【天皇賞・春 みどころ】絶対王者不在の一戦で、真のステイヤーは現れるか

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2021.5.1


カレンブーケドール 写真:山根英一/アフロ

今年の天皇賞(春)に本物のステイヤーは現れるだろうか。

 国内の平地GIでは最長、世界でも3番目に距離の長い3200mでの一戦。当然求められる資質は普段のレースとは大きく異なり、スピードよりも何よりもスタミナを求められる。それだけにこの舞台に変わったことで大きく飛躍する馬もいる。

国内で行われるもう1つの3000m以上のGIレース、菊花賞との関連性が深いのもよくわかる。実際、今年の天皇賞(春)にエントリーしてきた17頭のうち、菊花賞で好走した実績を持つ4頭はいずれも上位人気に支持されている。

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 その中でも最も勝利に近いとされているのは、ディープボンドだ。

 デビューから一貫して2000m以上のレースにしか出ていないという長距離砲で、昨年の牡馬クラシック三冠レースにはすべてエントリーしたが、結果は皐月賞10着、ダービー5着、そして菊花賞は4着といずれも完敗。

京都新聞杯を制するなど、この馬自身の実力もなかなかのものだったが、同馬主、そして同じ青鹿毛のコントレイルの影武者のような扱いしかされず、いつしか「コントレイルじゃない方の馬」という呼ばれ方をするようになってしまった。

「コントレイルじゃない方の前田晋二オーナーの所有馬」、ディープボンドがその座から脱却したのは2021年に入ってから。年明け緒戦の中山金杯こそ苦手の小回りコースでのレースが響いて14着と大敗したが、天皇賞(春)に向けての大切なプレップレース、阪神大賞典で魅せてくれた。

 前日深夜から降った雨の影響で時計のかかる馬場状態となったこの日の阪神競馬場。ただでさえスタミナが要求されるコースレイアウトに力の要る馬場がプラスされたことで、単に3000mを走る以上のスタミナが求められた。

その中でディープボンドは4番手から流れに乗り、勝負所で前との差を詰めて抜け出した。3000mの距離にも道悪馬場にもへこたれず、堂々と伸びてくる姿にはどこか武骨さを感じさせ、涼しい顔をしてクラシック戦線を走り切ったコントレイルとは似ても似つかぬものだった。

 GI挑戦4度目にして、初めてコントレイルがいないGIレースに臨むディープボンド。伝統の長丁場で無尽蔵のスタミナを見せることはできるだろうか。

「コントレイルに最も近づいた男」アリストテレスも天皇盾を虎視眈々と狙っている。

 デビュー当時は詰めの甘さが災いし、春のクラシックには間に合わなかったが、夏の条件戦を連勝して臨んだ菊花賞では道中、コントレイルをピタリとマークして追走。コントレイルと同じタイミングで仕掛けて、直線ではビッシリと叩き合う展開に。結果的にコントレイルにクビ差届かずの2着だったが、無敗の三冠馬を最も追い詰めた馬として、多くのファンの記憶に残った。

「欲しいのは天皇盾」と言わんばかりに、年明けからアリストテレスは天皇賞(春)を意識したローテーションを敷いてきた。1月のAJCCでは不良馬場をものともせずに抜け出して念願の重賞制覇を達成。そして天皇賞(春)制覇のために再び3000mのレースで慣らしておくため、阪神大賞典へと出走した。

「コントレイルに最も近づいた男」という称号はファンにとってもインパクトがあったのか、それともAJCCの勝ちっぷりに本格化の兆しを見たのか、このレースでアリストテレスは単勝1.3倍という圧倒的な支持を得た。

レースがスタートしてからも中団から流れに乗り、先に動いていったディープボンドをマークするという菊花賞を彷彿とさせるレース運び。普通にいけば、このまま突き放すと誰もが想像したことだろう。

しかし、最後の直線でアリストテレスは伸びなかった。それどころか後ろに控えていた馬たちにも差されて結果は7着に大敗。2戦続けての道悪馬場でのレースだったために見えない疲れが溜まっていたのが敗因とされたが、純然たるスタミナ勝負に大きな不安を残したのも確か。

ましてや今年の天皇賞(春)は本来の開催地である京都競馬場ではなく、直線に坂があり、より力の要る阪神競馬場でのもの。条件は限りなく厳しく見えるが、一方でここ一番の勝負強さはメンバー随一。2度目となるGI挑戦で狙っていた天皇盾をつかみ取るか。

 コントレイル不在の一戦に活路を見いだす者がいる一方、今年の天皇賞(春)には歴史に挑む馬もいる。

「長距離戦は俺たちの聖域」とばかりに、天皇賞(春)で好成績を収めるのは牡馬ばかり。牝馬はグレード制が導入された1984年以降、わずか20頭のみで掲示板に入った馬はゼロという有様。そもそも牝馬が最後に天皇賞(春)を勝ったのは1953年のレダまでさかのぼるという。

 天皇賞に牝馬は用なし......かつてはそうした風潮があったが、近年は違う。というのも秋の東京で行われている天皇賞(秋)では近年、ウオッカやブエナビスタ、アーモンドアイらが牡馬をねじ伏せて勝利している。

そんな流れが春の仁川でもあっていいはず。東のプレップレースである日経賞でワンツーフィニッシュを決めたウインマリリン、カレンブーケドール、そして2年連続でエントリーしてきたメロディーレーンには68年ぶりの快挙が掛かっている。

 27年ぶりに仁川のターフで行われる今年の天皇賞(春)。いつもと違う舞台で行われるからこそ、特別な一戦になることを期待したい。


■文/秋山玲路