【サッカー】川崎が3年ぶりの天皇杯優勝!柏にPK戦決着

サッカー

2023.12.10

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    川崎フロンターレ Getty Images / Etsuo Hara

    川崎フロンターレが12月9日、東京の国立競技場で行われた天皇杯決勝で柏レイソルと対戦し、延長0-0の末に臨んだPK戦を8-7で制して3年ぶり2度目の優勝を遂げた。

    GKチョン・ソンリョンがPK戦で自ら決め、相手のキックを止める活躍で、チーム史上7度目のタイトル獲得に貢献。川崎は天皇杯優勝チームとして2024/25年から再編成されるACLエリート(ACLE)に出場する。

    国立競技場で大会決勝最多の62,837人が見守る中、スコアレスドローとなった120分の戦い同様にPK戦でも両者は一歩も譲らなかった。

    川崎は二人が止められ、柏は二人が枠を叩いて7-7で迎えた10人目。先攻の川崎はGKチョンが進み出てPKスポットにボールを置く。正面のGK松本健太をちらりと見て一拍の間を取って助走から右足を振ると、ボールは鋭い弾道でゴール右に突き刺さった。

    8-7としたが、チョンはニコリともせず、ゴールマウスに向かい、柏キッカーGK松本との対決に臨んだ。

    川崎GKは相手が蹴る瞬間、一瞬左へフェイントをかけると素早く右へ切り替えして松本のキックに飛びついてブロック。大歓声の中、チョンは初めて感情を爆発させた。

    優勝を決める立役者となった川崎の守護神は、猛ダッシュで駆け寄ってきたチームメイトから飛びつかれ、ピッチに倒れ込むと次々と折り重なられる手荒い祝福を受けた。

    「僕がインサイドで蹴ったので、インサイドで蹴らないだろうと思った。逆(への動き)を1回見せて、タイミングを合わせて飛んだ」2016年から川崎でプレーするGKチョンは、鬼木達監督体制でリーグ優勝4回を含め7度のタイトル獲得に貢献してきた。経験がモノを言った場面だった。

    38歳の元韓国代表GKは、Kリーグ時代にもフィールドプレーヤーとして出場した試合でPKを蹴った経験があったと言い、川崎でも決勝前日だけでなく、チームメイトとともにそれ以前から居残り練習で取り組んでいたという。

    「練習はしていたけど、自分まで来るとは思っていなかった」とGKチョン。「家長(昭博)選手に『止めたのもすごいけど、キックもすごいな』と褒められた」と明かし、笑顔を見せた。

    「チームにはPKだけでなく、居残って練習する選手がたくさんいる。そういうことが運も引き寄せたのだと思う」と語った。

    試合中に集中しすぎてめまいを覚えた瞬間もあったという川崎の守護神は、120分のなかでも好セーブを披露した。

    前半14分の柏MF小屋松知哉のシュートを、後半11分にはMFマリウス・サヴィオのFKを弾き返した。そして、延長前半9分には、相手DF裏に抜け出してGKと1対1になったFW細谷真大のシュートをブロック。

    細谷はリバウンドに反応してペナルティエリア左から再びシュートでゴールを狙ったが、これも阻止。クリーンシートを死守した。

    GKチョンは、「僕のストロングポイントは1対1。先に転ばずにしっかり相手を見て威圧感を与えられるように(意識してプレー)した」と胸を張った。

    今季を象徴する苦戦

    GKチョンの活躍もあって優勝を勝ち取った川崎だが、試合は今季を象徴するような苦しい戦いだった。

    柏がFW細谷真大とFW山田康太を中心に前線から厳しいプレッシャーをかけ、さらに川崎の最終ラインの背後を突く、縦へ速い攻撃を繰り返し展開。

    これで押し込まれ、中盤もうまく機能せず、セカンドボール獲得でも後手に回ることが多く、思うような攻撃をできなかった。

    最初の得点機らしい得点機は前半40分。瀬古樹がミドルレンジから狙ったが枠を捉えることはできずなかった。もっとも得点の匂いがしたのは延長後半の終盤に、途中出場していたFWバフェティンビ・ゴミスが右クロスを捉えてシュートを放ち、GKが弾いたところにMF家長が詰めて押し込もうとしたが、GK松本に阻止された。

    川崎は苦しい展開の中、今季終盤に見せるようになっていた粘りを見せてGKチョンを中心に相手に得点はさせず、PKに持ち込んだ。

    MF脇坂泰斗は、「ワンチャンスをモノにしてくる力が向こうにはあるので、自分たちから崩れないように、声掛けはいつもより意識していた」と振り返り、「苦しんで獲ったタイトルなので、すごくうれしい」と話した。

    今シーズン主将を務めたMF橘田健人は、「1年間通してうまくいかないこともあった。そこを自分たちで、苦しいながらもずっとやり続けてきた。このタイトルを獲ること でいままでやってきたことが正しかったと証明された。今後のチームにすごく影響を与えると思う」と語った。

    川崎の鬼木達監督は、「選手には『PKになっても最後の最後まで気持ちが大事だよ』とミーティングでも言っていた。そうならない方がよかったが、それを体現して最後に勝利を持ってきてくれた。選手とサポーターに非常に感謝している」と話し、安堵の表情を見せた。

    2017年からチームを率いる鬼木達監督の下でこれが7タイトル目。圧倒的な攻撃力を示してリーグを4度制覇した頃(2017、18、20、21)とは選手も入れ変わり、無冠に終わった昨季を経てのタイトルだ。

    川崎指揮官は、「どんな状況でも苦しい中でも勝てるのは簡単なことではない。全員が細かいところや勝ちにこだわらないと優勝はないと思っているので、選手の成長を感じて いる」と喜び、こう続けた。

    「タイトルを獲り続けないとわからないことはいっぱいある。獲るときの空気感、言葉で説明できないことを選手には感じてほしい」

    決定機を欠いた柏

    柏は、川崎とは10月29日のJ1リーグでも対戦して1-1と引き分けていた。その経験から、井原正巳監督が「川崎のやり方はしっかり理解した中で臨んだ」という今回の決勝で、序盤から狙いとするプレーを徹底。

    後半もハードワークを続け、相手を自由にさせずに試合を続けた。放ったシュートは前半の11本を含めて120分で19本。

    川崎の7本を大きく上回っていたが、決定機に決めることができなかったのが響いた。

    後半半ば、縦パスに抜け出した細谷がGKと1対1になる場面を作ったが、トラップが長くなってシュートを打つことができなかった。後半アディショナルタイムにはペナルテ ィエリア左からのDF片山瑛一のシュートが枠に弾かれる場面もあった。

    この試合最大の得点機だった延長前半9分には、細谷が抜け出してGKと1対1でシュートを放ち、GKチョンに阻止されたリバウンドにも反応してペナルティエリア左から再び 狙ったが、これもGKにセーブされた。

    井原監督は、「前線からの守備を今日のテーマに掲げて、90分間強度を落とさずにやろうと意識していた」と明かし、「非常に素晴らしい(試合の)入りをしてくれて、120分戦った中で、我々のやろうとしているサッカーを全員が表現してくれた。

    どちらが勝ってもおかしくない試合だったと思う」と振り返った。

    今季はシーズン途中の5月中旬から前任のネルシーニョ監督の後を受けて指揮を執り、J1残留も決めた井原監督は、決勝の120分の戦いを終えて、「もっとアタッキングサー ドで崩せるシーンを増やしていかないといけない」と課題にも言及したが、決勝を戦った経験が今後へプラスになると期待している。

    日本代表で1998年ワールドカップを含めて122試合を戦ってきた元DFは、「選手キャリアのなかで、こういうファイナルはなかなかできない。

    この悔しい経験をしっかりと糧にして、次のサッカー人生に活かしてほしい。残念な結果だが必ず次につながると思っている」と語った。

    取材・文:木ノ原句望