日経スペシャル「ガイアの夜明け」 6月2日放送 第368回 “そうじ”で不況突破 ~業績回復に秘策あり~
戦後空前の大不況の中、“そうじ力”という言葉が注目されている。掃除をシステム化することで、会社の整理整頓が進み、それが業績アップにもつながるというのだ。それを担うのが、“片付け士”なるコンサルタント。果たして“片付け士”登場で、会社は変わるのか? 中小企業の取り組みに密着する。 一方、免許証取得が減っている中で、掃除をプログラムに取り入れ、受講者が急増している自動車教習所も。なぜ、いま掃除が注目されているのか。本当に業績回復の切り札となりうるのか。“そうじ”で会社を変えようとする人たちを追う。
小松 易さん(39)は、某建設会社で事務をしていた時代、書類の整理整頓などを通じて、自分に「片付ける」才能を見出した。これこそが天職だと気付きあっさり脱サラ。2005年、自らを日本初の「片付け士」と名乗り、片付けコンサルタント会社「スッキリ・ラボ」を立ち上げた。それが不況のこの時期になって、依頼が増え、業績が伸びているという。 この「スッキリ・ラボ」は、「片付け」を代行するわけではない。あくまでもコンサルタント会社。実行するのは依頼者本人なのだ。片付けたいがどうしていいか分からないという人は意外に多く、毎月開かれるセミナーには毎回30人以上が参加する。 今年26歳の独身男性サラリーマンもその一人。依頼者は半年前に現在のワンルームマンションに引っ越してきたが未だに部屋の整理が済んでいない。足の踏み場もない。何度となく部屋の片づけに挑戦したが、途中で断念。そこで「片付け士」の小松さんに依頼した。「片づけの計画」は、依頼者に無理をさせないのが小松さんのやり方。仕事が遅くなると掃除をする時間もなかなかとれない。小松さんはどのように計画を進めていくのか。
「片付け士」小松易さんへの依頼は個人だけではなく、中小企業からも増えていた。東京・日暮里にある大成鋼業はマンションやオフィスビルなどの窓枠やドアの金具を取り付ける施工会社。社長は、父親から引き継いで2年前に就任した39歳の社長。就任してまず手をつけたかったのが社内の片付け。会社の施工管理部は、資材がデスクの上やオフィスの床、そして廊下にも山積みになっている。整理されていないため、いざ必要な時にも探す作業から始まるケースが多い。きちっと整理されていればこうした「探す」という無駄な時間が省ける。この不況の中、社内に「片付け」にお金を出すことに反対する意見もあったが、社長は実行に踏み切った。 片付けを依頼された「スッキリ・ラボ」の小松さんがまず手をつけたのは、「探す時間」をコストとして数値化すること。同時に、オフィスの中に整理されずにおかれている部品の整理を社員の人たちと一緒に始めた。 片付けが始まっておよそ3週間。社員の人たちは部品を探す時間が目に見えて少なくなってきた。仕事の効率も上がり、コスト削減につながってきている。社員の片づけに対する意識が高まり、様々な提案がなされ、毎週2回の会社玄関の清掃を行うなど、社員間のコミュニケーションが生まれてきた。はたして会社発展の原動力になるのか?
「掃除」をプログラムに取り入れ、高い評価を受けている自動車教習所がある。それは島根県益田市にある益田ドライビングスクール(通称Mランド)。若者のクルマ離れが進み、自動車免許取得者が激減する中、過疎化の進むこの地域に全国各地から免許を取る人が訪れている。卒業者は年間6000人。都市部の教習所と肩を並べて、全国10位以内をキープしている。2009年度は最高記録の6位に上昇したのだ。 人気の秘密は、ユニークなシステムにあった。初めに支払う基本の食事代や教習代金以外で、免許取得期間中に食べたいお菓子、夜食や施設内の娯楽施設(エステやゴルフなど)を利用する費用は日本円でなく、この施設だけで通用する通貨「Mマネー」でまかなわれる。そしてこの通貨は、日本円からの両替(逆は不可)以外に、校内の活動で稼ぐことができる。その一番の稼ぎどころとして人気を呼んでいるのが、“掃除プログラム”だった。朝早くから、教習生たちはまずMマネー欲しさに参加する。若者、中高年、色々な世代が一緒になって、コースの草むしり、教習車の洗車、宿舎のトイレ掃除などに勤しむ姿が、校内のあちこちで見られる。この掃除プログラムを続けていくうちに、彼らの関係も少しずつ変化していく。“掃除プログラム”がどうして、過疎地の自動車学校を繁栄させる原因となるのか、その秘密に密着する。