セルジオ越後、ブラジルのサッカーが強い理由は「移民のライバル意識と奴隷制度」

サッカー

2020.8.11



セルジオ越後のサッカー解説シリーズ。今回のテーマは「なぜブラジルは強いのか」

セルジオ越後が考える強さの理由とは?

セルジオ越後コメント

まず一つは、ブラジルは世界中から移民が集まった国だからです。

ブラジルの文化は、それぞれの国の文化が混ざってできています。特にヨーロッパの文化が主流ですが、サッカーそのものがヨーロッパの人々と一緒にブラジルに来ました。

例えばポルトガルから来た移民はポルトガル中心のサッカーチームをサンパウロやリオで作ったり、イタリア系の移民はパルメイラス、イギリス系の移民はコリンチャスというチームを作ったりしました。

それくらいサッカーが好きな国々が集まったら、大会が開催されれば当然ライバル意識で盛り上がっていきますよね。ブラジルのサッカーの歴史は、そういう文化が元となってできています。

さらに、ブラジルには奴隷制度がありました。その中で高い身体能力を持った人々が多くいたことがスポーツに大きく影響していました。

こういった背景から、ブラジルは世界中から民族が集まった国ですから、いわば「世界選抜」のようなものなので、強いのではないかと思います。

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ただ、ブラジル人全員がサッカーが好きなわけではないです。全然サッカーをやらない、興味がない人もいると思います。僕の子供の頃は、サッカーばかりをしたわけではなかったです。

その中で、ブラジルでサッカーが盛んになった環境的な要因の一つとしては、することがなかったということが挙げられると思います。

最近は、子供たちが集まってテレビやゲームなどで遊ぶことがありますが、当時は何もなくサッカーをやるしかありませんでした。体を使って遊ぶことが主流だったので遊びでサッカーをしました。

また街には体育館やプールなどの設備も整っていないので、費用が一番安くできるスポーツがサッカーということでした。そのようなことが、ブラジルの文化にサッカーが根付いた大きな要因ではないかと思います。

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実はサッカーを盛んにしたものとして「ラジオ」もあります。

ラジオは目で見えないから想像をさせます。優秀なアナウンサーが喋ると、悪い試合が一つもなくて全部がスリルのある試合になってしまいました。例えば、5メートルシュートが外れても「クロスバーをかすめていった!」とか、随分と誇張された実況が聴こえてきて、想像力を働かされてみんながサッカーに釘付けになっていきました。

アナウンサーの実況が上手くて聴いている人々はみんなピッチへ連れていってもらっている感覚でした。単純に試合展開を伝えるだけでなく、ラジオは想像させるような演出ができる、そのようなところが大きく影響したのではないかと思います。

今でもブラジルではサッカーの試合があればテレビを付けて、テレビのボリュームは低くして、ラジオのボリュームを大きくして聴きながら楽しむ人が大勢います。映像と実況が全然合わないのがとても面白くて、そんなエンターテインメントが楽しいですね。

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各チームに番記者がいて、報道で煽るのもとても上手かったです。ブラジルの場合、記者も「仕事だけれども俺もファンだから。」などとはっきり言いますね。それにまた違うチームの担当記者が、自分のチームを褒めるなどします。

そうやって記者同士のコラムは一週間ずっとメディアのプロレスごっこをしているみたいになっています。メディアがファンを引き込むのがとても上手でした。

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日本では、フェアで煽らないで見るのがいいなど日本の国民性かもしれないですが、僕はプロスポーツにはそれはふさわしくないと思います。そこがブラジルでは、俺らはイタリア系だ!とかこっちはポルトガル系だ!俺らは負けない!などと真逆の文化があります。

ブラジルは歴史的な背景から地域と地域の争いがあって、俺らの方が優秀だというものがあります。そこがやはり海外の国と日本のスポーツ文化における大きな違いではないかと思いますね。