オレンジ色のラベルでお馴染みのロングセラー商品「つゆの素」や、小分け包装された削り節「フレッシュパック」で知られる、東京のかつお節メーカー「にんべん」は、今年、創業318年を迎える"老舗企業"だ。しかし、老舗企業にありがちな保守的な企業ではない。時代の常識にとらわれず、販売、製造など様々な分野で革新を続けてきた歴史を持つ。そんな「にんべん」の13代当主となる現社長の髙津克幸も"かつお節"の消費が落ち込む現状を打破しようと、今、革新に挑んでいる。「何を守り、何を変えれば永続企業になれるのか?」300年以上の歴史を持つ長寿企業が仕掛ける、時代を生き抜くサバイバル術に迫る!
社長の金言
客に認められて初めて老舗になれる
RYU'S EYE
座右の銘
放送内容詳細
“かつおだし”の領域を広げる13代目の挑戦
「にんべん」が長い歴史を生き抜いてきた最大の理由…その一つが、かつお節の品質に徹底的にこだわっている点にある。あまり知られていないが“かつお節”には、燻製と乾燥を繰り返して作る「荒節」と、そこにカツオブシカビを付け、半年間、カビ付けと乾燥を繰り返して作る「枯れ節」の2種類がある。実は、一般に出回っている“削り節”の原料の8割は、短期間で作れる「荒節」から作っている。しかし、「にんべん」は、あえて手間暇のかかる「枯れ節」を使った商品を数多く扱い、同業他社との差別化を図ってきたメーカーだ。そんな「にんべん」の社長に38歳の若さで就任した13代当主は、「品質を守るだけの差別化では生き残れない!」と考え、新たな商品の開発に乗り出している。2010年には、古参社員の猛反対を押し切って「1杯100円のカップ入りダシの販売店」という、これまでにないスタイルの店「だし場」を開業。さらに、ダシを使った派生商品などを積極的に生みだし、縮小するかつお節市場に挑んでいる。逆風の中で、生き残りを賭けた老舗企業の最新戦略に勝機はあるのか?その全貌を追った!
業界の常識を打ち破る“挑戦の歴史”
「にんべん」の創業は1699(元禄12)年。もともと伊勢出身だった初代・髙津伊兵衛(いへえ)が、かつお節などの乾物を売る店を日本橋に開いたのが始まりだ。そんな「にんべん」の300年以上の歴史は、業界の常識を破る革新の連続だったという。例えば、初代の伊平衛は、お客と相対で交渉し、販売価格を決める当時の慣習を捨て、どのお客にも同じ値段で販売する「現金掛け値なし」という定価販売を時代に先駆けて導入した。11代目の時代には、天然のかつお出汁を使った「つゆの素」を日本で初めて開発。さらに、酸化しない小分けパックの削り節も「にんべん」が日本で初めて作ったのだ。そんな先代たちの志を受け継ぎ、1996年に「にんべん」に入社した13代当主の髙津も業界の常識を破る革新に挑んでいる。 2010年に「だし場」をオープン。さらに、かつお節をベースにしたオリジナル商品やダシ専門の飲食店まで作り上げた。髙津は「かつお節の良さを広げる可能性はまだまだある。その“縦軸”と“横軸”をこれから大きく広げて行く」と語り、 かつお節の更なる可能性を信じて動いている。
かつお節の業界発展を…業界全体を救った「にんべん」感動ヒストリー
かつお節業界をリードしてきた「にんべん」には、業界の発展のために貢献した、特別な発見がある。それが「枯れ節」に適したカビ菌(カツオブシカビ)の発見だ。当時の「枯れ節」は、建物に住み着く自然のカビが自然に付くのを待つという製造方法で、香りや味などの品質がバラバラ・・・業界としても大きな課題になっていた。そこで「にんべん」は5年の歳月をかけて「枯れ節」作りに適した最良のカビ菌を特定。しかも、その菌をライバル会社に無償で公開したのだ。以降、かつお節業界で「枯れ節」の不良品の数は激減し、品質の底上げが実現したという。なぜ、「にんべん」はライバル会社に、無償で技術を提供したのか?その裏に隠された感動エピソードを徹底取材した。
ゲストプロフィール
髙津 克幸
- 1970年東京生まれ
- 1993年青山学院大学卒業後
高島屋入社 - 1996年にんべん 入社
- 2009年代表取締役社長に就任
企業プロフィール
- 創業:1699年6月(元禄12年)
- 本社:東京都中央区日本橋室町一丁目5番5号 室町ちばぎん三井ビルディング12F
- 売上高:152億円2087万円(2015年度)
- 従業員数:205人(2016年4月)
- 事業内容:鰹節および加工食品の製造・販売
村上龍の
編集
後記
「鰹節」は、世界一硬い食材らしい。恐ろしく手間がかかる製法で作られる。近年、冷凍、レトルト、インスタント食品、それに電子レンジなどが開発され、食生活の効率・利便性を飛躍的に向上させた。だが、代償も少なくなかった。「手間をかけた食材、料理だけが持つ暖かみ」のようなものだ。「にんべん」は、手間を惜しまない製法に、独自の工夫を加えることで、318年という長い歴史を築いてきた。わたしは、「にんべん」のシンボルマークを見るだけで暖かい気分になる。創業以来の理念と、後継者たちの努力が凝縮されているからだろう。


















