2008年7月17日
タンザニア取材記(2)
アフリカの経済成長はすさまじい。
タンザニアの変化のスピードも目覚ましく、経済成長率は7%を超えています。
都市部は建設ラッシュ。いたるところで薄型テレビ、パソコン、
高級車のショールームが並んでいます。
タンザニア政府はこの流れをさらに活かすため、都市部の一部に『経済特区』を
設けています。簡単に言うと、外国企業が特区内に工場を敷設し海外に製品を
輸出する場合、関税を無税にする、ということです。
すでに中国の繊維工場などは大規模な工場を稼働させています。
その窓口になっているのが、政府の産業開発省・貿易センター。
貿易センターに、あらゆる外資系企業がタンザニアでのビジネス展開を
狙ってやってくるのです。
私たちが貿易センターを取材した日も、インドの電気部品メーカーの男性が
申請に来ていました。話を聞き名刺をもらうと、社名には『JAPAN』の文字が。
『日本の企業とかかわりがあるんですね?』と聞いてみると、『いや、実は日本には
行ったこともない。初めて見た日本人は君だよ』と苦笑いのインド人男性。
なんでも『JAPAN』の信用度は高いからとのこと。おいおい...
その後私たちは、貿易センターに紹介してもらった特区内にある
欧州系の工場へ向かいました。
経済特区は果ての見えないくらい大きな敷地。出入り口には厳しいセキュリティが。
このあたりはタンザニアというより先進国の匂いがします。
門をくぐると、多くのタンザニア人が働いています。
さまざまな国の工場が参入することで、現地には多くの雇用をもたらす。
国としては外貨獲得につながる。その現場です。
私たちが向かった欧州系の工場では、1000台のミシンを使い洋服を生産して
アメリカへ輸出しているとのこと。
多くの工場を通過し目指す欧州系の工場に到着すると、建物の外に
100人以上のタンザニア人労働者が集まって、緊迫した空気を
漂わせています。
トラブルです。
話を聞くと、なんでも給料の遅配と仕事がないことに対する抗議だとか。
工場には鍵がかけられ警備員が立ち、労働者が中に入れないようにしてあります。
私たちが入れてもらうと、工場内はもぬけのから。
1000台のミシンは押し黙っています。
工場長はあと15分で来るというので、とりあえず工場のディレクターに
状況を聞くと、『給料は明日支払う。仕事は、今週はないが来週は新規の仕事が入
る。
このように労働者にも説明したが、彼らは帰ってくれないんだ』と困り顔。
工場の外では、このトラブルを取材にきたタンザニアのテレビ局クルーが
カメラを回しています。
やはりここはアフリカ、カメラに向かってのタンザニア人のスピーチはものすごい。
大勢の労働者がカメラに向かい、自分の意見をはっきりとよどみなく語ります。
いや叫んでいます。
私たちもカメラを回しインタビューを始めると、あっという間に
タンザニア人労働者に取り囲まれ身動きが取れなくなります。
私の隣にいた日本人コーディネーターは背負っていたバッグを、
おもむろに胸に回し両腕でしっかりと持ち直しました。
緊張と恐怖と興奮で彼らの話を聞いていると、どうも経営側の意見と食い違いが。
『会社側はいつも、明日払う明日払うと言っているが、今月はずっとそう言って
給料を払ってくれないんだ。仕事だって定期的にあると聞いたから
ここで働いているのに。もう信じられるか?』労働者の意見です。
そこで私は『そんなに嫌ならこの工場を辞めて、他で働こうとは
思わないのですか?』と質問しました。
労働者たちは『この日本人は何を言っているのか?』というような顔で私を見て
『それはない』と短く答え、また自分たちの意見を叫び始めます。
このことを後でタンザニア人コーディネーターに聞くと『彼らにとっては、それでも
良い条件の労働環境なのです。代わりになる良い仕事はないのです』と言われ、
自分の質問のセンスの無さを恥じました。
結局、我々は3時間ほどこの工場に滞在しましたが、工場長は現れませんでした。
世界の工場は中国・アジアからアフリカにシフトするのか?
タンザニア政府が推し進める経済特区、その一部のほころびを見た気がしました。
(以下次回へ)

