【大阪杯】ベラジオオペラが優勝!「弱い」と揶揄された世代 論争を終結させた遅れてきた器用な馬
2024.3.31
2024 大阪杯 (G1) ベラジオオペラが優勝 写真:東京スポーツ/アフロ
ベラジオオペラのこれまでの戦績を見ていると、どこかつかみどころのない馬というイメージが強い。
デビュー戦は阪神外回りの芝1800mで番手から動いて上がり最速の脚を使って勝ち切り、セントポーリア賞では逃げ切りが難しいとされる東京芝1800mで逃げて勝利。
広いコースでスピード勝負になると強い馬という印象で見ていたら、小回りの中山コース、しかも道悪馬場で行われたスプリングSを中団から差して重賞初制覇。
よく言えば条件不問、悪く言えばつかみどころがない。だから狙いを立てるのが難しい......それが私の中でもベラジオオペラに対する印象だった。
そんなベラジオオペラは皐月賞で3番人気に支持されるも10着大敗。小回りも道悪馬場もこなした後にこの負け方は正直解せなかった。
そうかと思えばダービーでは4着とはいえ勝ち馬とはタイム差なしの接戦。上がり3ハロンではメンバー最速となる33秒0を記録したのだから本当によくわからない。
いくらアーモンドアイを輩出しているとはいえ、ロードカナロア産駒と言えばマイルから2000mあたりまでが仕事場。それなのにあわやダービー馬になっていたかもしれないほどの好走を見せたのだ。
......こんなつかみどころのない馬が世代のトップクラスにいるのだから、2023年クラシック世代のレベルが低いという世間の評判もあながち間違っていないように感じた。
だが、そんな風潮に対してベラジオオペラはただ1頭、反発していたように思う。
さすがに菊花賞の条件は厳しいと考えたか、ダービーからの復帰戦として選んだのはチャレンジC半年以上休んでいたため、馬体もプラス20キロと一気に成長させた。
そしてレースでは中団前目から流れに乗って動いて、前で競り合っていたボッケリーニらをまとめて交わして勝利。この世代の牡馬として古馬重賞を制した2頭目の馬となった。
そして京都記念で2着に好走してから迎えた大阪杯。つかみどころのない馬だったベラジオオペラは変わった。「つかみどころがない」のではなく、「器用な」馬としてこの舞台に臨んできたように見えた。
小春日和の気候の中で行われた、今年の大阪杯。
単勝オッズ10倍を切る馬が5頭もいる混戦となったが、世代レベルが低いと言われてきた4歳馬たちが3頭もいるというようにこのレースの主役となった。
ダービー馬タスティエーラが1番人気になるのは当然としても、2番人気には昨春のクラシックで馬券に食い込めなかったベラジオオペラが推されていた。
菊花賞以降、馬券圏内に入っていないクラシックホースよりもチャレンジC、京都記念と古馬重賞で結果を出してきたこの馬の方が今は頼りになる――
おそらくファンはそう判断して、ベラジオオペラの馬券を買ったと思われるが、彼自身そうした期待に応えようとパドックでは気合を内に秘めて周回していたタスティエーラ、ソールオリエンスとは異なり、元気に周回している様子が印象に残った。
そしてレースもまた、そうした積極性が好結果を生んだ。
戦前から「どの馬が逃げるかわからない」と言われるほど逃げ馬不在のメンバー構成の中で、ベラジオオペラはゲートが開いた瞬間に横山和生騎手が手綱をしごいて前に付けた。
もともと速い上がりを使える馬なのに、素軽いスピードがあるからこそ好位でレースができる。そんな器用さがプラスに出たように思う。
一昨年の秋華賞馬、スタニングローズが逃げてベラジオオペラが2番手、そのすぐ後ろにダービー馬タスティエーラが付けていった馬群は前半の600mを通過したところで35秒8と例年と比べるとだいぶゆったりとした流れに。
その後の800mの通過タイム12秒6とスローに落ち着いたことで先行馬有利の流れになっていた。
そうした流れを壊しに来たのが5歳馬ローシャムパーク。残り1000mに差し掛かろうというところで猛然とマクるように仕掛けていくことでペースがガラッと早くなると、各馬の流れも変化。
それと一緒に皐月賞馬ソールオリエンスも外から進出。気が付けば番手にいたダービー馬よりも前に付けていた。
3コーナーを過ぎ、馬群がひと固まりになり、前にいた馬たちもペースを挙げて行くのだが、ベラジオオペラは全く動かない。
それでいて2番手というポジションだけは絶対に譲らないとばかりにローシャムパークをけん制して、スタニングローズのすぐ横に付けた。そのすぐ後ろではダービー馬タスティエーラが鞭を打たれ、スパートを開始しているというのに。
そして迎えた直線。逃げるスタニングローズを捕まえて先頭に立ったのはベラジオオペラだった。これが4回目のコンビとなる横山和生の乗り方はこれまでの3回とは全く違うもの。
素軽いスピードがあるのに、切れる末脚が使えるというこの馬の器用さを「個性」と考えたか、これまでのような後方待機策ではなく積極的に動いて行ったことで持ち味をフルに生かしてみせた。
残り100m過ぎ。ロングスパートを打ったローシャムパークが外から、直線で爆発的な脚を使って伸びてきた伏兵ルージュエヴァイユが内から突っ込んできての叩き合いとなったが、先行して押し切るレース運び自体はデビュー初期のころに経験済み。
最後は追いすがる2頭の真ん中を突いて、そのままゴール。外から追いすがったローシャムパークにクビ差を付けてベラジオオペラはGⅠホースとなった。
会心の騎乗を見せた横山和生はレース後、インタビューでこう答えた。
「ダービーの悔しさが忘れられなくて、どうしてもGⅠを勝ちたかった。最高にうれしい。すごく操縦性のいい馬なので思い切って先行策を取った」
......テン乗りだったダービー、後方からものすごい脚を使って勝ち馬とタイム差なしの4着に入ったことが忘れられなかったのだろう。
その後も中団から差すレースを展開してきたが、次第にこの馬の「個性」を感じ、今回の好騎乗につなげて行ったことがよくわかる。
「弱い世代」と揶揄されてきた今年の4歳の牡馬の中でただ1頭、古馬中距離重賞を複数回かった馬ッとなったベラジオオペラ。持ち前の器用さを生かして、世代の頂点に名乗りを上げた今後は、年長馬たちを蹴散らして真の王者となるのだろうか。
■文/福嶌弘