【凱旋門賞 見どころ】メイショウタバル、アドマイヤテラ 秋のパリで日本競馬界の悲願達成なるか
2026.10.4
メイショウタバル、アドマイヤテラ(c)SANKEI
ひと夏を越え、風が涼しくなってきた10月初旬......今年も凱旋門賞の季節がやってきた。
イタリアの英雄リボー、フランス史上最強馬との呼び声高いシーバード、伝説の追い込みを決めたダンシングブレーヴ。
4戦無敗で制した奇跡の馬ラムタラなど、その勝ち馬を辿れば欧州のスターホースたちが名を連ね、世界のホースマンたちからの注目を集める。
当然、日本のホースマンにとっても憧れのレースのひとつ。
1969年にスピードシンボリが初めて挑んで以来、56年間で34頭、延べ35回挑戦し、結果は[0・4・0・33]。
いまだその厚い壁を越えられてはいないが、敗戦の中から何かを学び、同じ轍を踏まないようにとノウハウを積み重ねていくことで栄光の瞬間に一歩ずつ、そして確実に迫ってきているはず。
そして今年も、2頭の精鋭がエントリー。くしくもこの2頭はその名に冠号を持つ個人馬主の馬だった。
まずは今年の宝塚記念も逃げ切り、連覇を果たしたメイショウタバル。
毛色こそ違えど、GⅠ6勝馬のいいところも悪いところもそのまま受け継いだかのような彼はとにかくやんちゃ者。
毎日杯で誰もが唸る勝ち方を見せた後に挑んだ春のクラシック戦線は皐月賞で17着大敗、ダービーは出走取り消しと散々なものに。
ひと夏を越えて迎えた秋緒戦の神戸新聞杯はまたも素晴らしい勝ちっぷりを見せたにもかかわらず、菊花賞は4角で失速して16着......
首を高く上げて走るから繰り出す有り余るくらいのスピードには目を見張ったが、父譲りの激しい気性が出世を妨げているようにも思えた。
そんなメイショウタバルは4歳になるとある騎手と出会った。これまで数多くのメイショウの馬たちに乗ってきた競馬界のレジェンド・武豊とタッグを組むことになった。
素質溢れる気難しい逃げ馬の才能を引き出すことに誰よりも長けた男は、コンビ結成2戦目となった昨年の宝塚記念で逃げ切り勝ちを果たす。
メンコにシャドーロールを付けても首の高いままの走りのメイショウタバルをうまくエスコートして、GⅠホースの仲間入りを果たした。
その後、天皇賞(秋)6着、有馬記念13着と結果は出なかったが、ただ負けていただけの3歳時とは異なり、何かしらの爪痕を残すようになった。そしてこれが5歳になってからの飛躍につながった。
迎えた2026年。5歳になったメイショウタバルは年明け緒戦の大阪杯で僅差の2着。
ダービー馬クロワデュノールにゴール直前で交わされてしまったが、負ける時はいつも馬群の後ろでもがいていた彼がキャリア14戦目にして初の2着。
その勢いのまま挑んだ宝塚記念では再度、クロワデュノールと対戦することになったが、今度は差されまいと2番手から流れに乗って先に抜け出し、ゴール目前に迫ってきたライバルたちの追撃を凌いで勝利。
レース直前の降雨が味方したとはいえ、逃げなくても勝てることを示した非常に価値のある走りで史上初となる父ゴールドシップとの宝塚記念親子制覇を果たした。
そんなメイショウタバルは父が12年前に挑んだ凱旋門賞へ挑む。
メイショウの馬としては2008年のメイショウサムソン(10着)以来の挑戦となるが、このメイショウサムソンの騎手を務めていたのが武豊とメイショウタバルの調教師である石橋守......人馬の絆の強さで言えば、過去の挑戦馬たちの中でも屈指のものがある。
馬主、調教師、そして騎手......人馬ともに強い絆で結ばれたメイショウタバルが日本競馬界の悲願を果たすのだろうか。
そしてもう1頭のチャレンジャーが同じく5歳の牡馬、アドマイヤテラである。
メイショウタバルと同い年でも、その歩みは実に対照的。
春のクラシックには間に合わず、夏の北海道で力を付けて菊花賞に滑り込むと、3角マクリの大技を駆使して3着に健闘。
これで自信を付けたのか、4歳になると目黒記念で重賞初制覇。ここまで9戦4勝、掲示板を外したことは一度もないという抜群の安定感を見せた。
秋に入ると京都大賞典4着、ジャパンC落馬、有馬記念11着と苦戦を強いられたが、5歳になると阪神大賞典を制して天皇賞(春)で小差の3着と成長した跡を残した。
欧州と芝の質が近い札幌記念(9着)をステップに挑む凱旋門賞はスタミナに長けたこの馬にはピッタリな舞台のはず。
アドマイヤベガ、アドマイヤグルーヴなど数々の名馬を輩出してきたアドマイヤ軍団として初の凱旋門賞への挑戦。新パートナーとなるC・デムーロとのコンビで一発を狙う。
そんな日本馬たちの最大のライバルとなりそうなのが、昨年のチャンピオンである地元フランスのダリズ。
今年に入ってからもガネー賞、アガカーン4世賞とGⅠを連勝するなど好調。前哨戦のフォワ賞も危なげなく制するなど連覇へ向けて抜かりはない。
他にも今年の英ダービー2着で凱旋門賞と同じコースでの開催されるパリ大賞を制したモルティーズクロス、キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスSでマスカレードボールを破った古豪カルパナのイギリス勢2頭など多士済々なメンバーが揃っている。
人馬の強い絆が紡がれ、大舞台へ挑む今年の日本馬たち。秋晴れのパリの空の下で最高の瞬間を迎えられるだろうか。
■文/福嶌弘