【秋華賞】リバティアイランドが牝馬三冠制覇!大胆に 自由奔放に走って掴んだ約束のトリプルクラウン
2023.10.15
2023 秋華賞(GI)リバティアイランドが優勝 写真:日刊スポーツ/アフロ
第28回秋華賞回顧
「私を差せるものなら、差してみなさいよ!!」――
4コーナーを先頭で駆け抜けていったリバティアイランドがそう言っているかのように見えた。史上7頭目となる牝馬三冠制覇を目指す彼女の大胆な走りに多くの競馬ファンは驚かされたことだろう。
だが、レース後のインタビューで川田将雅は「気持ちよく走ってくることを優先した」と、4コーナーで先頭に立ったことについて振り返った。彼にもそして彼女にも大胆な走りをしたという自覚はなかったようである。
それもそのはず。川田にとってリバティアイランドと過ごしてきた時間はすべて、牝馬三冠達成のゴールにあったのだから。
昨年の夏のデビュー戦で上がり31秒4という強烈な末脚を見せて快勝した時からリバティアイランドとタッグを組んでいた川田。
アルテミスSで進路を見失いまさかの2着に敗れたが、この時の敗因を糧に阪神JFでは他に馬のいない大外へ進路を取って突き抜けて2歳女王に。
3歳になってからも桜花賞では破壊力満点な末脚を見せ、オークスでは3枠5番という内枠に入ったことや2400mという距離を考えてか6番手でレースを進めて圧勝。
このGⅠ3戦のリバティアイランドの走りに共通するのはすべて進路を阻まれずに走ることに重きを置いていること。能力値の高さは間違いない。あとはいかに自由に走らせるか――
これがリバティアイランドとレースに臨む川田のテーマになっていたように思う。
そうして迎えた秋華賞は戦前からリバティアイランドの牝馬三冠達成のみが焦点に。
春のクラシック出走馬たちとはすでに勝負付けが済み、夏競馬で名を挙げた上がり馬も少なめ。となればリバティアイランドが京都の内回りコースに対応できるかが三冠達成へのポイントとなっていた。
これまで東京や阪神の外回りコースなど、直線が長く広いコースで活躍してきたリバティアイランドにとって秋華賞が行われる京都芝2000mは初めての舞台。
桜花賞のように後方からの末脚勝負に持ち込むと届かない恐れがあり、さらに3コーナー過ぎの坂を上って下るという体験も初めて。それだけに戸惑うこともあるのでは?と一部で不安視する声はあったが、それはすべて杞憂となった。
リバティアイランドの自信にあふれた振る舞いはパドックから見られた。オークスから5ヵ月ぶりにファンの目の前に現れた彼女は+10キロとなる馬体重476キロで登場。
ひと夏を越えて成長してくるのは当然だが、それ以上に桜花賞やオークスの時以上にパドックでの周回が堂々としているようにも見えた。
その姿はまるで「今日は私のことを見に来たんでしょ?」とファンに語り掛けるかのような余裕すら感じられた。
この日の京都競馬場は重馬場で第1レースを迎えたが、10レースを迎えるころには稍重に回復し、さらに曇っていた空もまるで秋華賞のためにと言わんばかりに秋晴れの晴天に。そんな素晴らしい天候の下で今年の秋華賞のゲートは開いた。
スタート直後、コナコーストとミシシッピテソーロが先頭を争い、その後ろにラヴェルやハーパーと行った春のクラシック出走馬たちが付けた。
破壊力抜群の末脚を誇るリバティアイランドの脚を封じるには少しでも前にいなければ勝てないと考えたのか、人気馬たちの多くは前目の位置を取ろうとした。
だが、そんな中でリバティアイランドが付けた位置取りは3番手グループの一段。
隊列で言うと6~7番手というこれまでと比べても比較的、前の位置取りという意外なところ。前目に付けたハーパーの半馬身後ろで折り合いをつけることに務めているように見えた。
1000m通過タイムは1分1秒9と過去10年の秋華賞で最も遅い流れになったが、リバティアイランドは行きたがる様子を一切見せなかった。3コーナーの坂の上りに入ったところでドゥーラと並んだリバティアイランドはここで外へと進路を取り始めた。
「道を作れれば負けることはない」と川田はここで勝利を確信したというが、そうした牝馬三冠へのVロードをリバティアイランドはものすごい勢いで駆け抜けていった。
そして4コーナー。
外から猛然と迫ってくるリバティアイランドは前を行くラヴェル、ミシシッピテソーロ、そして最内のコナコーストらを一気に捕まえて先頭に。
外から猛然と駆け抜けていくリバティアイランドの姿を間近で見た京都競馬場に集まった4万人を超えるファンたちは大歓声を挙げた。
直線に入ってからは、競馬ファン、鞍上の川田、管理する中内田充調教師にそしてリバティアイランド自身も確信したであろう勝利へと向かって一直線に伸びていった。
内にいた先行馬たちが失速する中で馬群を縫って伸びてきたハーパー、ドゥーラが懸命に差を詰めるがリバティアイランドの眩しすぎる走りにはもう届かない。
そんな中、外から猛然と伸びてきたのがローズSの勝ち馬マスクトディーヴァ。
有力馬の中で唯一、リバティアイランドと未対戦だった彼女は三冠を阻むために懸命に脚を伸ばしてきたが、それでもその差は縮まることはなかった。
結果、リバティアイランドは2着のマスクトディーヴァに1馬身の差をつけてゴール。
17頭のライバルを力でねじ伏せて、史上7頭目となる牝馬三冠を軽々と達成してみせた。5ヵ月ぶりの実戦で初めての小回りコースという不安も吹き飛ばす圧巻の走りをファンの前に見せつけた。
「この馬に出会ってからの時間のすべてがここに向かっていた」という川田の言葉通り、牝馬三冠を達成したリバティアイランド。今年の牝馬クラシック戦線を席巻した自由奔放な走りでどんな未来を切り開いていくのだろうか。
■文/福嶌弘