浦和レッズが天皇杯決勝へ、今季限りで退団の宇賀神が先制ゴール「ピッチに立って良かった」
2021.12.13
第101回 天皇杯 準決勝 宇賀神の先制ゴールが決まる 写真:アフロスポーツ
浦和レッズが12月12日に埼玉スタジアムで行われた天皇杯準決勝でセレッソ大阪と対戦し、退団が決まっているDF宇賀神友弥選手の先制点などで2-0の勝利で3年ぶりの決勝進出を決定。
セレッソ大久保嘉人選手は有終の美とはならなかったが、クラブを去る選手の思いが滲む試合となった。
なお、浦和は目標とするAFCチャンピオンズリーグ(ACL)出場権獲得をかけて、12月19日(日)の国立競技場での決勝では、前回王者の川崎フロンターレに延長PK戦の末に競り勝った大分トリニータと対戦する。
カップ戦の文化
「浦和にはカップ戦の文化がある」 勝てば決勝進出が決まるセレッソ大阪との一戦を前に、浦和のリカルド・ロドリゲス監督は2018年大会の優勝や今季のルヴァンカップ4進出を引き合いに出してそう語っていた。
だが、高い集中力で攻撃を仕掛けるものの、セレッソの堅守を前になかなか決定機を作れない。そのジリジリとした状況を打ち破り、チームを勝利へ推し進めた立役者は左サイドバックで先発したDF宇賀神友弥選手。今季限りで契約満了による退団が決まっている埼玉出身の33歳だった。
前半29分、右サイドで仕掛けたMF関根貴大選手のクロスを逆サイドでMF明本孝浩選手が受けて後方へ戻すと、ペナルティエリアまで顔を出した宇賀神選手が受けて、ノーマークで右足を振った。
「打った瞬間に軌道が見えていた」という一撃はゴールネットに突き刺さった。
6月23日の柏レイソルとのリーグ戦以来となる宇賀神選手の今季2得点目は、ベテラン左サイドバックが過去にも要所要所の試合で見せてきた、トレードマークともいえる抑え気味のミドルレンジからのシュートを彷彿とさせた。
この先制点で楽になった浦和は、主導権を握り、ハーフタイム前のセレッソMF清武弘嗣選手とMF為田大貴選手のシュートもGK西川周作選手が好セーブでかわして、前半を1-0で終了。
後半もDFアレクサンダー・ショルツ選手を中心にセレッソのクロスをはね除け、交代選手の投入やポジションチェンジなどで試合を優位に進めた。
試合終了直前には途中出場のMF小泉佳穂選手が巧みなドリブルで相手の守備を切り崩してペナルティエリアに切り込み、右足を振って追加点を奪い、浦和が2-0で勝って19日の決勝へ駒を進めた。
第101回 天皇杯 準決勝 追加点を決めた小泉佳穂 写真:アフロスポーツ
宇賀神が過ごした浦和での13シーズン
浦和のリカルド・ロドリゲス監督は宇賀神選手の先制点を「貴重な1点」と話し、「こういう試合では守備を固くできなければ難しくなる。力強い守備をしてくれた」と明本選手とともに左サイドで見せたベテランと若手のハードワークを評価した。
今季から浦和を率いるスペイン人指揮官は、「先発も交代出場もうまくつなぎながら展開して途中から入った選手もやるべき事、違いを作れていた。とてもよかったという試合ではないが、全体的に我々がやるべきことはしっかりできた」と振り返った。
宇賀神選手はこの試合が今季公式戦32戦目で、先発は9月5日のルヴァンカップ準々決勝第2戦の川崎フロンターレ戦(3-3)以来で19戦目。
12月4日のリーグ最終節の名古屋グランパス戦で「自分のピッチ上での役割は終わった」と感じていたため、今回の準決勝へ向けた練習で先発が分かったときには戸惑いもあった。試合経験が選手の成長につながることを考えて、チームを去る自分ではなく、チームに残る若手が出るべきではないかと考えたのだという。
だが、「最後に浦和レッズの人間といてサポーターに自分を見てもらい、覚えておいてもらうチャンス」と切り替えた。
そんな迷いなど全く感じさせないプレーとチームに勝利を呼び込むゴールで貢献した宇賀治選手は試合後、言い方は悪いがと前置きした上で、「契約満了が間違っていたと証明してやるという強い気持ちでピッチに立った。その気持ちがゴールに乗り移った」と話した。
そこには、浦和下部組織育ちで流通経済大在学に特別指定選手になり、翌2010年3月にプロデビューを飾って以来13シーズンを過ごしてきた浦和への愛着と自負がうかがえた。
前半イエローカードをもらっていた宇賀神選手は61分までプレー。2010年のJリーグデビューから慣れ親しんだホームの埼玉ウスタジアムでの最後の試合を交代で退く時には、コロナ禍の入場制限が撤廃で集まった3万人を超える観客から割れんばかりの大きな拍手で送り出され、「ピッチに立って良かった」と笑顔で振り返った。
前回2018年の天皇杯優勝も、その前年のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)でのアジア制覇にも貢献してきた宇賀神選手は、「今日は最高の雰囲気で勝つことができたが、決勝で勝たなければ何も残らないし意味がない」と指摘。
「決勝で優勝カップを掲げて、『次は頼んだぞ』と最高の形で言えるようにしたい」と話した。
8度目の優勝へ、決勝の相手は大分
天皇杯優勝でAFCチャンピオンズリーグ(ACL)出場権獲得を目指す浦和の決勝進出は、前身の三菱重工及び三菱自動車時代を含めて通算12回目。優勝は2018年大会を含めて7回。8回目のタイトル獲得へ、決勝で対戦するのは大分トリニータだ。
大分は12日のアウェイで行われた準決勝で、連覇を狙った川崎に延長1-1の末にPK戦5-4で競り勝って初の決勝進出を決めた。
後半終盤に途中出場していたFW小林悠選手が延長後半となる113分に均衡を破ったが、延長終了直前に大分のDFエンリケ・トレヴィザン選手が同点ゴールを決めてPK戦にもつれこみ、元川崎のGK高木駿選手がPK2本を止める活躍を見せた。
今季20チーム中18位でJ2降格が決まっている大分が、攻撃ではシュート8本にとどまりながらも川崎の28本という攻撃を堅守で凌いで掴んだ番狂わせを演じた。
大分と浦和の今季リーグ戦の対戦は1勝1敗。浦和はホームでは3-2で勝利したが、アウェイでは0-1で敗れた。大分は準決勝での金星で勢いを得た可能性もある。
「ここまで進めて嬉しい。あと1つ勝ってACLへ出場権を勝ち獲りたい」と語る浦和のロドリゲス監督は大分について「いつも苦戦する相手。意気込みを持って戦う必要があるが、過信することなく戦わなければならない」と話した。
大分出身の浦和GK西川周作選手は、「気持ちの昂る相手と決勝の舞台で対戦するのはなかなかないことなので、非常に楽しみ」と話し、準決勝での好セーブを含めて、天皇杯は5試合完封の守護神は「最後もゼロで終わりたい。しっかり勝って終わることをイメージしたい」と語った。
取材・文:木ノ原句望