日経スペシャル「ガイアの夜明け」 11月10日放送 第391回 シリーズ企画“新しい働き方”第2回 もう雇われない!
揺れ続けているニッポンの雇用。去年後半から吹き荒れた派遣切りに始まり、正社員切りも本格化した。8月の完全失業率は5.5%と戦後最低レベル。 “雇われる”側の立場は弱くなる一方だ。そうした中、“雇う-雇われる”という関係にとどまることに危機感や違和感を覚えた人々が“雇われない”働き方を模索する動きが加速している。 賃金カットやボーナス減少で生活費を稼ごうと、副業に走るサラリーマンやOLたち。 さらには「協同労働」という“全員が出資者であり、労働者であり経営者”という働き方にも注目が集まっている。正社員、元派遣労働者、中高年の主婦・・・。 “雇われない”働き方を模索する人々の理想と現実とは?
派遣OL久松美由紀さん(28)。電気系メーカーの事務をしているが、帰宅後はCEOに変身する。今年の4月から自分自身のネットショップを立ち上げた。日本ではなかなか手に入らないヨーロッパの靴を取り扱う。靴の輸入から、客の発注を受けて発送。もともと靴が大好きだったということと、何か自分の事業を持ちたいという希望をもっていたというが、実際に一歩を踏み出したきっかけは、“派遣切り”。製造業に派遣されていた友人たちが次々と解雇させられる様を見て、背中を押されたという。初めは売上ゼロだったが、ようやく月に15万から25万円ほどの売り上げを記録するまでになった。このように、副業経験のある人の割合は2007年の17.1%から2009年には30.8%に急増(インテリジェンス調べ)。副業を経験したことがない人でも56.5%の人が副業をしてみたいと答えている(SBヒューマンキャピタル調べ)。 一家の大黒柱、働き盛りのサラリーマンも動き始めている。兵庫県で営業の仕事をしている森田周介さん(33)。マイカーで飛び込み営業を繰り返す日々。新規契約に応じて給料が決まるため、月々の収入は安定していない。さらに不況で収入は減るばかりだ。家に帰れば、専業主婦の妻と3歳、1歳の幼子が待っている。“雇われる”だけでは、将来が不安だと考えた森田さんの決断は“副業”で稼ぐこと。森田さんが選んだ第二の肩書は、“鯛焼き屋”のオーナー。西日本を中心に人気の“白い鯛焼き”に目を付けた。「ブームだから確実にもうかると思って」。6月中旬にオープンした店は大人気となり、一日1000個以上が飛ぶように売れた。店舗はアルバイトに任せて、森田さんはオーナーとして経営だけを考えていればよかった。しかし、夏を迎えて売上は激減。さらに、アルバイトが一気に3人が長期の休みに入った。家計にプラスになると思って始めた副業が思わぬ展開に。森田さんは、このピンチをどう乗り切るのか?
“全員が対等の立場で出資し、働き、経営もする。“協同労働”という働き方がある。いわば労働者による協同組合。全員が一人一票で全ての物事を話し合いで決めていく。そこには“雇う-雇われる”という関係も、正規―非正規という関係もない。全員が社員であり社長なのだ。そして、新たな仕事も自分たちで提案し見つけていく。実は“協同労働”は世界的に150年の歴史があり、600万人以上が働いている。日本でも3万人以上が介護や農業などの分野で従事している。 この協同労働という働き方で年間3億円を稼ぎ出す主婦軍団が埼玉にある。弁当・配食サービス、さらには介護施設まで。働くほぼ全員が一般の主婦だ。生協の仕分け作業の仕事をしていた主婦たちが初期メンバー。15年前、本体の経営悪化で、突然契約打ち切りという憂き目にあったことから、自分たちで仕事を起こし、経営していこうと立ちあがった。その現場が、熊谷市にある介護施設「ほほえみ」。昼間お年寄りを預かるデイサービスが中心だ。そこで働く新井和子さん(64)。夫の理想の田舎暮らしだったが、いくつか介護施設でボランティア的に働き、最終的に出会ったのが「ほほえみ」だ。「64歳で介護現場で働いている人は知っている限りいない。でもこの働き方だったら自分らしく働ける」。協同労働では出資者でいる以上、自分の意思がある限り働き続けることができる。しかし、経営の現状は厳しい。常連のお年寄りたちは年を取っていき、より介護度が高くなって、泊まりができる施設や病院に移っていってしまう。この1年で売上は100万円も減った。「普通の施設だったら、施設長や理事長が方針を決めて、私たちは従うだけ。でもこの働き方では自分たちで解決策を見つけ、仕事を維持していくしかない」と話す新井さん。新たに事業を提案し、苦境を乗り切れるか?希望を持って働く道を模索する、新井さんの挑戦が始まった。