【ホープフルS みどころ】完成度の高さか、ソツのなさか、破天荒さか... 世代を納める王者に必要なものとは?

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2021.12.28

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    コマンドライン 写真:東京スポーツ/アフロ

     12月26日の有馬記念をエフフォーリアが制し、2021年の競馬界は幕を閉じたように思えた。

     しかし、2021年の競馬はまだ終わっていない。いや、むしろこのレースを見ないと2022年の競馬界は語れないだろう。来年のクラシックを背負って立つであろう馬たちが揃ったホープフルSがこの日、行われるのだから。

     ホープフルSはかつて「隠れ2歳最強馬決定戦」と称され、数々の伝説を作ったラジオたんぱ2歳Sを前身としたレースで、2017年よりGIに昇格。

    中山芝2000mという皐月賞と同じ条件で迎えるレースだけにクラシックへの直結具合が格段に向上した。

    例えば、GI昇格後の勝ち馬4頭のうち、2頭が翌春の皐月賞を制覇。そのうちの1頭であるコントレイルは皐月賞のみでなく、ダービー、菊花賞ともに制覇し、父ディープインパクトとともに親子2代の無敗三冠を達成したのは記憶に新しい。

     つまり、有馬記念が2021年の締めくくりならば、ホープフルSは2022年への架け橋となるレース。世代を牽引する新しいスターがここから生まれ、次の競馬界を担う存在として飛躍していく。

     そんな今年のホープフルS、主役となるのはラスト2世代となったディープインパクト産駒の中から現れた素質馬、コマンドラインだろうか。

     アパパネ、アーモンドアイなど牝馬クラシック戦線では再三のように活躍馬を輩出してきた国枝栄厩舎だが、意外にも牡馬クラシックの勝ち鞍はない。

    定年まで残すところあとわずかというところで巡り合った素質馬こそがこのコマンドラインである。

     父は言わずと知れた名馬ディープインパクトなら、母はアメリカのGIホース。そんな超良血馬として誕生した彼はデビュー前から注目を集め、未来のクラシック候補生として大いに騒がれた。

     それだけに6月にデビューした際、コマンドラインには大きな注目が集まった。

    その年最初の新馬戦でデビューした彼の単勝オッズはなんと1.1倍。ややメンバーレベルに恵まれたとはいえ、勝って当たり前と言わんばかりの圧倒的支持を受けての初陣となった。

     普通ならこれで日和ってしまう馬もいるが、彼は違った。スタートから間もなく番手に付けて折り合いを付けていくと、直線に入ってからは外に進路を取ってスパート。

    そこからの伸びはまさに重賞馬のそれと言わんばかりの切れ味で、あっという間に2着馬に3馬身差をつけて楽勝。未来のクラシック候補生としてふさわしいデビュー戦を飾った。

     それから4ヵ月後に迎えたのはサウジアラビアRC。

    久々の実戦で馬体は10キロほど増えていたが、それでも早めに動いて2番手から流れに乗ると、直線では早めに先頭に。そこからステルナティーアらが猛追してくるのを振り切って無傷の2連勝で重賞初制覇。

    レース直後からスッと番手に付けられるレースセンスの高さ、追われた際に見せる切れのある末脚などまさに一流馬のそれを兼ね備えているように映るコマンドライン。果たして2歳王者決定戦を制して、来年の競馬界を担う存在に彼はなれるのだろうか。

     ポテンシャルの高さで評価されたのがキラーアビリティだ。

    コマンドラインと同じ父を持つが、ソツのないレース運びが魅力の優等生キャラのコマンドラインと比べればこちらはさしずめ野生児そのもの。

    それゆえにデビュー戦はレースそのものを分かっていない様子で走り、才能だけで5着に食い込んだ印象だった。

     だからこそ、ハマった時の強さは計り知れない。実際、キラーアビリティは2戦目のみ勝利戦で楽勝。勝ち時計の1分59秒5は2歳のコースレコードだった上、ラスト1ハロンの時計は10秒8と抜群の瞬発力を見せた。

    あのカリカリとした気性面と何かと器用さを求められる中山芝2000mでどう走るかが気になるが、当たった時の"飛距離"が計り知れないだけに、どうしても注目したくなる。

     残り少なくなったディープインパクト産駒にこだわらなくても、今年のホープフルSには素質馬が数多くエントリーしている。その中からピックアップするならアスクワイルドモアだろう。

     北海道の小回りコースで揉まれ育った彼はここまで通算4戦1勝2着3回と勝ち味にこそ遅いが、安定したレースを見せている。

    札幌2歳Sでもジオクリフにこそ屈したが、中団からよく伸びて2着に好走。他の馬にはない小回りコースでの経験の豊富さがなによりの武器になるはずだ。

     そしてアスクワイルドモアは馬だけでなく、人物にも注目したい。というのもこの馬の主戦を務める武豊がこのレースを勝てば史上初の国内GI完全を果たすのである。長らく勝てずにいた朝日杯FSをドウデュースで制して、今や残すはこのホープフルSのみ。

    空前絶後となる大記録達成に向けて、普段は物静かなユタカでも思うところはあるはず。朝日杯FSの勢いのままこのレースを制して、来年のクラシックでどの馬に乗るか迷う往年の武豊の姿がもう一度見てみたい。

     完成度かポテンシャルか、はたまた堅実さか......来年のクラシック戦線を担う2歳GI、ホープフルS。その火ぶたはレース前からすでに落とされているのかもしれない。


    ■文/福嶌弘