匠の肖像 匠の肖像

#53 テキスタイルデザイナー 宮坂博文(みやさか・ひろふみ)

#53 テキスタイルデザイナー 宮坂博文

2007/4/6放送

宮坂博文プロフィール

1925年 長野生まれ
絹織物業の三代目
1964年 国際インテリアデザイン賞を受賞


「止まることは 死に至ること」

糸から織りまですべてをデザインするテキスタイルデザイナー宮坂博文さんが、今回の匠。国内はもとより、海外でも多くの賞を受賞しています。
宮坂さんが生まれた大正末期、岡谷は日本の近代化を支えた製糸業の町でした。ところが、戦後は衰退の一途をたどります。そこで宮坂さんが注目したのが、地味な絹織物「あし絹」。「もうこれは抵抗と言うよりも反骨でしょうね。ほとんどの世間のものは、人工的な、より均一な、より生産性を求めたものなんですが。あし絹というのは非常に自然であって、そういうものがあると温かみ、豊かさがでてくる。」

秘密は、この「玉繭(たままゆ)」。一つの繭を二匹の蚕が作る。この珍しい繭からとった糸で織るのが「あし絹」です。でも、実はこの糸、二匹の蚕の糸が絡まっているから、太さにばらつきができて、節もある。だから並大抵の技では織れません。ところが、宮坂さんはこの糸の無骨さが逆に世界に一つだけのデザインを生むと考えました。「こういうことは物理的にどだい無理なことやっているわけですから、それでも作らないとそれだけの価値がでませんね。」

テカテカに光る正絹にはない、「わび・さび」の感覚。形の悪い糸を使って、大量生産の布にはない味を出す。逆転の発想だった!今、「あし絹」は新しい感覚の絹織物として注目をあびている。「それはまさにとどまっていてはだめなんですね。いつでも、見据えた方向に突き進むこと、とどまることでないこと。これは絶対的な要件だと思います。」

バックナンバー一覧


up