いく騎乗を見せたようだった。

マイル界の絶対王者、ジャンタルマンタルとはくしくも同い年にあたるシックスペンス。この2頭の激突が見られるのは果たしていつの日だろうか。5歳同士のマイル王の頂上決戦が早くも待ち遠しい。


■文/福嶌弘

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