【皐月賞】ソールオリエンス 史上最少キャリアV!雨上がりの中山に昇った、泥だらけの朝日
2023.4.17
ソールオリエンス 写真:東京スポーツ/アフロ
「エフフォーリアがくれた経験を僕自身の経験、糧にしてもっと成長していきたい」――
現役を引退するエフフォーリアが美浦を離れたこの日、横山武史は集まった記者たちに涙ながらにこう語った。
エフフォーリアが現役を去る1ヶ月前、横山はソールオリエンスと出会った。初タッグで臨んだ京成杯は4コーナーから直線に入るところで大きく外へと膨れるというアクシデントがあったが、それでも直線では猛然と伸びて勝利。クラシックへと名乗りを挙げた。
素質の高さを感じさせたもののまだまだ完成途上といった様子の走りだったためか、レース後のコメントで横山はソールオリエンスのポテンシャルの高さを認めつつも「精神的にもフィジカル的にももっと成長してほしい」と、勝利したにもかかわらずどこか険しい表情で淡々と語っていたのが印象に残った。
もしかしたら、この時の横山はソールオリエンスと2年前のエフフォーリアを比べていたのかもしれない。
2頭とも3歳緒戦で重賞初制覇を飾ったが、スタートからスッと前に付けてソツなく抜け出すことができたエフフォーリアと比べると、まだまだ幼さが残るソールオリエンスの走りは実に対照的なもの。だからこそ京成杯のレース後、横山からやや辛口なコメントが出たのかもしれない。
荒々しさが残る若駒との出会いと、最高の相棒との別れを経験したこの春の横山。新たな相棒、ソールオリエンスと挑む牡馬クラシック戦線は近年まれに見る混戦となった。
朝日杯FS勝ち馬もホープフルS優勝馬も不在な上、重賞を2勝以上した馬すら不在という文字通りの主役不在となったクラシック1冠目の皐月賞。それだけにどの馬にもチャンスがあるとされ、ソールオリエンスも有力馬の1頭として数えられていた。
だが、最終追い切り後に行われた共同記者会見でも横山は素質の高さこそ評価したが、「完成はまだ先」と硬い表情のまま淡々とコメント。2年前のエフフォーリアと比べると少々厳しすぎるのでは?というくらいに褒めることが少なかった。
そうして迎えた皐月賞。ソールオリエンスにとっては試練だらけの一戦となった。
ここまでのキャリアはたったの2戦。過去にこれだけ少ないキャリアで皐月賞を制した馬がいないというだけでも大きなハンデだが、その2戦とも9頭立ての少頭数のもの。
そして引いた枠番は1枠1番。前日の雨が残った重馬場のコンディションで馬群に揉まれるであろう最内枠からのスタートではキャリアの浅さが仇になってしまうのでは......という不安が鞍上の横山はもちろん、馬券を買うファンたちにもあったことだろう。
だが、パドックに現れたソールオリエンスからはそうした不安は微塵も感じられなかった。これが初のGⅠレースのパドックとなったが、堂々と闊歩する姿はまさにクラシックの主役とも言うべき存在のそれ。返し馬でも力の要る馬場のはずなのに、軽やかなフットワークを見せるほどだった。
ゲートが開いた直後からグラニットが逃げ、外からベラジオオペラが追いかけるという展開になったレースの前半戦。最内枠からのスタートとなったソールオリエンスは1コーナーを過ぎるところでは15番手を追走していた。
ただでさえ直線が短い中山コースで、さらに芝が湿って前に行った馬が有利に働きがちな馬場コンディションを考えると決して得策とは言えない位置取りになったが、それでもソールオリエンスと鞍上の横山は慌てることなくこの位置のままで走っていた。
前半1000mの通過タイムは58秒5。これまでにどの馬も経験したことがないハイペースなだけにキャリアの浅いソールオリエンスには厳しいようにも感じられ、実際、3コーナーから4コーナーに入るところで位置取りが少し下がり、なんと18頭中17番手で最後の直線を迎えていた。
直線コースが長い東京競馬場ならまだしも、わずか308mしかない中山、しかも道悪馬場ということを考えたらとても届かないと誰もが思ったことだろう。残り200mを過ぎたころに弥生賞勝ち馬のタスティエーラが先頭に立ったところで、誰もがこの馬が今年の皐月賞を制したと感じたはずだ。
だが、そこからがソールオリエンスの見せ場となった。横山の左鞭に応えるかのように一歩、また一歩と人馬ともに泥だらけになりながらも末脚を伸ばしていく様子は迫力満点で、大外から猛然と前を行くタスティエーラを懸命に追いかけていった。
そして残り50mを過ぎるころ、ソールオリエンスはタスティエーラを捕らえて先頭に立ち、1馬身1/4の差をつけてゴール。史上最少キャリアとなる3戦目で皐月賞のタイトルを手にして、眩しいばかりの光を放つ朝日のように混戦と称された牡馬クラシック戦線の頂点に昇りつめた。
ソールオリエンスが大外から飛んでくる様子はまるでティラノサウルスが追いかけてくるかのような迫力を感じさせるものだった。それだけにファンは胸を打たれたことだろう。ソールオリエンスがゴールした直後から「すごいものを見た」とばかりに拍手が中山のスタンドにこだましていた。
これまで硬い表情でコメントし続けてきた横山だったが、レース後のインタビューでは「(直線で内にいた馬たちをまとめて交わせて)本当に気持ちよかった」と笑顔で語り、最後にこう締めくくった。
「(ダービーは)2年前に悪夢のような負け方で勝ちを逃しているので、平常心でこの馬の力が発揮できるよう頑張りたい」
2年前のダービーでは最高の相棒だったエフフォーリアで臨み、シャフリヤールにハナ差差されて2着と涙を飲んだ横山。新しい相棒、ソールオリエンスと臨む今年のダービーは果たして、どんな結果になるのだろうか......。
■文/福嶌弘
第83回皐月賞(GI)着順
4月16日(日) 3回中山8日 発走時刻:15時40分
着順 馬名(性齢 騎手)人気
1着 ソールオリエンス(牡3 横山武史)2
2着 タスティエーラ(牡3 松山弘平)5
3着 ファントムシーフ(牡3 C.ルメール)1
4着 メタルスピード(牡3 津村明秀)13
5着 ショウナンバシット(牡3 M.デムーロ)12
6着 シャザーン(牡3 岩田望来)8
7着 トップナイフ(牡3 横山典弘)9
8着 ウインオーディン(牡3 三浦皇成)15
9着 フリームファクシ(牡3 D.レーン)4
10着 ベラジオオペラ(牡3 田辺裕信)3
11着 グリューネグリーン(牡3 石川裕紀人)16
12着 グラニット(牡3 嶋田純次)17
13着 タッチウッド(牡3 武豊)6
14着 マイネルラウレア(牡3 戸崎圭太)11
15着 ワンダイレクト(牡3 藤岡佑介)14
16着 ラスハンメル(牡3 石橋脩)18
17着 ホウオウビスケッツ(牡3 横山和生)7
18着 ダノンタッチダウン(牡3 川田将雅)10
※結果・成績・オッズ等は主催者発表のものと照合してください。