天皇賞・春優勝馬 テーオーロイヤル「憧れた舞台で最高のパートナー共にGI初制覇」【もうひとつの名勝負伝説】

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2026.5.3

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    2024年天皇賞を制したテーオーロイヤル(c)SANKEI

    2024年の天皇賞・春で1番人気に推され、堂々の横綱相撲でGI馬の仲間入りを果たしたテーオーロイヤル。

    今回はその鞍上にして、自身もこのレースで記念すべきGI初制覇を飾った菱田裕二騎手に聞いたテーオーロイヤルとの初戴冠までの軌跡を、関係者への取材を通して競馬の名勝負の舞台裏に迫った『もうひとつの名勝負伝説〜関係者だけが知る激闘の裏側』(2025年5月26日刊・マイクロマガジン社)から一部抜粋・編集してお届けする。

    2024年、天皇賞・春。1番人気のテーオーロイヤルが抜群のスタートから狙い通りの好位を確保する。

    盤石のポジションでの横綱競馬。しかしその操縦性の高さは一朝一夕ででき上がったものではない。

    むしろテーオーロイヤルはデビューから3戦連続で出遅れた苦い過去を持つ。大舞台での見事な出脚は、鞍上との地道な特訓の成果であった。その鞍上とは、献身的な調教で知られる菱田裕二である。

    菱田には子どもの頃、ジョッキーになりたいという思いを家族に秘密にしていた時期があった。

    「騎手を目指したのは、小学生の頃にたまたま家族で京都競馬場に遊びに行ったことがきっかけです。競馬とは無縁の家庭でしたが、イングランディーレが天皇賞・春を制したのを目の当たりにして、騎手という職業に憧れを持ちました。ただ、両親に抵抗感があるのはわかっていたのでなかなか言い出せず......夢を打ち明けたのは中学3年生になる直前。反対されましたが、どうにか乗馬を習うことを許してもらいました」

    危険な職業と心配する両親を説得して競馬学校に入学した菱田は、実習で岡田稲男との出会いを果たす。菱田がデビューから今まで所属することになる岡田厩舎。その恩師が、出会った当初から繰り返している言葉がある。

    「岡田先生は常に『厩舎はみんながチーム。所属馬がレースでよい結果を出すために一丸となり協力していくこと』と仰っています。その信条通り、厩舎スタッフはみんなでまとまって、所属馬のためにさまざまな工夫やケアに取り組んでいます。僕も騎手ではありますが普段はチームの一員という意識が強く、レースではコンビを組まない馬でも、所属馬であれば調教で積極的に乗っています」

    そんな抜群のチームワークの厩舎で、テーオーロイヤルと菱田は自然な流れで出会った。それはデビュー前にさかのぼる。当時のテーオーロイヤルは、その将来を知れば意外ともいえる「乗っていて恐怖を感じるような馬」だった。

    そのいちばんの原因は、トモの緩さによるバランスの不安定さにあった。後肢がパンとする前だったため、自分でバランスを取るのが難しい。菱田が調教で騎乗していて、転びそうになる瞬間が幾度もあった。

    「滅多にないレベルの緩さがありましたね。そこを改善するために当時から意識していたのは、鞍上の僕がバランスを取らないこと。危険なので本当はバランス取ってあげたくなるのですが、そうすると鍛えられないんです。馬が自分でバランスを取れるまで『バランスを取ることに関与しない』ことにとにかく気をつけました。速いタイムを出すと危ないので、ゆっくりじっくりと駈歩をして、トモがパンとしてくるのを待ったんです」

    その甲斐あって、テーオーロイヤルはデビュー4戦目で勝ち上がり、続くGIIの青葉賞でも15番人気ながら4着に好走した。だが、まだ本格化前で手探りの状態。

    トモが緩いことでスタート時のダッシュが上手くいかず、よいポジションをとることができないのが大きな弱点だった。だが、そうした緩さがあるいっぽうで、菱田は追い切り後に息が乱れないなど心肺能力の高さを感じていた。

    「本当にグッとよくなってきたのは3歳秋。3勝クラスの返し馬が終わった時、歩きながらテーオーロイヤルが『黙って乗っておけ』と言うような合図を送ってきたんです。自信満々で、すごく楽しそうに周りを見渡していました。それまで騎手をやってきて1度も味わったことのない感覚で、その時に『もしかしてめちゃくちゃすごい馬なんじゃないか』と思いました」

    3歳の秋から4歳の春にかけて1勝クラスから重賞のダイヤモンドSまで4連勝を果たしたテーオーロイヤル。

    どのレースでも、返し馬の後は自信たっぷりな様子だったというが、その態度に変化があったのは初めてのGI挑戦、2022年の天皇賞・春の時だった。

    「若干、萎縮していたというか......。賢い馬ですから、周りが強い馬だったというのがわかったのでしょう。レースでの走りもややぎこちなく、4コーナーでは一杯になってしまって。勝負所で辛そうにしているのは初めてのことだったので、僕も『やはりGⅠはすごいな』と感じました。ただ、ゴール後に疲れ切っているテーオーロイヤルを見て、実力を出し尽くし
    たことを感じると共に『これでさらに成長してくれるな』という手応えもありました」

    それ以降、疲れや適性、レース中の不利など、さまざまな要因が重なり、しばらく結果が出なかったテーオーロイヤルだが、長期休養を経て徐々に復調。

    2024年のダイヤモンドSではケガから復帰した菱田とのコンビ再結成で2年ぶりの勝利を手にした。そこからは厩舎一丸となり、阪神大賞典を挟み、再度の挑戦となる天皇賞・春まで調子を維持していった。

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    女優・長澤まさみと菱田裕二騎手(c)SANKEI

    ■テーオーロイヤル プロフィール
    生年月日:2018年3月6日生まれ
    性別:牡馬
    毛色:鹿毛
    父:リオンディーズ
    母:メイショウオウヒ(母父:マンハッタンカフェ)
    調教師:岡田稲男
    馬主:小笹公也
    戦績:18戦8勝
    主な勝ち鞍:天皇賞・春、阪神大賞典、ダイヤモンドS(2回)
    生産牧場:三嶋牧場(浦河)

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    もうひとつの名勝負伝説~関係者だけが知る激闘の裏側

    手に汗握った名勝負、名馬の衝撃のパフォーマンス、あっと驚く大波乱決着、騎手のGI初勝利など、競馬史に残る感動の名レースをピックアップし、関係者への取材を基にそのレースの真相を明らかにしていく一冊です。

    取材対象となる関係者は、そのレースに騎乗した騎手の他、調教師や担当厩務員、調教助手など。騎手のレース中の駆け引きにとどまらず、戦前の馬の様子や陣営の思惑、レース後の感想やエピソードなども取り上げながら、感動と興奮を呼んだあの名勝負の舞台裏に迫ります。


    編:マイクロマガジン名勝負取材班
    発売日:2025年5月26日
    価格:1,980円(本体1,800円+税10%)
    購入:https://www.amazon.co.jp/dp/4867167622/