【有馬記念】武豊「ドウデュースも私も帰ってきました!」帰ってきたHERO グランプリの舞台で復活を遂げた人馬

写真:東京スポーツ/アフロ
ドウデュースにとって、2023年はどんな年だったのだろうか――有馬記念の前、馬券予想をしながらそんなことを思った。
振り返れば1年前、ダービーの直線で自慢の末脚を爆発させ、イクイノックスの追撃を凌いで勝利。
朝日杯FS、ダービーと世代の頂点を決める主要なレースを立て続けに制してきた彼は文句なしの世代最強馬となり、秋には凱旋門賞へ挑戦。
結果こそ振るわなかったが、そのチャレンジは価値のあるもので、古馬になる2023年の活躍を誰もが信じて疑わなかった。
そうして迎えた2023年、4歳になったドウデュースは復帰戦となった京都記念で快勝し、世代最強馬にふさわしい走りでその実力を見せつけた。
この後に予定しているドバイターフでも素晴らしい成績を残し、同世代のライバル・イクイノックスとともに現役最強の座を争うことになると思われたが......
ドウデュースはドバイターフ前の調教で左前肢跛行を発症し、無念の出走取り消し。ドバイシーマクラシックでイクイノックスが世界を震撼させる逃げ切りを見せたのとは対照的な結果となってしまった。
ドウデュースがターフを離れている間、競馬界の覇権は大きく変化していた。
ダービーで2着に破ったイクイノックスが成長を遂げ、ドウデュースがフランスに遠征している間に天皇賞(秋)、有馬記念を勝利して年度代表馬に輝くと、ドバイでもGⅠ制覇を果たしロンジンワールドベストホースランキングでは1位になる快挙まで成し遂げた。
帰国後には宝塚記念も軽々と制して、現役最強の座を不動のものとしていた。
もう一度、頂点に立つ――秋に復帰したドウデュースはそう誓ったことだろう。復帰戦となった天皇賞(秋)はイクイノックスとダービー以来の対戦となり、大きな注目を集めた。
しかし、レースの直前にデビュー以来、ずっと手綱を取り続けていた武豊が負傷するアクシデントに見舞われて急遽、戸崎圭太とタッグを組むというハプニングが影響してか、ドウデュースは直線で伸びきれずに7着完敗。
続くジャパンCは4着と巻き返したが、2戦ともイクイノックスには届かなかった。
間もなくイクイノックスは現役引退を発表。残されたドウデュースは「このままでは終われない」と言わんばかりに有馬記念へ挑むことになった。最高のパートナー・武豊を背にして。
GⅠ馬が8頭エントリーして、3世代のダービー馬が揃う豪華な顔ぶれとなったが、ファン投票1位、2位の馬が揃って出走しなかったためか、戦前から混戦模様と評された今年の有馬記念。
そのためか単勝オッズが10倍を切る馬が7頭もいるという状態となり、どの馬にも勝つチャンスがある一戦と目されていた。
全ての競馬ファンが注目したレースはスタートからタイトルホルダーが逃げ、大外枠に入ったスターズオンアースが積極的に2番手に付けていくという形で先団を形成。
中団には今年のダービー馬タスティエーラと皐月賞馬ソールオリエンスが付け、その外には凱旋門賞で4着に入ったスルーセブンシーズという隊列となり、1番人気のジャスティンパレスは最後方に位置して進んでいった。
有力馬が前後にばらける中、ドウデュースはスタートで後手を踏んだこともあり、後ろから2番手の位置でホームストレッチへと入っていった。
これが引退レースとなるタイトルホルダーは自身の持ち味をフルに生かすように横山和生とともに逃げ、気が付けば5馬身ほどのリードを取り、後続を引き離す形に。
前半の1000mは1分0秒4という平均ペースの逃げはこの馬が最も得意とする展開となり、離れた2番手に付けたスターズオンアースもクリストフ・ルメールとともに虎視眈々と前を捕まえる準備を進めていた。
そうした状況の中でも後ろにいたドウデュースだったが、残り1000mを過ぎたところから遂に動き出す。3コーナーを過ぎるころには外へと持ち出して馬群を上がっていき、スターズオンアースと差のない3番手集団に付けていた。
そして迎えた最後の直線。ファンの目の前で繰り広げられたのはスターホースたちの競演だった。
リードを持って直線を迎えたタイトルホルダーが先頭に立ち、最後の力を振り絞って粘るのをスターズオンアースそしてドウデュースの4歳2頭が懸命に追いかけ、あと2馬身、あと1馬身、あと半馬身と迫っていった。
ゴールまで残り200mを過ぎたころ、タイトルホルダーをスターズオンアースとドウデュースが捕らえ、3頭が並んでの叩き合う形に。
その後ろからは2年前のダービー馬シャフリヤール、そしてジャスティンパレスが続いていたが、優勝はこの3頭に絞られた。
内には最後の力を振り絞り、逃げ粘るタイトルホルダー。真ん中は不利な大外枠からでも挫けずに伸び、久々の勝利を掴みに来たスターズオンアース。そして外にはグランプリの舞台で復活を遂げたいダービー馬、ドウデュース。
......三者三様、それぞれの思いが交差した叩き合いを制したのはドウデュースだった。
武豊の渾身の右鞭に応えるように伸びたドウデュースが追いすがるスターズオンアースに半馬身差を付けて先頭でゴールイン。力でねじ伏せる形でドウデュースと武豊のコンビはダービー以来のGⅠタイトルをもぎ取ってみせた。
グランプリの舞台で復活を遂げた人馬に待っていたのは惜しみない拍手と賛辞。ファンのユタカコールに応えてガッツポーズを見せた武豊はレース後のインタビューでこう答えた。
「ドウデュースも私も帰ってきました!」......
誰もが待っていたダービー馬とレジェンドジョッキーの復活にファンは熱狂し、2023年最後のレースを最高の形で締めくくってみせた。
苦難の先に待っていた、眩しいばかりの光......かつてのライバル、イクイノックスからバトンを引き継いだかのように王座に返り咲いたドウデュースが来年の競馬界を牽引していくのは間違いないだろう。
2024年、5歳となるドウデュースが武豊とともにどんなレースを見せるか......今から楽しみでならない。
■文/福嶌弘

ドウデュースが2023年の有馬記念を制す 写真:東京スポーツ/アフロ
第68回有馬記念(GI)着順
2023年12月24日(日)5回中山8日 発走時刻:15時40分
着順 馬名(性齢 騎手名)人気
1着 ドウデュース(牡4 武豊)2
2着 スターズオンアース(牝4 C.ルメール)7
3着 タイトルホルダー(牡5 横山和生)6
4着 ジャスティンパレス(牡4 横山武史)1
5着 シャフリヤール(牡5 松山弘平)8
6着 タスティエーラ(牡3 R.ムーア)5
7着 ウインマリリン(牝6 L.モリス)14
8着 ソールオリエンス(牡3 川田将雅)4
9着 ハーパー(牝3 岩田望来)11
10着 ホウオウエミーズ(牝6 田辺裕信)16
11着 アイアンバローズ(牡6 石橋脩)13
12着 スルーセブンシーズ(牝5 池添謙一)3
13着 ライラック(牝4 戸崎圭太)10
14着 プラダリア(牡4 B.ムルザバエフ)12
15着 ディープボンド(牡6 T.マーカンド)9
16着 ヒートオンビート(牡6 坂井瑠星)15
※出馬表・成績・オッズ等は主催者発表のものと照合してください。