【Jリーグ】選手の安全確保へ脳震盪による追加交代の導入 VARも本格導入

写真:アフロ
Jリーグの開幕を2月26日控えて20日に行われたゼロックススーパーカップで、昨季のリーグ王者の川崎フロンターレと天皇杯優勝でリーグ2位のG大阪による好ゲームが展開されたが、その一方で、脳震盪の疑いがある場合の選手交代やVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)など今季導入されるレギュレーションの実例が示される機会となった。
コロナ禍の影響で昨季導入された前後半の半ばでの飲水タイムはチームのプレー修正や確認に小さくない役割を果たしたが、今季も両チームの合意で不要とする場合以外は原則として採用される。5人交代ルールも継続され、昨季は中断明け以降の導入が見送られたVARも今季は本格的に導入となり、前半32分の川崎の2点目の場面では、MF三苫選手のオフサイドの有無がVARによって確認された。
今季のレギュレーションの中でも最も注目したいのが、脳震盪の疑いによる選手交代の導入だ。影響が大きい障害であるだけに、選手の安全確保へ重要な一歩となる。
20日の試合では、途中出場していた川崎のMF塚川健人選手が試合終盤に味方との接触プレーで頭部を打撲。その後、プレーを続けていた同選手の異変に気付いたチームメイトがレフェリーに進言し、川崎はすでに5つの交代枠を使用済みだったが、脳震盪のケースとして6人目の交代でDF車屋紳太郎選手が急遽フィールドに立った。
近年、競技中の脳震盪への対応はスポーツ界で広く問題視され、特にコンタクトの激しいラグビーではすでに、脳震盪の疑いがある場合にはHIA(頭部損傷アセスメント)として当該選手の10分間の一時退場(交代)が義務付けられているが、このルールの適用以前は頭部打撲を受けながらプレーを続行していた時代が長かった。
長年、問題視されてきた脳震盪への対応
その影響は深刻で、自分が出場したラグビーワールドカップで優勝したことや自分のパートナーの名前や仕事の工程を忘れるなど、記憶障害をはじめとする様々な症状で日常生活に支障が出るケースが複数報告されている。今年1月には、このような障害に苦しんでいる元イングランド代表選手らが当該競技団体を相手に訴訟を起こしたと報じられたばかりだ。
サッカーでもヘディングなどの競り合いでの頭部への損傷は起こる。2019年のアジアカップの試合では、UAE(アラブ首長国連邦)の選手が接触プレーで頭部を強打。チームが交代枠を使い切っていたことで無理にプレーを続行しようとして倒れ、救急車で運ばれる騒ぎとなり、試合が暫く中断するという事件があった。
国際プロサッカー選手会では早くから競技中の脳震盪の危険性を問題視しており、FIFAや競技ルールを司るIFAB(国際サッカー評議会)に対応を求めてきていた。
これまでにもピッチ上でドクターによるチェックは行われていたが、短時間で適格な判断をしなくてはならないドクターの負担や、一度下がった選手がピッチに戻ることでのダメージなどが指摘されていた。そこでIFABは今回、選手の安全性をより徹底すべく、「脳震盪による再出場を伴わない追加交代の試行」を決定したのだ。
これを受けて日本でも今季から導入することになったのだが、脳震盪による交代では一度退いた選手でも再び交代出場が可能で、通常の交代とは別に扱われる。ただし、チームが通常の交代に合わせて脳震盪による交代をした場合には、通常の交代としてカウントされる。Jリーグのエリートリーグやユースリーグなど育成年代の大会でも適用される。
なお、IFABの試行期間は今年1月からで、先日2月上旬に行われたFIFAクラブワールドカップでも導入され、試行ルールを導入する各国には実施結果をIFABおよびFIFAへ提出することが求められている。
VARも本格導入
一方、VARもJリーグでは今季から本格導入となる。本来ならば昨季からの導入されるところが、開幕節の実施後に感染拡大で中断となり、再開後の日程が週に2回の試合が続くハードスケジュールとなったことで、審判員の確保などが問題になり、見送られていた。
20日の試合で適用された場面では、VARでプレーの確認中、場内の大型スクリーンに確認中である旨が文字で示されたが、映像はなかった。
Jリーグの原博実副理事長は、ゼロックス杯はレフェリングを含めて「今季のスタンダードを示す、お手本のような試合になった」と振り返り、VARの適用場面については、規定によりVARでチェック中の映像の公開はできないものの、問題場面の別の映像を会場のスクリーンに出す案も出たそうで、ファンが状況を理解できるような対応が検討されていること話した。
いよいよ始まるJリーグ。新ルールの適用で、選手にとってより良い環境で行われる。好ゲームの展開を楽しみにしたい。
取材・文:木ノ原句望