岩手県・花巻市。のどかな田園風景が広がる中に、認知症に特化した介護施設「銀河の里」がある。「お茶っこ用意せんとなあ!みんなもう来ている。間に合わねえ」95歳になるユキさんが、スリッパを脱いで走り出した。要介護3のユキさんの物語は毎日変わる。スタッフは真剣に寄り添い「お漬物はいるかな」と聞くと、「んだ」と笑うユキさん。ここでは、命の危険がないかぎり、本人の気が済むまで行動させて、それを見守る。一般に徘徊と呼ばれる行動も「必要な旅」と考え、自由にさせスタッフが付き合う。その意図を、理事長の宮澤健さんはこう語る。「認知症の枠にはめこまず、ここでは、爺ちゃん婆ちゃんが本気で意思を伝えると、大切なことを次の世代に残そうとしていると考えている」。スタッフは入居者に寄り添い耳を傾ける。かつて宮澤さんは東京都内の介護施設で働いていたが、管理主義の現場に嫌気がさし、2001年、「銀河の里」を花巻で立ち上げた。目指したのは田舎暮らしのなかでの管理しない介護。グループホームの新人スタッフの永井千晴さん(23)は、この秋に自分を励まし続けてくれた入居者のおばあちゃんを看取った。「見たいよ あなたの銀河の里」というおばあちゃんの言葉を胸に刻み、慣れない現場で奮闘する。「ここでは、スタッフと入所者ではなく、一緒に暮らす仲間であり、家族です」。認知症の人たちと共に生きることの実践の姿が、ここにはある。
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2024年2月23日(金)放送 第1103回
生きる!認知症と共に〜高齢者“5人に1人”の時代〜
誰にとっても「ひと事ではない」時代が迫っている。「認知症」の高齢者は、厚生労働省などの推計で、来年には約700万人、およそ5人に1人になるとされる。さらに65歳以上の高齢者層がピークになる2040年には、46.3%が認知症になる可能性を指摘されている。そんな中、独自の取り組みを行うのは、岩手県にある「銀河の里」という介護施設。ここでは、認知症の高齢者一人一人ととことん向き合い、それぞれの思いを受け止めようとしている。一方、各企業も様々な形で、認知症時代に挑む。製薬大手の「塩野義製薬」は、「家電」を開発し、認知症にアプローチしようと試みる。果たして、どんな家電なのか?認知症を、特別なものではなく、向き合う時代へ...そのヒントを探る。
内容詳細
認知症を特別視しない!一緒に暮らす先に見えるもの
製薬会社が“家電”!? 「認知症」へ新たな挑戦
認知症に対して、各国の製薬会社は巨額の投資を行い、治療薬の開発に取り組んできた。昨年末には、エーザイとアメリカのバイオジェンが共同開発したアルツハイマー病の新たな治療薬の保険適用が決まり、投与も開始され、認知症治療に一筋の光が差した。こうした中、製薬大手の「塩野義製薬」は、ユニークな取り組みを進めていた。スタートアップ企業の「ピクシーダストテクノロジーズ(代表:落合陽一)」と組んで、テレビやラジオなどの音をリアルタイムに40Hz(ヘルツ)周期の音(以下、「ガンマ波サウンド」)に変調できる特殊な技術を開発した。このガンマ波サウンドにより、情報処理などの認知プロセスの際に増加すると言われている脳波(以下、「ガンマ波」)が呼び起され、認知機能のケアに役立つことが期待される研究が進んでいるというのだ。この技術の普及に向け、グループ企業のシオノギヘルスケアが、ガンマ波サウンド技術を搭載したスピーカー「kikippa(ききっぱ)」の販売も開始した。老舗製薬会社が挑戦するかつてない取り組み。主導したのは塩野義製薬の新規事業推進部の柳川達也さん(40)だ。経営企画部時代、中期経営計画を策定する中で、“脱・製薬”を掲げ、プロジェクトリーダーに抜擢された異色の人材。「塩野義の使命は人々の困りごとを解決すること、薬ありきではない」と意気込む。一方で、「そう簡単には普及しない…」とも。「ガンマ波サウンド」がヒト脳内のガンマ波を呼び起こすことは確認されているものの、認知症予防のエビデンス(科学的根拠)を創出するには多くの時間を要する。そのため、「音刺激による脳活性化および認知機能改善」に向けた検証を複数展開し、製薬会社の強みを生かしてエビデンスをひとつひとつ積み重ねる。さらに、“聞きっぱなし”で、より生活に溶け込むように音質の改善にも取り組む。「認知症ビジネスに革命を起こしたい」と柳川さん。約700億円といわれる市場をいかに取り込むのか。その挑みに密着する。
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2025年4月28日










