
橋本帆乃香 PHOTO:World Table Tennis
蝶のように舞い、蜂のように刺す―――カット主戦型の橋本帆乃香(デンソー/世界ランク14位)のプレーを形容するなら、これ以上ぴったりなフレーズは見当たらない。
もとはといえば、伝説的なアメリカ人プロボクサー、モハメド・アリに由来する言葉だ。
1960年代から1970年代にかけて活躍したヘビー級王者。その軽快で華麗なフットワークと、相手の隙を突いて繰り出す一撃必殺の鋭いパンチを絶妙に表現している。
10月22日の夜、ウズベキスタンの首都タシケントで行われた「ITTF-ATTUアジア選手権2026」女子団体決勝。日本は宿敵の中国と対戦し、マッチカウント3-2のフルマッチの末に勝利した。
トータル3時間超えの死闘に決着をつけたのは、カットマンの橋本だ。
まさに、華麗なフットワークで相手の強打を拾いに拾い、隙あらば鋭いスマッシュやバックプッシュで反撃に転じる。
その変化に富んだプレーで観客を魅了し、2024年カザフスタン・アスタナ大会以来、2大会ぶり4度目となる金メダルを日本にもたらした。
決勝の大舞台で2点起用された橋本は1番と5番を任された。
緊張感のあるトップバッターとして、中国の若手有望株である陳熠(世界ランク10位)をストレートで下したのも見事だったが、真骨頂を発揮したのは、勝敗の行方を託された5番の王芸迪(世界ランク4位)との一戦だ。
両者の対戦は、2025年10月のWTTチャイナスマッシュ以来、約1年ぶり。
当時は王芸迪がストレート勝ちを収めたが、橋本にとっては過去4戦3勝と勝ち越している相手だった。
互いに大きなプレッシャーのかかる最終マッチ。勝負の分かれ目は、早くも第1ゲームに訪れた。
ゲームポイントを握られた橋本は、6-10から脅威の6連続得点。第1ゲームを12-10の大逆転で奪うと、続く第2ゲームも積極果敢に攻撃を仕掛け、11-3で連取した。
第3ゲームは王芸迪の攻撃力が上回り、橋本にはやや攻め急ぎのミスが出て6-11。第4ゲームも、前半は王芸迪の強打やカウンターが決まった。
それでも、橋本はじわじわと点差を詰め、終盤に粘り強さを発揮。追い詰められた王芸迪に打ちミスが出て、最後は11-7で橋本に軍配が上がった。
橋本が日本代表として大舞台に立つのは、今年4月から5月にかけて開催された世界卓球2026ロンドン(団体戦)以来だった。
この世界卓球団体戦で、27歳にして初めて代表入りした橋本は、「勝手がわからないところもある」と控えめに話していたが、今回のアジア選手権では中心メンバーとして躍動。中国から2点を挙げ、金メダル獲得の立役者となった。
表彰台では後輩たちに促されるようにして、優勝トロフィーを受け取るシーンも印象的だった。
控えめな振る舞いの裏にある、世界の強豪と渡り合う確かな実力。彼女の存在感はナショナルチームの中で日増しに大きくなっている。
そんな橋本は2025年4月、長年在籍したミキハウスを離れ、デンソーへ移籍。
「最終目標はロス五輪に出場すること」と心に誓い、27歳で新たな環境へと踏み出した。
その挑戦が着実に実を結びつつある今、11月29日に中国・成都で開幕するITTF混合団体ワールドカップでも代表メンバーとして、張本美和(木下グループ/世界ランク3位)。早田ひな(日本生命/世界ランク6位)、大藤沙月(ミキハウス/世界ランク13位)らとともに戦う。
同大会は、1番に混合ダブルス、2、3番に男女シングルスのいずれか、4、5番に男女ダブルスのいずれという方式で最大5マッチを行う。
橋本の目指す2028年ロス五輪の団体戦は、従来の男女別の団体戦から混合団体に変更された。競技方式はまだ発表されていないものの、混合団体ワールドカップはロス五輪も見据えた重要な大会と言える。
守備力のみならず、攻撃力も兼ね備えた日本の切り札をどう生かすか。混合団体におけるカットマン橋本の起用方法にも注目したい。
文=高樹ミナ
