キタサンブラック 有り得ないところからキックが飛んでくる? たてがみをシャンプーされるとすぐにトロン【もうひとつの引退馬伝説】

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2026.4.5


キタサンブラック(c)SANKEI

意外なところから脚が飛んでくる!?

2017年、この年からGⅠに昇格した大阪杯を勝利したのはキタサンブラック。

同馬は3歳時に菊花賞、4歳時に天皇賞・春とジャパンCを制覇。5歳時はこの大阪杯制覇を皮切りに天皇賞春秋制覇を成し遂げ、ラストランとなった有馬記念も勝ち、多くのファンに惜しまれながら競走馬を引退。

2018年から種牡馬として第2の馬生をスタートさせた。ここではその種牡馬生活の様子を、著名な競走馬の引退後を追った『もうひとつの引退馬伝説〜関係者が語るあの馬たちのその後』(マイクロマガジン社)から一部抜粋・編集してお届けする。

歴史的名馬イクイノックスを筆頭に、多くの活躍馬を送り出している種牡馬キタサンブラック。2021年には300万円だった種付料も2024年には2000万円まで跳ね上がるなど、国内外から高い注目を集めている。

「実際に間近で見ている我々からしても、今の活躍は納得といえるようなポテンシャルを持っている馬です。名馬が多いうちの中でもトップクラスの柔軟性がありますね。ジャンプ力もありますし、飛び蹴りもしますよ(笑)。これまでの常識であれば絶対に大丈夫な位置に立っていても、見えないような有り得ないところからキックが飛んでくるんです」

社台スタリオンステーションでキタサンブラックを担当する松田輝也さんは、その柔軟性に驚かされているひとりだ。

曳く際に前脚の付近を歩いていても、位置的には遠いはずの後脚で蹴られることがあるそうで、注意を張り巡らせながらの作業となる。

「噛み癖もあるので、そのあたりは気をつけています。首も柔らかいので、常識では考えられないような角度からも噛めてしまうんですよね。人を傷つけるために強く噛んでくるというわけではなく、あくまでこちらの反応をうかがうような小さな噛みつきなんですが、それに対して人が痛がったり驚いたりすると怒ってしまいます。ですので、そうした痛みに対して反射的に反応しないよう、常日頃から細心の注意を払っています」

人に洗ってもらうのが大好きというキタサンブラックは、他の作業時間と違って洗ってもらっている間は噛むことはない。

人の手を唇で挟んだりしながらご機嫌な顔をしていて、とくにたてがみをシャンプーされていると、すぐにトロンとするそうだ。

「おっとりしながらこちらを見てきたりうれしそうにしているので、こちらもうれしくなってシャンプーは入念にしますね。尻尾なども揉み込むようにして洗っています(笑)。表情がとてもかわいらしく、洗っている最中は癒しの時間です」

噛み癖などイタズラっぽい一面を持つキタサンブラックだが、それはあくまで人とのコミュニケーションの範囲でのこと。種付けの際はしっかりと上手にこなす優等生として頼りにされている。

「ここ数年は人気が急上昇しているので忙しくしているのですが、種付けシーズンの最初から最後まで疲れを見せずやり遂げてくれます。性格も前向きで体力もあって賢くて、本当に優秀な馬です。食欲はあまりないかわりに睡眠欲が強いタイプで、種付けがピークの時期になると、種付けの前後はずっと寝ていますね。それでも(種付けの際に使う)ヘルメットを持って近づくと『おっと、種付けの時間か』というようにスッと起き上がり、種付けが終わるとすぐにスイッチがオフになります。そうした気性面のコントロールがとても上手です」

キタサンブラックは種付けのオフシーズンに突入すると、ちょうど夏バテの時期と重なり、おとなしくなるという。

元気を取り戻すのは、秋口で涼しくなってから。活発な時期は放牧地で元気よく走り回るタイプのため、運動の刺激で爪が減らないように管理は欠かせない。

精神面では、育成厩舎から響くいななきを気にするため、なるべく早く馬房に戻すなど工夫を重ねている。こうした工夫も、これまでの研究と試行錯誤によるもの。社台スタリオンに到着したころは、まだ手探りの日々だったという。

■キタサンブラックプロフィール
生年月日:2012年3月10日生まれ
性別:牡馬
毛色:鹿毛
父:ブラックタイド
母:シュガーハート(母父:サクラバクシンオー)
調教師:清水久詞
馬主:大野商事
戦績:20戦12勝
主な勝ち鞍:菊花賞、天皇賞・春(2回)、天皇賞・秋、ジャパンC、有馬記念、大阪杯
生産牧場:ヤナガワ牧場(日高)
現在の繋養先:社台スタリオンステーション(安平)
※記事の情報は2024年7月31日時点のものです。その後に状況が変化することもあるので予めご了承ください。

もうひとつの引退馬伝説~関係者が語るあの馬たちのその後

競走馬の引退後の行き先は、種牡馬や繁殖牝馬になる他、乗馬、馬術競技、伝統行事や農業で活躍したりなど多岐に渡ります。本書ではGGIなど重賞を勝った著名な馬の、繁殖生活だけに限らない余生(セカンドキャリア・サードキャリア)にアプローチ。

繋養先でどのように過ごしているのか、現役時代との違いやエピソードなどを関係者へ直撃!引退した著名な競走馬の現在の魅力をとことん掘り下げていきます。おかげさまで発売以来ご好評をいただき、本書はこのたび(2026年1月)、重版となりました。


編:マイクロマガジン引退馬取材班
発売日:2024年9月13日
価格:1,980円(本体1,800円+税10%)
購入:https://www.amazon.co.jp/dp/486716626X/

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