【天皇賞・春 見どころ】現役最強が決まる、伝統の一戦
2026.5.3
アドマイヤテラ、クロワデュノール、ヘデントール(c)SANKEI
日本で行われる平地のGIレースで最長の距離を誇る天皇賞(春)。
歴代勝ち馬を辿れば名馬の系譜とも言うべきスターホースばかりだが、一方で日本最長のGⅠレースらしく専門性が問われるのか、連覇を果たした馬や連続で好走した馬が多く見られる。
例えば1986年~2005年までに春天を連覇した馬はメジロマックイーンとテイエムオペラオーの2頭だが、2006年~2025年までにはフェノーメノ、キタサンブラック、そしてフィエールマンの3頭と増加。
この5頭のうち2頭は直近10年以内の出来事だが、この10年の間にシュヴァルグランが3年連続で出走して2着2回、3着1回。
4年連続で挑んだディープボンドが2着3回、3着1回といずれも馬券圏内を外さなかった。
かつての古馬はこぞって春の盾を目指して挑んだが、近年は海外への遠征や中距離路線に的を絞るなど、目指すレースが多様化されたことで春天の専門性が浮き彫りになったが... 今年はかつてのような真のチャンピオンを目指す馬たちがエントリーしてきたように思える。
その筆頭格に挙がるのが、昨年のダービー馬クロワデュノールだ。
デビュー当時から「優等生」の称号をほしいままにしてきた世代トップのスターホース。
毎回のようにスタートを決めるとすぐに好位に付けて流れに乗り、直線早めに動いて後続馬を突き放して勝つという教科書通りのレース運びで堂々の3連勝。
ホープフルSも危なげなく勝利して2歳王者に輝き、翌年の3冠制覇も現実を帯びることになった。
負けるわけがないと思われていたクロワデュノールが初めて敗れたのは牡馬クラシック1冠目の皐月賞。
いつものようにスタートから好位に付けて、いつものように早めに抜け出したが... そこに飛んできたのがミュージアムマイル。
ジョアン・モレイラの手綱に導かれるように伸びたライバルに屈し、初の2着に敗れた。
その無念を晴らしたのはダービーだった。最近のダービー馬では珍しい先行策を取り、直線早めに動くという正攻法。
差せるものなら差してみろと言わんばかりのストロングスタイルなレース運びに対しマスカレードボールらが猛追してきたが、デビュー以来の相棒、北村友一の鞭に応えて勝利。改めて世代最強を高らかにアピールした。
その後、凱旋門賞を目指して秋には渡仏するも、前哨戦こそ制したが本番では14着大敗。
そこから体調を立て直すのに苦戦したのか、ジャパンCではいったん前に出るも4着。世代最強馬の秋はあまりに寂しいものだった。
そして迎えた4歳の春。前走の大阪杯は1つ上のダービー馬ダノンデサイル、グランプリホース・メイショウタバルらの強力なライバルがいたが、中団から流れに乗って行くと直線では前を行くメイショウタバルを猛追。
ゴール寸前で捕らえて勝利を飾り、危なげなくGI3勝目をマーク。世代最強から現役最強へと名乗りを挙げた。
天皇賞(春)の3200mは当然未知の距離。それだけに不安が募るが... 父のキタサンブラックはこのレースを連破している生粋のステイヤー。
折り合いを欠いたことがほとんどないほど気性が安定しているクロワデュノールであれば難なくこなせるだろう。ダービー馬が春天を制すれば19年ぶりの快挙となるが、その偉業達成を見届けたい。
漆黒の馬体がクロワデュノールのトレードマークならば、真っ白な馬体で迫ってくるのがアドマイヤテラだ。
オークス3着馬アドマイヤミヤビから受け継いだ芦毛が美しい彼はデビューから一貫して2000m以上のレースにしか出走したことがない生粋のステイヤー。
それだけに仕上がりが遅く春のクラシックには間に合わなかったが、菊花賞では4角で先頭に立つという意欲的なレースを見せて3着に健闘。
4歳緒戦の大阪-ハンブルクCを制して挑んだ目黒記念も楽々と勝利し、重賞初制覇。秋の飛躍が期待された。
だが、迎えた秋はアドマイヤテラにとって苦難のシーズンに。
京都大賞典4着をステップに挑んだジャパンCはなんとスタート直後に落馬し、有馬記念はその影響もあったのか好位から動くも伸び切れずに11着に完敗した。
落馬したジャパンCではハイペースを前で追走し、カランダガンとマスカレードボールらの競り合いにも参加して勝ち馬にアタマ差だけ先着。
カラ馬状態でのゴールなので当然記録に残らないが、世界レコードが記録された中、先頭で駆け抜けたのだからやはりポテンシャルは相当なものを秘めているはずと、多くの競馬ファンはその激走を惜しんだ。
そんなファンの見立てを証明するかのように、5歳緒戦となった阪神大賞典は中団から動いて流れに乗ると、直線で早めに先頭に立って抜け出し勝利。
勝ち時計の3分2秒0はレコードタイムとなり、長距離戦での実力を証明した。
自身4度目となるGI挑戦は先週、久しぶりに土日重賞制覇を達成したレジェンド・武豊とのタッグ。
武豊を背に白い馬が春の盾で激走する姿は古の名ステイヤー、メジロマックイーンを彷彿とさせる。得意の長距離戦でGⅠ初制覇を果たし、偉大な名馬たちに並べるか。
近年の天皇賞(春)がリピーターレース化しているというのは冒頭でも書いた通り。そんなトレンドを重視するなら、昨年の勝ち馬ヘデントールも侮れない。
アドマイヤテラと同じように、デビューから一貫して2000m以上のレースを使われてきた彼は菊花賞では中団から伸びてきて2着に入り、アドマイヤテラに先着。
その勢いのまま4歳緒戦のダイヤモンドSを制して重賞初制覇を飾ると、天皇賞(春)はダミアン・レーンの手綱に導かれるように伸びて勝利。
ほんの1年前、青葉賞で大敗した馬がGⅠホースになるという急成長を遂げた。
ところが、その直後に骨折が判明して無念の戦線離脱。9カ月半ものブランクを経て挑んだ今年の京都記念は出遅れる不利もあり、後方から動けずじまいでキャリアワーストタイの8着に惨敗。
通常ならば狙いにくいのは確かな上、管理する木村哲也調教師は今年、勝ち星から見放されているかのような絶不調ぶり。
しかし、このレースを制しているという実績面とこのコースを経験しているという適性面は折り紙付き。一度叩いて望む今回は本来の姿を見せられるだろうか。
最後にもう1頭、GIに挑み続けるシンエンペラーを挙げたい。
凱旋門賞馬ソットサスの全弟として生を受け、3歳時からダービー3着などで存在感を発揮。
昨年もネオムターフCを制すると世界を股にかけて転戦。アイルランドのチャンピオンSでの6着が最高着順と言うように苦戦してきたが、今年はGⅠに昇格したネオムターフCを4着からの臨戦。
凱旋門賞馬の弟と考えると、やや物足りないと思われる成績かもしれない。しかし戦ってきた相手が世界各国の名馬たちばかり。
欧州馬のような血統構成は長距離戦で変わり身を見せるにはピッタリなはず。新パートナーの岩田望来とともに挑み、番狂わせを起こすか。
果たして現役最強馬がこの中から生まれるのか――その答えは5月3日、淀のターフで明かされる。
■文/福嶌弘
第173回天皇賞・春(GI)枠順
2026年5月3日(日)3回京都4日 発走時刻:15時40分
枠順 馬名(性齢 騎手名)
1-1 ヴェルミセル(牝6 鮫島克駿)
2-2 サンライズソレイユ(牡5 池添謙一)
2-3 アドマイヤテラ(牡5 武豊)
3-4 アクアヴァーナル(牝5 松山弘平)
3-5 ケイアイサンデラ(セ6 藤懸貴志)
4-6 エヒト(牡9 川田将雅)
4-7 クロワデュノール(牡4 北村友一)
5-8 シンエンペラー(牡5 岩田望来)
5-9 プレシャスデイ(牡4 吉村誠之助)
6-10 マイネルカンパーナ(牡6 津村明秀)
6-11 タガノデュード(牡5 古川吉洋)
7-12 ヘデントール(牡5 C.ルメール)
7-13 ミステリーウェイ(セ8 松本大輝)
8-14 ホーエリート(牝5 戸崎圭太)
8-15 ヴェルテンベルク(牡6 松若風馬)
※出馬表・成績・オッズ等は主催者発表のものと照合してください。