石井一久監督に秘められた”名将”への可能性

野球

2021.4.15

    石井一久監督 写真提供:楽天野球団.jpg
    3/26(金)石井一久監督初勝利 写真提供:楽天野球団


    プロ野球開幕から2週間、全てのチームの対戦が一巡した。

    田中将大投手の電撃復帰で2度目の日本一に期待のかかる楽天は、首位発進(※11日終了時)と好スタート。 今季からGM兼監督を務める石井一久監督の船出は好調といえる。

    今年から楽天イーグルスの担当となりまだまだ経験の浅い新米記者ではあるが、私はこの二週間を経て、チームを率いる石井監督に期待を感じずにはいられない。

    石井一久GM兼監督とは

    1991年のドラフト会議、ヤクルトスワローズドラフト1位で入団。"名将"野村克也氏のもとでプロ野球選手としてのキャリアを始めた。

    試合前にテレビゲームをしていたという伝説を持つマイペースな一面ものぞかせるが、日米通算182勝とメジャーでも活躍し、楽天に復帰した現在の田中将大を上回る実績を上げている。

    その後楽天イーグルスのGMとして、岸孝之、涌井秀章、鈴木大地といった大物選手獲得を成功させるなど、フィールド外で新たな手腕を発揮してきた。そして去年の秋、GM兼務で監督に就任。「常勝チームとして骨太のチーム」という目標を掲げ大きな役割を担うことになった。

    失敗を責めない

    3月28日(日)、期待のドラフト1位ルーキー早川隆久(早稲田大卒)のプロ初登板。試合は好投を続ける早川に4回、打線が1点を先制し援護、なおも1死満塁のチャンスで太田光が打席に。このとき私は石井監督の意外な一面を見ることになる。

    追加点がどうしても欲しい場面、その初球、「スクイズ」で三塁線ギリギリに転がりファウル。2球目は一転してヒッティングも空振り。それでもその後粘って6球目、変化球をセンター前へしぶとく運び貴重な2点タイムリーとなった。

    スクイズを失敗もタイムリーを放った太田光を石井監督はどう見ていたのか。

    「あのスクイズは意味のある失敗」

    満塁の場面でのスクイズは本塁フォースアウトの可能性があり、そのためには塁線をしっかり狙う必要があった。内容だけを見れば"スクイズ失敗"、それでも失敗の中身を冷静に分析し、バントのコースを狙った太田光を評価していた。

    厳しくもチャンスを与える姿勢

    4月1日(木)、敵地ロッテのホームに乗り込み、3タテも期待された一戦を2年目の瀧中瞭太に託した。しかし、持ち味である打ち取る投球は見せられず、初回から四球も絡み2回途中10失点でKO。涌井秀章に田中将大、則本昂大に岸孝之やルーキー早川隆久・・・楽天の先発陣は決して薄くない。その最後の枠を勝ち取ったからこそ期待も大きかった。

    試合後、石井監督は「後ろで守っている野手、ブルペンで待機している投手陣にも失礼」と厳しかった。それでも二軍行きではなくもう一度チャンスを与えた。

    蘇らせた監督の言葉

    翌週、4月8日(木)西武との3回戦。瀧中瞭太は試合前からリベンジに燃えているように見えた。結果は7回無失点、被安打はわずか1本と、1週間前とはまるで別人。

    瀧中投手の顔も満足感にあふれていた。「前回と同じ失敗はできない『これが最後』と思ってマウンドへあがって、思いっきり腕を振った。打者に向かっていけたことが一番の収穫」 試合後にはそう振り返った。

    実は一週間前に10失点KOした後、石井監督と瀧中瞭太は練習中2人でこんな話をしている。

    「打者からしたら一番打ちにくいのは、『打てるものなら打ってみろ!』という気の入ったボール」

    技術うんぬんよりも気持ちの面を指摘した。例えプロ選手といえども、わずか1週間で簡単に立ち直る世界ではないと思う。それでも指揮官の言葉は選手を蘇らせただけでなく、選手は期待以上の結果で返すことができた。

    骨太チームへの信念

    監督就任会見で放った「骨太チームを作る」という言葉。その信念を感じたのが4月10日(土)、王者ソフトバンクとの試合だ。

    初戦を引き分けたチームはこの日序盤に背負った7点ビハインドをはねのけ、6回終了時には1点をリードした。本来ならばここで牧田和久、酒居知史といった実績ある勝ちパターンのリリーフ陣で守護神・松井裕樹へというところ。

    しかしここで7回を託したのは津留﨑大成、渡邊佑樹と若い投手だった。

    「彼らが飛躍することがチームの底力、強いリリーフ陣の構築になってくる。今後を見据えてというのもあります」指揮官は試合後にこう振り返った。

    結果的に渡邊佑樹がソフトバンクの中村晃に同点タイムリーを浴び、引き分けに終わるが、この場面で託された選手たちには大きな経験値になる。その采配には必ず確固たる裏付けがある。

    「(中継ぎが)決まったパターンしかないのはベストではない」と骨太チームを見据えた選択をしていた。

    8年ぶりの頂点へ期待

    思い返すと2月の春季キャンプから「今年は優勝しないといけない」。石井監督はそんな思いをカメラの前で語ってきた。

    そして就任会見で掲げた『骨太チーム』という目標。

    "失敗を冷静に分析"、"言葉で選手を奮い立たせる"、"チームの底上げ"

    このわずか2週間でそんな監督の振る舞いと信念を感じた私は、とにかく今シーズンこの先がわくわくする。 私は石井監督がプロ野球のキャリアを始めた1992年生まれ。全盛期淡々と投げて勝利を挙げる姿しか知らなかったが、監督としての姿に早くもファンになっている。そしてそんな気持ちにさせる指揮官に、"名将"の期待を感じずにはいられない。

    (テレビ東京 東北楽天ゴールデンイーグルス 担当記者)