|
|
|

2003年秋、シネマライズにて
ロードショー

|
世間からのはみ出し者、決して社会のエリート・コースを歩んでいるとは言えない男と女が、思いがけず一心同体の存在となったとき、奇跡にも似た愛の可能性が鮮やかに目の前に開けてゆく。そしてそれは、孤独な人生に対する、ふたりのスリリングな“賭け”でもあった……。
女は、鼓膜を振動させる補聴器の機械的な音を通して、毎日繰り返される何気ない日常をその身体に沁み込ませる。そして、その波動はつねに不快な周波数へと変調され、彼女の神経を絶え間なく浸蝕していく。まったくの孤独の世界の中で、彼女は静かにそれを外し、自宅の鏡台の前に立つ。そして、心の襞を一枚一枚脱ぎ捨てるように、一糸まとわぬハイヒール姿を、そこに映し出してみせるのだった。
男は、刑務所から出所したばかりの、ちっぽけなチンピラ。週一度の面会が義務づけられている保護監察官さえ持てあます無学な男だが、その痩身体躯に無造作な口髭を蓄え、袖口からは十字架のタトゥーを覗かせる。この長髪、革ジャンの男が醸し出す、野性味あふれる粗雑なセックス・アピールは、否が応にも女たちの視線を釘付けにせずにはおかない危険な魅力を放っている。
それまで無力だった孤独な人間が、誰かと出逢うことで、今まで知ることもなかった未知の世界へと踏み入り、そして微妙にすれ違っては昂まりゆく恋愛感情の機微を色濃いものにする。男と女の深層心理そのものがサスペンスと官能を孕んでいき、深層で孤独な人々のポートレイトが緻密にスケッチされていく。そしてそれは誰もが心の奥深くに秘めながらも、実現することのできない夢と勝利の実感にあふれている。本能的な愛の情動によって、運命の共犯関係の絆で結ばれたポールとカルラの、自信と不安とが表裏一体となった大胆な冒険に、あなたは何を感じ取るだろうか?
|