日経スペシャル「ガイアの夜明け」 5月12日放送 第365回 ドラッグストア・ビッグバン ~追跡・・・“薬”の門戸開放~
今年6月、約50年ぶりに改正された薬事法が施行される。薬事法施行後、「最大の改革」と呼ばれる今回の改正薬事法で、医薬品は効き目と副作用の強い順に、1類~3類に分類された。1類は薬剤師のみが販売を許され、2類と3類は去年導入が決まった新しい資格「登録販売者」がいれば販売できることになった。また、1類と2類の薬品についてインターネットや電話での販売は原則禁止される方向だ。その一方で、2類と3類の大衆薬は、薬剤師がいないスーパーやコンビニでも販売が可能になった(注)。 異業種の「ドラッグストア業界の5兆円市場」参入は、改正薬事法施行前から大きく報じられ、ドラッグストア業界の防御策が注目された。ところが、窮地に立たされたはずの日本チェーンドラッグストア協会の松本南海雄会長は、3年後に市場を10兆円規模に倍増することを目論んでいる。 ドラッグ市場に今、何が起きているのか。転機を迎えた巨大マーケットの最前線を追う。
(注:大衆薬の分類 *1類 …安全上、特に注意が必要なもの。発毛剤「リアップ」、胃腸薬「ガスター10」など *2類 …まれに重い健康被害が起こる恐れのあるもの。解熱鎮痛剤「バファリン」、風邪薬「パブロン」など *3類 …ビタミン剤や目薬、うがい薬「イソジン」など )
消費者にとって最も大きな変化は、ドラッグストアを始めとする薬局・薬店以外でも医薬品が買えるようになることだ。薬剤師に比べ、敷居が低い「登録販売者」を売り場に配置することで、大衆薬販売に意欲を燃やすファミリーマートやヤマダ電機。いずれも実験店を立ち上げ、登録販売者試験に向けての社内研修を実施。しかし、一気に攻勢に出るかのごとき報道を横目に、現場では意外な奮闘が続いていた…。
改正薬事法を見据え、ドラッグストア業界大手のマツモトキヨシは、2年前、試験的に24時間営業の店舗を開設。繁華街での深夜の需要は高く、売上げは4割も伸びた。登録販売者が薬を売れるようになれば、薬剤師の不足を補い、長時間営業のハードルは一気に低くなる。さらに調剤薬局も強化し、医療機関からの処方箋による調剤も増やすつもりだ。カギを握るのは、改正法に合わせて発足したプロジェクトチーム。高い専門性とノウハウを武器に徹底した消費者目線で異業種に対抗する。その一方で、異業種参入をビジネスチャンスに変える驚きのプロジェクトも進行させていた。
大阪の街を自転車で患者宅を回る看護師。実は大手ドラッグストア、スギ薬局のグループ、スギメディカルが運営する訪問看護ステーションに所属する看護師だ。「薬剤師は薬には詳しいが、患者に触れることはできない」…そのジレンマから、医師・看護師との連携を始めた。高齢化が進み、在宅で医療を受ける患者は、今後10年、ますます増えてくる。そんな患者に、ドラッグストアの看護師と薬剤師が医師と連携して、入院中と同じレベルの医療行為を24時間施すことが目標だ。すでに稼動している2ヵ所の看護ステーションで奮闘する看護師たち。またスギ薬局では、製薬会社が開発する新薬の治験事業も開始した。10年後を見据えた事業のため、全国を駆け回るスギメディカルの荒井社長の姿に密着する。
300年の歴史を誇る“越中富山の薬売り”。しかし配置薬を営む人の数は、年々減少し、深刻な後継者不足に見舞われている。改正薬事法では、登録販売者の資格がなくても、これまで扱っていた薬の販売は認められた。しかし、新薬は扱えない。平均年齢が60歳を超える配置薬従事者にとって、登録販売者の試験は、足かせになりかねない。そんな中、「後継者の育成のためには資格が必要」と、2度目の試験で合格となった69歳の吉田雅雄さん。配置の現場には、売薬の原点である「人助けの文化」があるという。