ノーリーズン「野馬追でも活躍した衝撃の皐月賞馬」【もうひとつの引退馬伝説】

第62回皐月賞 ノーリーズンが優勝 ブレッド・ドイル騎手(c)SANKEI
物覚えがよくて物怖じせず、乗りやすくて悪いこともしない馬
2002年の皐月賞で大波乱の立役者となったノーリーズン。
同馬は晩年、福島県南相馬市で余生を過ごし、2024年5月に25歳で息を引き取った。
ここでは南相馬での生前の様子を、著名な競走馬の引退後を追った『もうひとつの引退馬伝説〜関係者が語るあの馬たちのその後』(マイクロマガジン社)から一部抜粋・編集してお届けする。
1000年以上の歴史を誇る福島県南相馬市の伝統行事・相馬野馬追。
行程は3日間で、2日目には街中を総勢400騎の騎馬武者が行進する「お行列」から始まり、祭場地に到着後は速さを競う「甲冑競馬」、打ち上げられた花火の中から落下してくる2本の御神旗を騎馬武者たちが獲り合う「神旗争奪戦」が行われる。
例年7月に行われていたが、2024年は猛暑対策として5月末に開催された。南相馬市で余生を送り、相馬野馬追でも活躍したノーリーズンは、奇しくもその同月7日に静かに息を引き取った。享年25歳だった。
2002年に15番人気の低評価を覆して皐月賞を制覇したノーリーズン。
同年秋の菊花賞では1番人気に推されたものの、スタート直後に落馬するというアクシデントでファンを騒然とさせた。勝っても負けても大きなインパクトを残した馬だった。
その後、2004年に競走馬を引退して種牡馬入りしたが、目立った産駒を出せず、2010年に乗馬として南相馬市で第3の馬生をスタートさせた。
ところが、2011年の東日本大震災で宇都宮大学へ一時避難することに。南相馬市へ戻ってこられたのは2014年。その後は縁あって同市の鹿頭ステーブルで余生を過ごすことになった。
亡くなるまで約10年間、ノーリーズンと共に過ごした鹿頭ステーブル代表の鹿頭芳光さんによれば、やってきた当初は、すでに乗馬になっていたこともあり、バリバリの競走馬という感じではなかったそうだ。
「でも性格はやっぱりきつかったです。噛んでくるし、他の馬に対しても当たりが強かったですから。野馬追に使う予定でしたし、人にケガをさせたら申し訳ないので、すぐに去勢しました」
普段は放牧され、のんびりと過ごしているが、野馬追が近づいてくるとトレーニングを開始する。鹿頭さんとノーリーズンは、2カ月前に始めていたそうだ。
「市内の烏崎海公園で調教していました。午前3時半頃に馬房に来て、だいたい4時ごろに出発。調教は砂浜で30~40分くらい。そこから戻って馬を洗って、手入れをして、餌をやってとなると、もう6時ぐらいになっちゃうんですよね」
1キロ以上ある砂浜をゆっくりとはいえ2~3往復するのだから、なかなかの調教量だ。鹿頭さんもそこから仕事へ行くのだから恐れ入る。
ただその甲斐あって、鹿頭さんとノーリーズンは神旗争奪戦で2回ほど御神旗を獲得したことがあり、ご子息も1本獲得したことがあるそうだ。
「最初はそのまま突っ込んでいくような感じでしたが、年齢を重ねておとなしくなっていきました。去勢して2~3年経ったころには、子どもでも乗れるくらいになりましたから」
物覚えがよく、物怖じしない、乗りやすく、悪いこともしない。それが鹿頭さんのノーリーズンへの評価だ。
野馬追は1年に一度のお祭り。馬を借りる場合もあるが、この地域の人たちはそのために馬を飼い、数カ月前からトレーニングをする。鹿頭さんは、5頭ほど収容できる大型の馬運車まで所有している。
「維持費がかかるこんな車まであてがってね。馬を飼うのもお金がかかります。俺たちはそこまで懸けてやってるんですよ、野馬追が好きで」
野馬追は和鞍を使用するため、普通の乗馬よりも一段と乗るのが難しい。鹿頭さんは独学で馬乗りを学んだというから驚きだが、身近に馬がいてふれあえる環境で育ってきたからこその賜物だろう。
南相馬では4月に草競馬もあり、この地域の人々はずっと馬と共に生きてきたのだ。だからこそノーリーズンも大事にされた。
2020年に新型コロナウイルスの影響で相馬野馬追の開催が中止。それを機にノーリーズンは神旗争奪戦に出なくなった。2年ぶりの通常開催となった2022年はお行列だけに参加した。
「当時はもう20歳を越えていましたからね。年齢を考えて最後の方は行列だけでいいと思っていたし、24歳で引退と決めていましたから」
2024年の野馬追に出るという噂も当時流れたが、もともと参加の予定はなく、ノーリーズンはのんびりと余生を過ごすはずだった。

■ノーリーズンプロフィール
生没年月日:1999年6月4日~2024年5月7日
性別:牡馬
毛色:鹿毛
父:ブライアンズタイム
母:アンブロジン(母父:ミスタープロスペクター)
調教師:池江泰郎
馬主:前田晋二
戦績:12戦3勝
主な勝ち鞍:皐月賞
生産牧場:ノースヒルズマネジメント(新冠)
最後の繋養先:鹿頭ステーブル(福島県南相馬市)
※記事の情報は2024年7月31日時点のものです。

もうひとつの引退馬伝説~関係者が語るあの馬たちのその後
競走馬の引退後の行き先は、種牡馬や繁殖牝馬になる他、乗馬、馬術競技、伝統行事や農業で活躍したりなど多岐に渡ります。本書ではGGIなど重賞を勝った著名な馬の、繁殖生活だけに限らない余生(セカンドキャリア・サードキャリア)にアプローチ。
繋養先でどのように過ごしているのか、現役時代との違いやエピソードなどを関係者へ直撃!引退した著名な競走馬の現在の魅力をとことん掘り下げていきます。おかげさまで発売以来ご好評をいただき、本書はこのたび(2026年1月)、重版となりました。
編:マイクロマガジン引退馬取材班
発売日:2024年9月13日
価格:1,980円(本体1,800円+税10%)
購入:https://www.amazon.co.jp/dp/486716626X/
【有馬記念】「タバルへの声援が嬉しかった」メイショウタバルを生んだ母馬と北海道で暮らす女性の思い