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宇田幸矢 熾烈な代表争いの現在地「苦しい。でも、今しかできない」

2026.08.03
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2026.08.03

宇田幸矢 PHOTO:Getty Images

あと1点が、どうしても遠かった。

2026年7月26日、ブラジルで行われたWTTスターコンテンダー サン・ジョゼ・ドス・カンポス男子シングルス準決勝。

宇田幸矢(協和キリン/世界ランク23位)は、ブラジルのエースで世界卓球2025ドーハ銀メダルのカルデラノ(世界ランク8位)をあと一歩のところまで追い詰めた。

宇田はこれまで4回、カルデラノと対戦しているが、まだ白星はない。

その宇田がゲームカウント2-1リードで迎えた第4ゲーム。先にマッチポイントを握ったのは宇田だった。しかし、チャンスを決めきれず、結局5度のマッチポイントを逃して、このゲームを19-21で落とした。

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一方、流れをつかんだカルデラノは最終ゲームも奪って逆転勝利。宇田の快進撃はベスト4で止まった。

「4ゲーム目から最後まで同じような展開になってしまったので、もう一捻り欲しかった。特にサーブからの展開を変えても良かった」

宇田は、勝敗を分けた局面をそう振り返る。

一進一退の攻防の最中に自ら戦術を変えるには勇気が要る。わずかな判断ミスが、それまで保たれていた均衡を一気に崩すこともある。
この日、カルデラノに効いていたのはフォア前への短いサーブ。宇田はそれを別のサーブに変えることをためらった。

「ちょっとずつ点が取れなくなっていく感覚はあった。そういうときに、いつ戦術を変えるのか。そこが自分の課題です」

しかも、5度のマッチポイントはすべてレシーブだった。自分のサーブから局面を動かす機会がなかったことも判断を難しくした。それでも、この敗戦には宇田の確かな成長が刻まれていた。

パワーのあるカルデラノに少しでも余裕を与えれば、強烈な一撃をくらう。そこで宇田はカルデラノを台から下げることを意識し、得意のラリーに引き込んだ。

短いサーブのバリエーションも増えたことで、要所のロングサーブが生きた。ストレートへの1球でサービスエースを奪う場面もあった。

以前の宇田は自身のやりたいプレーに意識が向きがちだったが、今は相手の読みを外すプレーや、あえて相手に打たせてカウンターを狙うこともできる。

「最近は冷静に戦えるようになってきたし、相手によって戦い方を変えることもできていると感じます。戦術の幅や技術力が上がったので、余裕を持って攻めていける」

変化をもたらしたのは、2025年春頃から本格的に師事する邱建新コーチである。

過去に水谷隼さん(木下グループ)や石川佳純さん(全農)らトップ選手たちをオリンピックや世界選手権のメダルへと導いた名将だ。

国際大会を転戦する宇田が日本にいられる日数は限られているが、可能な限り東京から大阪へ出向き、邱コーチの練習場で汗を流す。

邱コーチの練習メニューは容赦ない。メニュー間のインターバルは数秒と短く「水を飲む程度です」と宇田。

フットワーク練習で打つボールもカウンター対カウンター。ブロックでしのぐことは許されない。

「いったい何球、ボールを打つんだろうって。本当にきついです」

そう言って宇田は苦笑するが「練習をやり込んでいると、無我夢中だったジュニアの頃のハングリーさを思い出すんです。気持ちが若返ります」と、その目は輝いている。

邱コーチが繰り返す言葉がある。

「これだけきつい練習をやったのだから、と試合中に一瞬でも思えるかどうかだ」

試合当日、いきなり技術力が上がるわけではない。だが、自分はやってきたという自信が苦しい場面で選手を支える。

発揮できる力は心の持ちようで変わる―――。宇田はそれを実感している。

邱コーチの真価は分析力にもある。

同行しない大会も宇田や対戦相手の映像を見て、電話やボイスメッセージで助言を送る。宇田はそれを何度も聞き、頭に叩き込む。

「アドバイスのポイントが明確だから理解しやすく、実行しやすい。特にベンチに入ってくれるときは迷わず勝負できます」

ブラジルでは、もう一つ負けられない戦いがあった。3回戦で対戦した篠塚だ。2人は世界ランクの日本人順位を僅差で争っている。

「はるばるブラジルまで行って、日本人選手と当たるのは正直、嫌です。でも、篠塚とはランク争いが激しいので、何がなんでも勝って、自分はベスト4に入るという頭で戦いました」

左利きへの対応は、宇田が以前から自覚する課題だった。

この日は、今年1月の全日本選手権で敗れている左利きの篠塚に対し、準備してきた戦術を遂行してストレート勝ち。

ベスト4まで勝ち進んだ結果、宇田は世界ランクを26位から23位に上げ、篠塚は23位から24位へ後退。6〜7月に行われたWTT USスマッシュでは篠塚が宇田を抜いたが、宇田が再び抜き返した。

しかし、その差はわずか15ポイントにすぎない。

宇田が躍起になる理由は、10月のアジア選手権タシケント大会への出場を目指しているからだ。

男子日本代表の最大出場枠は5枠。

すでに、全日本選手権優勝の松島輝空(個人/世界ランク3位)と、5月の国内選考会で優勝した田中佑汰(ファースト/世界ランク99位)が代表に内定し、世界ランクによる残りの枠をめぐって宇田と篠塚が競り合っている。

他には、世界ランク5位の張本智和(トヨタ自動車)と世界ランク14位の戸上隼輔(井村屋グループ)の選出が濃厚だ。

8月4日開幕のWTTチャンピオンズ横浜は、代表争いの行方を左右する重要な一戦になる可能性が高い。しかも、宇田の1回戦の相手は奇しくも、篠塚。

「プレッシャーは、めちゃくちゃあります。でも、自分はプレッシャーがある方が力を発揮できるタイプ。ハングリーさがある方が爆発力もあると思っています」

そう言い切る一方で、胸の内には相反する感情が渦巻く。

「代表争いは何度経験しても苦しい。『やってやるぞ』という気持ちと『ほんと、きつい。いつまでやるんだろう』という気持ちが、頭の中をぐるぐるします。でも、現役生活には必ず終わりが来るし、代表争いは今しかできない。今、この立場にいられることをポジティブに捉えようと、きつくなったときは自分に発破をかけてます」

かつては腰や肩の故障を繰り返し辛い時期を過ごしたが、体づくりを見直し、入念なケアも欠かさない今、コンディションは万全だ。
ただし、試合前ともなればプレッシャーから眠れない夜もある。

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8月6日、宇田は25歳になる。

目下、最大の目標はアジア選手権タシケント大会の代表権を確保すること。同大会は世界卓球2027アスタナ(個人戦)のアジア大陸予選会も兼ねており、世界卓球へとつながっている。

「世界卓球に出たいですね。WTTチャンピオンズにも出場し続けたい。ロサンゼルスオリンピックのことをよく聞かれますけど、オリンピックは、その前の一つ一つの積み重ねの先にあるだけ。今は自分の最大値を常に求めていくことを大事にしています」

文=高樹ミナ

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