ジプシーの男アンドレが出所した。若くてハンサムな彼には、フラメンコ・ミュージシャンとしての輝かしい未来があるはずだった。親友ペケと従弟のロメロで組んだバンドは、レコード・デビュー寸前だった。そしてパーカッショニストとしてリズムに酔いしれる彼の側にはいつも愛しい妻のルシアがいてくれた。ルシアは対立する一族の娘。グラナダ版ロミオとジュリエットさながらに障害を越えて結ばれたふたり。しかし、2年前。ふたりの汚職警官によって、身に覚えのない罪を着せられ、刑務所に入れられてしまったのだ……。
 今度こそ新しい生活をと願うアンドレ。しかし、待っていたのは、人々の変わり果 てた姿だった。妻のルシアは音楽プロデューサー、マンフレディの愛人になるためにマドリードへ行った。それを止めようとしたロメロはルシアの父が率いるフンコ・ファミリーの手の者に殺された。ペケも今は酒に溺れた自堕落な生活をしている。ただひとり、ルシアの姉で歌手のロラだけは、ペケの妻でありながらも、アンドレへの変わらぬ愛を胸に抱き続けていた。しかし彼女も歌手としての新しい生活を手に入れるために、やがては町を離れるという。
 ロラと共に故郷を捨てられたら……。ルシアの裏切りに深く傷ついたアンドレは、心の中で願った。しかし、脈々と流れるジプシーの血と古い掟が邪魔をする。アンドレの属するエレディア・ファミリーを率いるイシドロは、亡きロメロの復讐をするためにフンコ・ファミリーに果たし合いを申し込んでいた。アンドレもジプシーの男として名誉を取 り戻すためには落とし前をつけなければならない。嫌々ながらも抗争の場に行ったアンドレだったが、偶然の発砲でフンコの一員が死んだのを機に、闘いは終結。多くの人間の血を流さずにすんだのだ。


 ファミリーの間に再び平和が訪れた。しかし、それも束の間、アンドレの前にルシアが突然現れた。「マンフレディが怖い。私を守って」と胸に顔をうずめるルシア。2年間、片時も忘れることのなかった、髪、肌、匂い。アンドレはあふれる思いを抑えきれずに 妻と熱い夜を過した。ところが、翌朝、姿を消した妻の代わりに、2年前に彼をハメた警官ふたりが部屋になだれ込み、彼を逮捕した。昨夜の抗争の犯人捜査という名目だ。からくも、警察の上層部は釈放を命じアンドレは解放されたのだが。
 意味不明な妻の言動。刑事たちのいわれなき脅し。2年前に役立たずだった弁護士は“ルシアとマンフレディに近づくな”と金をチラつかせる……。ファミリーの抗争を引き起こし、愛する妻を狂わせ、自分を罠に陥れたのは誰だ! 業を煮やしたアンドレは自分自身で真相を暴き決着を着けようと決心。黒幕と思えるマンフレディに会い、戦線を布告し、彼をつけ狙う。しかし、数日後には例の刑事にこっぴどく痛めつけられてしまう。
 傷つきボロボロになったアンドレをいたわるのはロラ。その温もりに触れたとたん、ルシアがかつていった言葉が胸に響く。「ロラは昔からあなたを好きだったのよ。私よりずっと」……。まるで渇きを癒すかのように激しく愛しあうふたり。その愛に勇気を得たアンドレは、いかなる運命が待っていようとも、マンフレディと対決しようと決心する。しかし、あまりにも残酷な裏切りを知ることになろうとは、思いもよらなかった……。
 
 

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