J1神戸、ロティーナ新監督の下でチーム建て直しへ

サッカー

2022.4.9

ミゲル・アンヘル・ロティーナ監督 写真:YUTAKA/アフロスポーツ

 J1のヴィッセル神戸は4月8日、ノエビアスタジアム神戸で行われた記者会見でミゲル・アンヘル・ロティーナ新監督の就任を発表。

セレッソ大阪や東京ヴェルディなどで手腕を発揮したスペイン出身指揮官の下でチームを建て直し、来週から始まるAFCチャンピオンズリーグ(ACL)を含めて今シーズンの巻き返しを図る。新体制での初陣は10日のホームでのJ1リーグのセレッソ戦だ。

 シーズン途中の就任で、9戦未勝利でリーグ17に低迷するチームの建て直しを託された。しかも来週からは、クラブがアジア制覇を目指しているACLの戦いも始まる。難しい状況だが、ロティーナ新監督は母国の至宝、元代表MFアンドレス・イニエスタ選手を擁する神戸からのオファーに、迷いはなかったと明かした。

「神戸という偉大なクラブで、クラブが擁している選手を考えると、これはサッカーが自分に与えてくれたプレゼントだと思った」と64歳の新指揮官は明かし、難しい任務にも「確かに大きな挑戦だが、同時にチャンスだと捉えている」と話した。

 ロティーナ監督は、欧州チャンピオンズリーグで16強に導いたセルタをはじめ、ビジャレアルやエスパニョールなどスペインリーグで数多くのクラブで指揮を執り、2017年から東京ヴェルディ、2019年からはセレッソ大阪で指揮を執り、昨季は清水エスパルスを率いた。

守備の構築に定評があるが、セレッソでは攻守にバランスの取れたサッカーを披露した。数字にも表れていて、就任1年目の2019シーズンに34試合で得点39失点はリーグ最少の25で前年の38失点から改善。順位も前年の7位から5位に上昇した。2季目は34試合で失点は37だったが得点が46とアップしてリーグ3位に入り、ACL出場権を獲得した。

 一方、神戸は2019年には天皇杯に優勝して翌2020年には初めて出場したACLで4強に入り、昨季はクラブ史上最高のJ1リーグ3位に入った。だが、今季は開幕から苦戦。

ここまで4分5敗で9戦未勝利だ。勝利は3月15日に行われたACLプレーオフ(メルボルン・ビクトリー戦)の1試合のみだ。

この状況に、クラブは2020年9月からチームを率いた三浦淳寛監督との契約を3月20日に解除。今年1月から育成部門でヤングプレーヤーデベロップメントコーチを務めていたリュイス・プラナグマ氏を暫定監督に据えた。だが、その体制で臨んだ4月2日の京都戦、6日のFC東京戦にいずれも1-3で敗れ、白星を得ることはできなかった。

現在の順位はJ1の18チーム中17位。総得点は9試合5得点でワースト2位、総失点は15でリーグ最多だ。38試合で36失点だった昨シーズンの約半数に迫ろうとしている。

 今シーズンを前に、ベルギー代表DFトーマス・フェルマーレンがチームを離れ(後に現役引退を発表)、チームは守備の安定感を欠く。また、MFセルジ・サンペール選手やFW武藤嘉紀選手らけが人も多く、攻守両面で選手起用の苦労も続いている。

「明確なアイデアをチームに与えたい」

 ロティーナ監督は神戸の現状について、「苦境には多くの要因が絡んでいる可能性を示唆し、「大きな要因はタイトスケジュールかと。連戦続きで怪我人が多く出たことが一番の要因かと思う」と述べて、「重要なのはロッカールーム、そしてクラブのスタッフ、ファンが一体となること。全員で団結していい雰囲気を作れば、結果はより簡単な形で転がり込んでくる」と言う。

 さらに、「日本にいた5年の間に神戸のことはフォローしてきたし、対戦もした。攻撃的サッカーを好み、ボールを支配してポゼッションするのが好きなチーム」と話し、チームの特性に今回着任したコーチ陣の考え方を組み合わせれば、いいサッカーが展開できるとして、「ファンが気に入って結果を出せるサッカーを構築したい」と話した。

今回、ヴェルディやセレッソなどでも一緒に組んできたイヴァン・パランコ、トニ・ヒル・プレルトの両氏もヘッドコーチ、フィジカルコーチとして着任した。

ロティーナ監督は、キャプテンを務めるイニエスタ選手について、スペインリーグでの対戦経験を振り返って「敵として何度も苦しめられた。彼がプレーしやすい環境を整えて、彼の才能を最大限引き出さなければならない」と述べている。

「自分にとっては守備と攻撃の関係性がすごく重要で、サッカーはその2つが1つになって成り立っているもの。その点で明確なゲームモデル、アイデアをチームに与えたい」と語った。

 この日の会見に同席した神戸の永井秀樹スポーツダイレクターは、自身が東京ヴェルディでユースチーム監督を務めた折にトップチームを率いていたロティーナ監督について、「この状況をすぐに改善して好転させてくれるのはロティーナさんしかない。いい攻撃をするための守備という考えを持っている監督だ。守備の再構築には非常に期待している」と語った。

同席した神戸の栗原圭介強化部長は、クラブが求める監督の資質について言及。シーズン途中での交代で、Jリーグについての知識や、イニエスタ選手ら外国人選手、日本人選手とのコミュニケーション能力に優れ、チームの方向性を明確に示すオーガナイズ能力と経験を列挙し、ロティーナ監督がそのすべての条件を備えていると説明した。

 チームは8日午後の練習から新体制でスタート。10日のセレッソ大阪戦に備え、その後はタイで集中開催されるACLのグループステージに臨む。ACLでは上海海港(中国)、傑志(香港)、チェンライ・ユナイテッド(タイ)と同じJ組で、4月16日から5月1日までの間に中2日で6試合を戦う。

 準備の時間もなく、負傷者も多く抱えた状況での始動となるが、チームとしてまとまって活動ができるACLの期間は戦術の落とし込みの機会になる。

ロティーナ監督は、「今いる選手の情報を確認してきた。彼らの力を借りて、この1か月間を戦い抜く。競争力のある強いチームを形成するのと同時に、チーム全体でプレー時間を分配するバランスを取っていきたい」と話す。

神戸での初陣が10日に古巣のセレッソ戦となることには、「特別な試合という気持ちはあるが、自分たちには重要な試合。しっかり準備をしたい」と語った。


取材・文:木ノ原句望