川崎フロンターレの強さ 昨季王者も脱帽のクオリティ

サッカー

2020.9.8

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三笘薫 写真:FAR EAST PRESS/アフロ


 Jリーグで首位を走る川崎フロンターレが強い。昨シーズンのリーグ覇者である横浜F・マリノスと9月5日にアウェイで対戦した試合では、前半開始早々に失点を許したものの、後半開始直後の2得点で3-1と逆転。堂々たる試合運びを見せつけた。

 マリノスの立ち上がりは悪くなかった。試合開始2分でFWマルコス・ジュニオール選手の得点でリードを奪った。中盤から右サイドへ展開したボール受けたMF松田詠太郎選手がクロスを上げ、ゴール正面中央でノーマークとなった27歳のブラジル人FWが右足で合わせた。

 だが、前半20分過ぎの給水タイムを境に、川崎が流れを手繰り寄せる。右から左への大きなサイドチェンジを交えてMF三笘薫選手へボールを渡し、左サイドから攻撃を仕掛けるとゴールに迫る機会が増える。そして前半33分、その流れから同点ゴールが生まれた。

右サイドでボールを持ったMF大島僚太選手がMF脇坂泰斗選手につなぎ、そこから左サイドの三笘選手にパス。これを受けた今季加入の23歳MFは、ドリブルでペナルティエリアに切り込むと、相手DFとGKの動きを見極めながら右足を振り抜いた。

 前半を1-1で折り返した川崎は、後半開始から一気に畳みかける。FW小林悠選手とMF旗手怜央選手をベンチから送り出し、アグレッシブに攻めて相手ゴールへ迫った。

 後半3分、バックラインから出た鋭く速いボールに大島選手が左サイドで反応。攻め上がって中へクロスを入れると、MF家長昭博選手がファーポストに走り込み、右足で合わせてゴールネットを揺らした。

 これで均衡を破ると、さらに2分後、追加点を奪う。左サイドの三笘選手が旗手選手へパスを出すと、旗手選手はマリノス守備陣とGKのギャップを突いて、相手DF陣の裏へ走り込んだ三笘選手へパスを通す。これに三笘選手が左足で合わせてゴールに押し込んだ。

川崎はその後も攻め手を緩めることなく、最後まで相手にプレッシャーをかけ続け、ボール保持して相手を圧倒した。その徹底ぶりも、川崎の今季強さの土台となっている。


相手も脱帽のクオリティ

 今季の川崎には何ごとにも徹底している強さがあり、それはリーグ連覇を達成した2017年、2018年当時よりもレベルアップしている印象だ。

技術の高さに裏打ちされたパスワークは過去のシーズンにも見られたものだが、今季はそれにゴールへ向かうという明確なベクトルが加わった。そこがこれまでよりも色濃く出ている。

しかも、プレーに迷いや甘さは感じられず、精度も高い。前線からの素早く厚いプレスも、相手を囲ってボールを奪い、優位にゴールへ近づくためのもの。なによりも、それらをチーム全員でしっかり認識して実行しているので、新卒ルーキーの三笘選手や旗手選手らを含め、誰が出てもプレーの質が落ちることがない。それがチームにとって大きな強みであることは言うまでもない。

 試合後、敗れたマリノスのMF天野純選手は「試合を通して個の質が高く、技術的にも相手の方が一枚上だった。もっともっと高めないといけないと刺激を受けた」と語り、マルコス・ジュニオール選手も「うちの弱点を突いてきた。一人ひとりのスキルが高いチーム。いいサッカーをする」と認めた。マリノスのアンジェ・ポステコグルー監督も「彼らは勝ちに値するプレーをした」と、ため息交じりにコメントした。

連覇を目指すマリノスだが、この黒星で6位から8位に後退し、首位の川崎との勝点差は17に開いた。シーズン途中の選手の移籍や主力への怪我の影響も残っているようで、チーム状態でも相手を上回ることができなかったのは残念だったに違いない。

今季は新型コロナウィルス感染流行でリーグ中断を余儀なくされ、再開後は過密日程になっている。それだけに、チームにけが人や波がなく戦えることが、通常のシーズン以上に重きを持つ。川崎はこの点でも良い状態にあり、さらに、長期離脱していたMF中村憲剛選手が最近になってプレーに復帰し、プラス要素が加わった。


畳みかける得点

 川崎は、ここまでの15試合で12勝2分け1敗。唯一の黒星は8月23日のアウェイでの名古屋戦でのものだが、ダメージを受けた様子は見られない。

ここまでの総得点はリーグ最多の44。1試合平均で3得点を挙げている計算で、2位のマリノス(29得点)以下を大きく水をあけている。現在、チームトップの得点者は12試合出場で8得点の三笘選手。それに小林選手が7得点、FWレアンドロ・ダミアン選手が6得点で続いている。

三笘選手は「これだけ点を獲れると思っていなかったが、自分の良さを引き出してくれるチームエイトがいる。チームメイトに感謝したい」と述べた。

 川崎の攻撃で興味深いのが、短時間で畳みかける得点だ。5分以内に2得点した試合は、今季はこの日のマリノス戦を含めてリーグ戦だけで9試合を数える。攻撃の意識の高さを示すものだろう。

中でも、7月22日のアウェイ仙台戦では0-2ビハインドから58分、59分の連続得点で2-2に追いつき、3-2の逆転勝利につなげた。8月19日のホームでのセレッソ大阪戦では、3-1リードから1点を返された相手の追い上げムードを、75分の得点で4-2に引き離し、3分後に1点加えて5-2とした。連続得点で相手に精神的なダメージを与えることができ、試合の流れを引き寄せる効果は決して小さくない。

一方、失点も13でリーグ2位の少なさだ。DFジェジエウ選手とDF谷口彰吾選手の両センターバックとGKチョン・ソンリョン選手の堅守に加えて、どの選手も相手へのプレスは厳しく、ボールを獲られたら獲り返しに走り、ハードワークを厭わない。その姿勢が数字に出ていると言えるだろう。

 プレーの質の高さとチームとしての一体感に完成度の高さを感じるが、今季で4年目となる鬼木達監督は、「自分たちがやっていることに限界はない。1試合1試合、課題と修正をする中で力を付けている。まだまだやれることはある」と話す。

また、「昨年のチャンピオンとの対戦は大きなゲーム。(勝利は)自分たちの自信になるが、終わったら忘れて次に向かうのがこのチームのスタンス」と語り、頭の早い切り替えも不可欠と示唆する。

 谷口選手は、技術に裏打ちされた選手の対応力の高さを指摘した。

「相手を見てやれるのはこのチームの強みの一つ。そこをみんなが感じ取りながら前半を戦って、後半へ冷静に分析して臨めた。このチームはそういうリーダーシップをとる選手が多い。クオリティの部分もある。一人ひとりがプレッシャーを受けてもボールを持てるし、ターンもできる。そういうところは、うちの良さだと思う」

 昨シーズンの王者をねじ伏せた川崎。では、どこが彼らを止めるのか。

現在リーグ2位に付けるセレッソ大阪も3位のFC東京も、順調に勝点を積み上げて川崎を追う。セレッソは14試合で勝点30、東京は15試合で28だ。だが、川崎がこの日のマリノス戦で見せたプレーレベルが続けば、その差を縮めるのは大変かもしれない。


取材・文:木ノ原句望