日経スペシャル「ガイアの夜明け」 6月30日放送 第372回 雇用動乱 第2章 ~正社員はどうなる!?~
年末年始から始まった、未曾有の「人員削減」。非正規社員を中心とする「派遣切り」が世間を震撼させたが、その後も、人員リストラが収まったわけではない。次のステージ、つまり、これまで聖域とされてきた、正社員の削減に踏み込むことになるのか…。その水面下の動きを追うと、顕著な動きを見せていたのが、日本市場に進出している欧米の外資系企業。仕事のスキルと、能力を買われて転職を繰り返してきた優秀な人材たちが、年明け以降、激しいリストラの嵐に巻き込まれていた。一方、経営不振が続く日本企業の中にも、業績回復のために社員リストラの淵に立つところも少なくない。そんな苦境企業のひとつ、熊本でメガネチェーンを展開する老舗企業では、3代目社長が「クビを切らずに会社を立て直す」と動き出した。果たして、人員整理をせずに不振企業が立ち直ることはできるのか。 今、日本を揺るがす雇用問題に迫るシリーズ企画「雇用動乱」の第2章。
年明けから、外資系証券界はリストラの嵐が吹き荒れ、多くの人々が職を失った。今年2月、米系外資系証券に勤務するAさんは、上司に突然呼び出されると「あなたを整理解雇する。人事部に行きなさい」と、言い渡された。人事部に行くと、いきなり社員証を没収され、そのまま、職場からの退去を命じられた。パソコンが使えなくなり、仕事はすべて取り上げられた。佐藤さんの自宅には、会社の私物がダンボールにまとめられて、送りつけられたという。こうしたケースは、「ロックアウト型退職強要」(社員証を取り上げ、そのまま強制的に職場を締め出される)と呼ばれ、違法な解雇だ。外資系企業であっても、日本で事業を展開する以上、日本の労働法規を遵守することは当然なのだが、今までこうした実態が明らかにされなかった。「外資系企業でのクビは当然」という、暗黙の認識が労使共にあり、表ざたにならなかったのだ。 4月下旬。東京管理職ユニオンに、様々な外資系企業で働く社員たち約30人が集まった。日本でいかに、外資系企業が法律から外れた解雇を強要しているのか、情報交換するためだ。こうした集会に、人が集まるのは非常に珍しく、名だたる欧米系金融機関がずらりと、他にもIT,医療、家電など、様々な業種の外資企業の社員たちが名を連ねた。優秀で高給を取る彼等は本来、労働組合には縁遠い存在だ。しかし、リーマンショック以降、 容赦のない凄まじいリストラは、そんな優秀な人材をも確実に追い込んでいる。
ある外資系メーカー。世界のトップシェアを誇る一流企業で、いま、正社員をターゲットにしたリストラが始まっている。メーカーのアメリカ本社は、今後の不透明な市場変化に対応するためとして、工場、東京本社の合わせて300人以上の正社員の削減を始めている。外資系企業といっても、彼らの雇用契約は「期間の定めのない」もの。いわゆる日本企業の正社員と変わらない。社内で始まっているリストラとはどのようなものなのか?社員たちが、会社の厳しい監視を逃れて取材に応じてくれた。 マーケティング部門に勤めるA子さん。日系企業や外資系などを渡り歩き、この会社に就職。2月に全社員を対象にした、希望退職の説明会後、人事に呼び出された。希望退職には応じない旨を伝えると、2階級の降格。仕事も4月以降はないと告げられ、本人の意向を無視され配置転換された。いまは、郵便の仕分けや、生ゴミの処理など、「リストラ対象者」として会社が用意した雑務をさせられている。人事担当者からは、週に1度の面談に呼ばれその都度、退職の意思確認を迫られる。拒否を続けていると、さらに厳しい措置が…。 この会社には、労働組合はない。リストラの対象になった社員たちは、労働組合を結成、 元の仕事に戻すよう、会社側と交渉することを決意している。 派遣切りで、非正規労働者の人員削減は一巡し、今度は水面下で進む正社員の削減。 日本企業で働く人々にとっても、決して他人事ではない、いつなんどき降りかかってもおかしくない事態が進行しているのだ。
熊本県にある創業100年の老舗眼鏡店「大宝堂」は、現在、経営不振。支店店舗のうち 赤字店舗の閉鎖を実施し、この危機を乗り切ろうと苦悩する。オーナー経営者の布田社長は 大宝堂の三代目。自分の代で会社を潰すわけにはいかない。そのための打つ手を模索する 日々が続く。「経営が悪くなったからといって社員のクビを切るという考えは捨てた」という布田 社長。しかし、閉店が決まった後の余剰人員の受け皿をどうするのか…。 布田社長は東京の経営コンサルタント、久保先生に相談する。久保さんは社長の意志を尊重し、「人間の論理」で会社を立て直すようにアドバイス。つまり、売り上げ至上主義ではなく、目先の利益にとらわれずに長期目標を立て、客からの信頼をもっと勝ち取っていく方針だ。 今年5月、そのための新しい試みが始まった。店舗閉鎖による余剰人員を、外回り営業に出すことにしたのだ。そこに配属されたのは、八代店で12年間店長を務めてきた秋永達男さん。しかし、これまでやったことのない外回りの営業職に戸惑う秋永さん。そんな秋永さんを助けるため、社長は秋永さんに同行し、営業先をまわり始めた。社長の温かい励ましに、笑顔を取り戻した秋永さん。大宝堂の新しい会社再建が始まった。